和俗童子訓 / 巻之二・総論下
外に出て遊び居るには、必常の然るべき親戚朋友の所を定めて、妄にあなたこなた用なき所に行かず、其友として交る所の人をえらびて、善人に常に近づき、良友に交るべし。善人に交れば、其善を見習ひて、善言を聞き、我が過を聞きて、益多し。惡しき友に交れば、早く惡に移り易し。必友をえらびて、かりそめにも惡友に交るべからず。恐るべし。朝には早く起きて親に事へ、事をつとむべし。あさいして怠るべからず。凡人の勤は、朝を初とす。あさいする人は、必怠りて萬事行はれず。夜に至りても事を勤むべし。早くいねて事を怠るも、用なきに夜更るまでいねがてにて時を誤るも、共に子弟の法に背けり。衣服を著、帶をしたる形も整ひて、威儀正しかるべし。
新字:外に出て遊び居るには、必常の然るべき親戚朋友の所を定めて、妄にあなたこなた用なき所に行かず、其友として交る所の人をえらびて、善人に常に近づき、良友に交るべし。善人に交れば、其善を見習ひて、善言を聞き、我が過を聞きて、益多し。悪しき友に交れば、早く悪に移り易し。必友をえらびて、かりそめにも悪友に交るべからず。恐るべし。朝には早く起きて親に事へ、事をつとむべし。あさいして怠るべからず。凡人の勤は、朝を初とす。あさいする人は、必怠りて万事行はれず。夜に至りても事を勤むべし。早くいねて事を怠るも、用なきに夜更るまでいねがてにて時を誤るも、共に子弟の法に背けり。衣服を著、帯をしたる形も整ひて、威儀正しかるべし。
書き下し
外に出て遊び居るには、必常の然るべき親戚朋友の所を定めて、妄にあなたこなた用なき所に行かず、其友として交る所の人をえらびて、善人に常に近づき、良友に交るべし。善人に交れば、其善を見習ひて、善言を聞き、我が過を聞きて、益多し。悪しき友に交れば、早く悪に移り易し。必友をえらびて、かりそめにも悪友に交るべからず。恐るべし。朝には早く起きて親に事へ、事をつとむべし。あさいして怠るべからず。凡人の勤は、朝を初とす。あさいする人は、必怠りて万事行はれず。夜に至りても事を勤むべし。早くいねて事を怠るも、用なきに夜更るまでいねがてにて時を誤るも、共に子弟の法に背けり。衣服を著、帯をしたる形も整ひて、威儀正しかるべし。
現代語訳
外に出て遊ぶ時には、必ずふだんからふさわしい親戚や友人の所を決めておいて、むやみにあちこち用のない所へ行かず、友として交わる人を選んで、いつも善人に近づき、良い友と交わりなさい。善人と交われば、その善を見習い、善い言葉を聞き、自分の過ちを聞いて、益が多いのです。悪い友と交われば、早く悪に移りやすいのです。必ず友を選んで、かりそめにも悪い友と交わってはなりません。恐るべきことです。朝は早く起きて親に仕え、仕事を勤めなさい。朝寝をして怠ってはなりません。およそ人の勤めは朝を始めとします。朝寝をする人は、必ず怠って万事が行われません。夜になっても仕事を勤めなさい。早く寝て仕事を怠るのも、用もないのに夜更けまで寝つかずに時を誤るのも、ともに子弟の法に背いています。衣服を着て帯を締めた姿も整えて、威儀を正しくしなさい。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『和俗童子訓』巻之一・総論上一子弟を教ふるには、まづ其交る所の友をえらぶを要とすべし。其子の生れつきよく、父の教正しくとも、放逸なる無頼の小人に交りて、それと往来すれば、必彼に引そこなはれて悪しくなる。況や其子の性質善からざるをや。古人の語に、年若き子弟、たとひ年を終るまで書を読まずとも、一日小人に交るべからずと云へり。一年書を読まざるは、甚悪しけれども、猶それよりも、一日小人に交るは悪しき事となり。是悪しき友の甚害ある事を云へり。人の善悪は、皆友によれり。古語に曰、麻の中なる蓬は、助けざれども自ら直し。又曰、朱に交れば赤し、墨に近づけば黒しといふ事、誠にしかり。若き時は、血気未だ定らず、見る事聞く事にうつり易きゆゑ、友あしければ、悪にうつる事早し。
