和俗童子訓 / 巻之二・総論下
一小兒の衣服は、華やかなるも苦しからずといへども、大もやう、大じま、紅紫などのざればみたるは著るべからず。小兒も、ちとくすみ過ぎたるは、あてやかにて賤しからず。華やか過ぎて目に立つは、賤しくして下部の服の如し。大方衣服の模樣にても、人の心はおし量らるゝものなれば、心を用ふべし。又身の飾にひまを用ひ過すべからず。ひま費えて益なし。唯身と衣服に穢なくすべし。
新字:一小児の衣服は、華やかなるも苦しからずといへども、大もやう、大じま、紅紫などのざればみたるは著るべからず。小児も、ちとくすみ過ぎたるは、あてやかにて賤しからず。華やか過ぎて目に立つは、賤しくして下部の服の如し。大方衣服の模様にても、人の心はおし量らるゝものなれば、心を用ふべし。又身の飾にひまを用ひ過すべからず。ひま費えて益なし。唯身と衣服に穢なくすべし。
書き下し
一小児の衣服は、華やかなるも苦しからずといへども、大もやう、大じま、紅紫などのざればみたるは著るべからず。小児も、ちとくすみ過ぎたるは、あてやかにて賤しからず。華やか過ぎて目に立つは、賤しくして下部の服の如し。大方衣服の模様にても、人の心はおし量らるるものなれば、心を用ふべし。又身の飾にひまを用ひ過すべからず。ひま費えて益なし。唯身と衣服に穢なくすべし。
現代語訳
子どもの衣服は、華やかでもかまわないとはいえ、大きな模様、太い縞、紅や紫などのしゃれ過ぎたものは着せてはなりません。子どもでも、少し地味すぎるくらいのものは上品で卑しくありません。華やか過ぎて目立つものは卑しく、召使いの服のようです。おおよそ衣服の模様によっても人の心は推し量られるものですから、気を配りなさい。また身の飾りに時間をかけ過ぎてはなりません。時間を費やして益がありません。ただ身体と衣服を汚れのないようにしなさい。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『和俗童子訓』巻之五・教女子法下部を閨門の内に入るべからず。凡男女の隔、軽々しからず、身を堅く慎むべし。十一曰、身のかざりも、衣服の染色模様も、目に立たざるをよしとす。身と衣服との、穢れずしてきよげなるはよし。衣服と身のかざりに、すぐれてきよらを好み、人の目に立つ程なるはあしし。衣服の模様は、其年よりはくすみておいらかなるが、尋常にしてらうたく見ゆ。すぐれてはなやかに、大なる模様は、目にたちて賤し。我が家の分限に過ぎて、衣服にきよらを好み、身をかざるべからず。唯我が身にかなひ似合ひたる衣服を著るべし。心は身の主なり、尊ぶべし。衣服は身の外にあるものなり、軽し。衣服をかざりて人にほこるは、衣服より尊ぶべき其心を失へるなり。凡人は其心ざま、身の振舞をこそ、潔くせまほしけれ。
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『大和俗訓』巻之五・衣服一衣服は倹素にかざりすくなく、よの常にして賤しからざるがよし。又まどしき人も、つとめて潔くあかづき穢れざるを用ふべし。富める人も、美麗をこのみ、無用の服多くすべからず。又甚質朴に過ぎて、けがらはしく鄙野なるもあしし。染色は正色を用ふべし、紫もえぎなどの間色、すべて女子の服にちかきを用ふべからず。紅紫をば、褻の服、衾褥にもすべからず。
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『大和俗訓』巻之五・衣服一身のかざりに心を用ひ過すべからず。ひまつひえて益なし。俗人奴婢のともがらに誉められんとて、衣服をかざれば、識者にいやしめらる。何の益もなく、はかなき事なり。一左伝に、服の不衷身の災なりといへり。著る物のただしからずして、其身に似合はざるは身のわざはひとなる。此ためし世に多きことなり。いましむべし。国語曰く、服は心の文なり。心の好むことを、身にも、必服する故に、衣服は心の外にあらはるる文なり。正しからざる服著たるは、心の内見えてはづかし。つつしんでえらび用ふべし。一衣服は、常に用ひて、いつもよき製法染色あり。時の好にしたがひて、世のあしき俗にうつるべからず。
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『大和俗訓』巻之五・衣服一衣服は身のおもてなり。人に対すればまづ見ゆ。此故に、古人身をつつしむの名目をつらぬるに、まづ衣服、次に言語、次に行と、ついでをなせり。言行と同じく相ならべるほどの事なれば、衣服をもつつしみて、身に相応せる。正しきをえらび用ふべし。相応せざるは、正しからざるなり。相応とは、年と位と時と処とに似合たるを云ふ。染色絵様、わかき人も、其年のほどよりは、すこしくすみて老いらかなるは、人の目にたたずして宜し。かくの如くなるは、わかきも老いたるも、たかきも賤しきも、むかしも今も、似合はざることなし。年と位より、若やかにざればみたるはいやし。大なるかた、大もん、大すぢ、すべて人の目にたちてけざやかに、又あやしく異様なる染色の服著たるは、たれも其身に似げなくして、むげに人に見おとさるるものなり。
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『和俗童子訓』巻之二・総論下一小児のともがら、戯多くいふべからず、人の怒をおこす。又人のきらふ事言ふべからず、人に怒り謗られて益なし。世の人多く賤しき事いふとも、それを習ひて、賤しき事いふべからず、小児の言葉賤しきは、殊に聞きにくし。
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『和俗童子訓』巻之一・総論上一小児の時より、早く父母兄長に事へ、賓客に対して、礼を勤め、読書、手習、芸能を勤めまなびて、悪しき方に移るべきいとまなく苦労さすべし。はかなき遊にひまを費さしめて、ならはし悪しくすべからず。衣服、飲食、器物、居処、僕従に至るまで、其家の位よりまどしくばうそくにして、もてなしうすく、心のままならざるがよし。幼き時艱難に習へば、年たけて難苦に堪へやすく、忠孝の勤を苦まず、病少なく驕なくして、放逸ならず。能く家を保ちて、一生の間、幸となり、後の楽多し。もし不意の変にあひ、貧窮に至り、或は戦場に出でても、身の苦なし。斯の如く子を育つるは、誠によく子を愛するなり。又幼少より養豊かにして、もてなしあつく、心のままにして安楽なれば、おごりにならひ、私慾多くして、病多く、艱難に堪へず、父母に事へ君に仕ふるに、勤を苦みて、忠孝も行ひ難く、学問芸能の勤成り難し。
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