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和俗童子訓 / 巻之二・総論下

むつかしき事、しげきわざに、心おだやかに苦まずして、一筋にしづかに爲しもてゆけば、後は其事になれて、面白くなり、心を苦むる事もなくて、其事遂に成就す。又むつかしとて事をきらへば、心から事を苦みて、勤むべき事をむつかしとするは、心の僻事なり。心のひが事をば、其まゝにおきて、事の多きをきらふは誤なり。又耐煩とは、むつかしきをこらふるを云ふ。此二字を守れば、天下の事何事もなすべしと、古人云へり。是若き子弟の輩の守るべき事なり。

新字:むつかしき事、しげきわざに、心おだやかに苦まずして、一筋にしづかに為しもてゆけば、後は其事になれて、面白くなり、心を苦むる事もなくて、其事遂に成就す。又むつかしとて事をきらへば、心から事を苦みて、勤むべき事をむつかしとするは、心の僻事なり。心のひが事をば、其まゝにおきて、事の多きをきらふは誤なり。又耐煩とは、むつかしきをこらふるを云ふ。此二字を守れば、天下の事何事もなすべしと、古人云へり。是若き子弟の輩の守るべき事なり。

書き下し

むつかしき事、しげきわざに、心おだやかに苦まずして、一筋にしづかに為しもてゆけば、後は其事になれて、面白くなり、心を苦むる事もなくて、其事遂に成就す。又むつかしとて事をきらへば、心から事を苦みて、勤むべき事をむつかしとするは、心の僻事なり。心のひが事をば、其ままにおきて、事の多きをきらふは誤なり。又耐煩とは、むつかしきをこらふるを云ふ。此二字を守れば、天下の事何事もなすべしと、古人云へり。是若き子弟の輩の守るべき事なり。

現代語訳

難しいことや忙しい仕事にも、心穏やかに苦にせず、一筋に静かにやり続けていけば、後にはその事に慣れて面白くなり、心を苦しめることもなくなって、その事はついに成就します。また難しいといって事を嫌えば、心から事を苦しむことになります。勤めるべきことを難しいとするのは、心のひがみです。心のひがみはそのままにしておいて、事の多いことを嫌うのは誤りです。また「耐煩」とは、難しさをこらえることを言います。この二字を守れば、天下のことは何事もできる、と古人は言いました。これは若い子弟たちが守るべきことです。

解説

難しい仕事への向き合い方を、「耐煩」の二字でまとめた条です。頭注によれば、明の人の言葉に「煩に耐ふの二字最も妙、能く煩に耐へば天下何物か做すべからざらん」とあります。益軒は、静かに一筋に続ければやがて慣れて面白くなる、難しいと感じるのは事のせいではなく心のひがみだ、と言います。仕事の量ではなく自分の受け止め方を問題にする視点は、今でいう心の持ち方の工夫に近いものです。面倒な作業や忙しさに押しつぶされそうなとき、思い出したい言葉です。

この章句が説くこと

耐煩忍耐勤勉心仕事

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