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『初学訓』巻之四一友とする人は、尤も択ぶべし。智ありて、わが悪しきを正し、善きをすすむる忠直なる頼しき人あらば、親みて友とすべし。直ならず柔かにして、わが心にかなへる人は、益なし。一わが子弟など、年わかき者の友だちの交り、尤もはやく択ぶべし。友なふ人にうつり易きこと、古人、麪に油の染み易きに譬ふ。わかき人の善悪は、皆その友による。公儀の法をおそれず、親の命をきかず、酒色と淫楽博奕を好み、我身の恥を知らず、わが家の業をつとめざる者を、名づけて無頼の人といふ。年若き子弟を、無頼の人に一日も交らしむべからず。必ずひきそこなはれ、悪におち入り易し。一たびかかる悪友にならへば、善き方へ立ちかへり難し。恐るべし。
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『家道訓』巻之一・総論上一子弟のいとけなき年より、よき師をえらび求めて、はやく聖賢の書を読ませ、善ををしへ悪をいましめ、孝弟忠信礼義廉恥の道を知らしめ、行はしむべし。かりそめにも、悪しき友に交らしむべからず。是第一にいましむべし。あしき事、見聞かしむべからず。いとけなき時は、殊に悪しき事は早くうつりやすし。よき事もあしき事も、先入の言はやく主となる。よき友を求めてまじはらしめ、よき事を見聞かしむべし。善悪皆習ひ馴るるよりうつりやすし。習ひ馴るる事つつしむべし。
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『和俗童子訓』巻之二・総論下一人の善悪は、多くはならひなるるによれり。善に習ひなるれば善人となり、悪に習ひなるれば悪人となる。然れば幼き時より、習ひなるる事を慎むべし。仮にも悪しき友に交れば、ならひて悪しき方に早く移り易し。恐るべし。
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『和俗童子訓』巻之一・総論上位高く身豊なれば、民の苦人の愁を知らず、人の費我が費をもいとはず。おごりに習ひては、人をあはれむ心も薄くなる。又さほど高き品にのほらざれども、時に合ひ勢に乗りては、つねの心を失ひ、人に無礼を行ひ、物のあはれを知らず、人の情をも忘れて、言ふまじき事をもいひ、なすまじき事をもなす事こそあさましけれ。幼き時より、古の事を知れるおとなしく正しき人をえらび用ひて、師とし友とし、早く学問をつとめさせ、身を修め人を治むる古の道を教へて、善を行はしめ、悪を戒むべし。よき人をえらびて、もし其人にあらずんば、師とすべからず。既に師とせば、是を尊び敬ひ、其教を受けしむべし。又身の養飲食などのつつしみをも教ふべし。左右近習の人を能くえらびて、質朴にて忠信なる人をなれ近づかしむべし。
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『和俗童子訓』巻之一・総論上一小児の時より、早く父母兄長に事へ、賓客に対して、礼を勤め、読書、手習、芸能を勤めまなびて、悪しき方に移るべきいとまなく苦労さすべし。はかなき遊にひまを費さしめて、ならはし悪しくすべからず。衣服、飲食、器物、居処、僕従に至るまで、其家の位よりまどしくばうそくにして、もてなしうすく、心のままならざるがよし。幼き時艱難に習へば、年たけて難苦に堪へやすく、忠孝の勤を苦まず、病少なく驕なくして、放逸ならず。能く家を保ちて、一生の間、幸となり、後の楽多し。もし不意の変にあひ、貧窮に至り、或は戦場に出でても、身の苦なし。斯の如く子を育つるは、誠によく子を愛するなり。又幼少より養豊かにして、もてなしあつく、心のままにして安楽なれば、おごりにならひ、私慾多くして、病多く、艱難に堪へず、父母に事へ君に仕ふるに、勤を苦みて、忠孝も行ひ難く、学問芸能の勤成り難し。
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