初学訓 / 巻之四
一友とする人は、尤も擇ぶべし。智ありて、わが惡しきを正し、善きをすゝむる忠直なる賴しき人あらば、親みて友とすべし。直ならず柔かにして、わが心にかなへる人は、益なし。一わが子弟など、年わかき者の友だちの交り、尤もはやく擇ぶべし。友なふ人にうつり易きこと、古人、麪に油の染み易きに譬ふ。わかき人の善惡は、皆その友による。公儀の法をおそれず、親の命をきかず、酒色と淫樂博奕を好み、我身の恥を知らず、わが家の業をつとめざる者を、名づけて無賴の人といふ。年若き子弟を、無賴の人に一日も交らしむべからず。必ずひきそこなはれ、惡におち入り易し。一たびかゝる惡友にならへば、善き方へ立ちかへり難し。恐るべし。
新字:一友とする人は、尤も択ぶべし。智ありて、わが悪しきを正し、善きをすゝむる忠直なる頼しき人あらば、親みて友とすべし。直ならず柔かにして、わが心にかなへる人は、益なし。一わが子弟など、年わかき者の友だちの交り、尤もはやく択ぶべし。友なふ人にうつり易きこと、古人、麪に油の染み易きに譬ふ。わかき人の善悪は、皆その友による。公儀の法をおそれず、親の命をきかず、酒色と淫楽博奕を好み、我身の恥を知らず、わが家の業をつとめざる者を、名づけて無頼の人といふ。年若き子弟を、無頼の人に一日も交らしむべからず。必ずひきそこなはれ、悪におち入り易し。一たびかゝる悪友にならへば、善き方へ立ちかへり難し。恐るべし。
書き下し
一友とする人は、尤も択ぶべし。智ありて、わが悪しきを正し、善きをすすむる忠直なる頼しき人あらば、親みて友とすべし。直ならず柔かにして、わが心にかなへる人は、益なし。一わが子弟など、年わかき者の友だちの交り、尤もはやく択ぶべし。友なふ人にうつり易きこと、古人、麪に油の染み易きに譬ふ。わかき人の善悪は、皆その友による。公儀の法をおそれず、親の命をきかず、酒色と淫楽博奕を好み、我身の恥を知らず、わが家の業をつとめざる者を、名づけて無頼の人といふ。年若き子弟を、無頼の人に一日も交らしむべからず。必ずひきそこなはれ、悪におち入り易し。一たびかかる悪友にならへば、善き方へ立ちかへり難し。恐るべし。
現代語訳
友とする人は、最も選ぶべきです。知恵があって、自分の悪いところを正し、善いところを勧めてくれる、忠実でまっすぐな頼もしい人がいれば、親しんで友とすべきです。まっすぐでなく柔らかで、自分の心にかなう人は益がありません。自分の子弟など年若い者の友だち付き合いは、最も早く選ぶべきです。付き合う人に染まりやすいことを、古人は麺に油が染みやすいことにたとえました。若い人の善悪は、みなその友によります。公儀の法を恐れず、親の命令を聞かず、酒色や淫らな遊び、博打を好み、自分の恥を知らず、わが家の業を務めない者を、名づけて無頼の人といいます。年若い子弟を、無頼の人に一日も交わらせてはいけません。必ず引きずられて損なわれ、悪に落ち入りやすい。一度このような悪友にならえば、善い方へ立ち返ることは難しい。恐るべきです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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説苑・奉使晏子將に荊に使いせんとす。荊王之を聞き、左右に謂いて曰く、「晏子は賢人なり。今方に來らんとす。之を辱めんと欲す、何を以てせん。」左右對えて曰く、「其の來るに爲り、臣請う一人を縛りて王を過りて行かしめん。」是に於て荊王晏子と立ちて語る。一人を縛る有り、王を過りて行く。王曰く、「何を爲す者ぞ。」對えて曰く、「齊人なり。」王曰く、「何の坐ぞ。」曰く、「盜に坐す。」王曰く、「齊人固より盜するか。」晏子反顧して之に曰く、「江南に橘有り、齊王人をして之を取りて江北に樹えしむるに、生じて橘と爲らず、乃ち枳と爲る。然る所以は何ぞ。其の土地之をして然らしむるなり。今齊人齊に居りて盜せず、荊に來りて盜す、土地之をして然らしむる無きを得んか。」荊王曰く、「吾子を傷つけんと欲して反りて自ら中れり。」
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論語・衛霊公篇子貢、仁を為すを問う。子曰く、「工、其の事を善くせんと欲すれば、必ず先ず其の器を利くす。是の邦に居るや、其の大夫の賢者に事え、其の士の仁者を友とす。」
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孫子・始計篇天とは、陰陽・寒暑・時制なり。
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孟子・盡心章句下孟子曰く、「君子の陳・蔡の間に戹するは、上下の交はり無ければなり。」
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孟子・滕文公章句下孟子、戴不勝に謂いて曰く、「子は子の王の善ならんことを欲するか。我明らかに子に告げん。此に楚の大夫有らんに、其の子の齊語せんことを欲すれば、則ち齊人をして諸に傅たらしめんか。楚人をして諸に傅たらしめんか。」曰く、「齊人をして之に傅たらしめん。」曰く、「一齊人之に傅たるも、衆楚人之を咻せば、雖日に撻(むちうつ)ちて其の齊たらんことを求むと雖も、得可からず。引いて之を莊嶽の間に置くこと數年ならば、日に撻ちて其の楚たらんことを求むと雖も、亦た得可からず。子、薛居州を善士と謂い、之をして王の所に居らしむ。王の所に在る者、長幼卑尊、皆薛居州ならば、王は誰と與にか不善を為さん。王の所に在る者、長幼卑尊、皆薛居州に非ざれば、王は誰と與にか善を為さん。一薛居州、獨り宋王を如何せん。」 <語釈> ○「咻」、音はキュウ、義はかまびすしくすること。○「莊嶽」、顧炎武云う、莊は是れ街の名、嶽は是れ里の名。
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『墨子』所染子墨子、染絲する者を見て歎じて言いて曰く、「蒼に染むれば則ち蒼く、黄に染むれば則ち黄なり。入るる所の者變ずれば、其の色も亦た變ず。五たび入れて已に五色と為る。故に染は慎まざる可からざるなり」と。
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