和俗童子訓 / 巻之一・総論上
悲しむべし。殊に大人は、身を修め人を治むる稽古だにあらば、藝能は其下たる有司にゆだねても事缺けず。されど六藝は、大人といへど其大略をば學ぶべし。また軍學武藝のみありて、學問なく義理を知らざれば、習ふ所の武事、かへりて不忠不義の助となる。然れば、義理の學問を本とし重んずべし。藝術は誠に末なり。六藝の中、ものかき算數を知る事は、殊に貴賤四民ともに習はしむべし。物よくいひ、世になれたる人も、物を書くこと達者ならず文字を知らざれば、かたことをいひ、ふつつかに賤しくて、人に見おとされ、侮り笑はるゝは口をし。それのみならず、文字を知らざれば、世間の事と詞に通ぜず、もろもろの勤に應じ難くて、世事滯る事のみ多し。
新字:悲しむべし。殊に大人は、身を修め人を治むる稽古だにあらば、芸能は其下たる有司にゆだねても事欠けず。されど六芸は、大人といへど其大略をば学ぶべし。また軍学武芸のみありて、学問なく義理を知らざれば、習ふ所の武事、かへりて不忠不義の助となる。然れば、義理の学問を本とし重んずべし。芸術は誠に末なり。六芸の中、ものかき算数を知る事は、殊に貴賤四民ともに習はしむべし。物よくいひ、世になれたる人も、物を書くこと達者ならず文字を知らざれば、かたことをいひ、ふつつかに賤しくて、人に見おとされ、侮り笑はるゝは口をし。それのみならず、文字を知らざれば、世間の事と詞に通ぜず、もろもろの勤に応じ難くて、世事滞る事のみ多し。
書き下し
悲しむべし。殊に大人は、身を修め人を治むる稽古だにあらば、芸能は其下たる有司にゆだねても事欠けず。されど六芸は、大人といへど其大略をば学ぶべし。また軍学武芸のみありて、学問なく義理を知らざれば、習ふ所の武事、かへりて不忠不義の助となる。然れば、義理の学問を本とし重んずべし。芸術は誠に末なり。六芸の中、ものかき算数を知る事は、殊に貴賤四民ともに習はしむべし。物よくいひ、世になれたる人も、物を書くこと達者ならず文字を知らざれば、かたことをいひ、ふつつかに賤しくて、人に見おとされ、侮り笑はるるは口をし。それのみならず、文字を知らざれば、世間の事と詞に通ぜず、もろもろの勤に応じ難くて、世事滞る事のみ多し。
現代語訳
悲しむべきことです。特に身分の高い人は、身を修め人を治める稽古さえあれば、芸能はその下にいる役人に任せても事欠きません。けれども六芸は、身分の高い人でもその大略は学ぶべきです。また軍学や武芸ばかりあって、学問がなく義理を知らなければ、習った武事がかえって不忠不義の助けとなります。ですから義理の学問を本として重んじなさい。芸術はまことに末です。六芸のうち、読み書きと算数を知ることは、特に貴賤を問わず四民ともに習わせなさい。話し上手で世慣れた人でも、字を書くのが達者でなく文字を知らなければ、片言を言い、野暮で卑しく見えて、人に見下され、侮られ笑われるのは残念なことです。それだけでなく、文字を知らなければ、世間の事柄や言葉に通じず、さまざまな勤めに応じにくく、世の中の事が滞ることばかり多いのです。
解説
この章句が説くこと
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