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和俗童子訓 / 巻之二・総論下

一子弟孫姪など、幼き者には、禮義を正しくせん事を敎ふべし。淫亂色慾の事、戲のことば、非禮のわざを戒めて、爲さしむべからず。又道理なき正しからざる札守祈禱などを、妄に信じて迷へること、禁ずべし。幼く若き時より、かやうの事に心迷ひぬれば、其心くせになりて、一生其迷とけざるものなり。神祇をば恐れ尊び、敬ひて遠ざかるべし。なれ近づきて、けがし侮るべからず。我が身に道なく私ありて、神に諂ひ祈りても、神は正直聰明なれば、非禮をうけ給はず、へつらひを悅び給はずして、利益無き事を知るべし。

新字:一子弟孫姪など、幼き者には、礼義を正しくせん事を教ふべし。淫乱色慾の事、戯のことば、非礼のわざを戒めて、為さしむべからず。又道理なき正しからざる札守祈祷などを、妄に信じて迷へること、禁ずべし。幼く若き時より、かやうの事に心迷ひぬれば、其心くせになりて、一生其迷とけざるものなり。神祇をば恐れ尊び、敬ひて遠ざかるべし。なれ近づきて、けがし侮るべからず。我が身に道なく私ありて、神に諂ひ祈りても、神は正直聰明なれば、非礼をうけ給はず、へつらひを悦び給はずして、利益無き事を知るべし。

書き下し

一子弟孫姪など、幼き者には、礼義を正しくせん事を教ふべし。淫乱色慾の事、戯のことば、非礼のわざを戒めて、為さしむべからず。又道理なき正しからざる札守祈祷などを、妄に信じて迷へること、禁ずべし。幼く若き時より、かやうの事に心迷ひぬれば、其心くせになりて、一生其迷とけざるものなり。神祇をば恐れ尊び、敬ひて遠ざかるべし。なれ近づきて、けがし侮るべからず。我が身に道なく私ありて、神に諂ひ祈りても、神は正直聰明なれば、非礼をうけ給はず、へつらひを悦び給はずして、利益無き事を知るべし。

現代語訳

子弟や孫・甥など幼い者には、礼儀を正しくすることを教えなさい。淫乱や色欲のこと、ふざけた言葉、礼にはずれた行いを戒めて、させてはなりません。また道理のない正しくないお札やお守り、祈祷などをむやみに信じて迷うことは、禁じなさい。幼く若い時からこのようなことに心が迷うと、その心が癖になって、一生その迷いは解けないものです。神々は恐れ尊び、敬って遠ざけなさい。慣れ近づいて、汚したり侮ったりしてはなりません。自分の身に道がなく私心があって、神にへつらい祈っても、神は正直で聡明ですから、非礼を受けず、へつらいを喜ばれないので、ご利益はないと知りなさい。

解説

礼儀の教えとともに、根拠のない札守や祈祷に迷うことを戒めた条です。神々を「恐れ尊び、敬ひて遠ざかる」という言い方は、論語雍也篇の「鬼神を敬して之を遠ざく、知と謂ふべし」を受けたものです。益軒は信仰そのものを否定せず、神は正直で聡明だから私心あるへつらいの祈りは受けない、と説きます。自分の行いを正さずに利益だけを願う態度を退ける合理的な姿勢がよく出ています。怪しげな開運商法や根拠のない情報に惑わされないためにも、子どもの頃から身につけたい考え方です。

この章句が説くこと

神祇迷信礼正直祈り

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