導師導古典を学びたいすべての人に

和俗童子訓 / 巻之一・総論上

一凡人となれるものは、皆天地の德をうけ、心に仁義禮智信の五性を生れつきたれば、其性のまゝに隨へば、父子、君臣、夫婦、長幼、朋友の五倫の道行はる。是人の萬物に勝れて尊き所なり。是を以て、人は萬物の靈と云へるなるべし。靈とは、萬物に勝れて明なる智あるを云へり。されども、食にあき、衣をあたゝかに著、居所を安くするのみにて、人倫の敎なければ、人の道を知らず、禽獸に近くして、萬物の靈と云へるしるしなし。古の聖人是を憂ひ、師を立て、學び所を立て、天下の人に、幼き時より道を敎へ給ひしかば、人の道立ちて、禽獸に近きことを免る。凡人の小なる業も、皆師なく敎なくしては、自らは爲し難し。況や人の大なる道は、古のさばかり賢き人といへど、學ばずして自らは知り難くて、皆聖人を師として學べり。

新字:一凡人となれるものは、皆天地の徳をうけ、心に仁義礼智信の五性を生れつきたれば、其性のまゝに随へば、父子、君臣、夫婦、長幼、朋友の五倫の道行はる。是人の万物に勝れて尊き所なり。是を以て、人は万物の霊と云へるなるべし。霊とは、万物に勝れて明なる智あるを云へり。されども、食にあき、衣をあたゝかに著、居所を安くするのみにて、人倫の教なければ、人の道を知らず、禽獣に近くして、万物の霊と云へるしるしなし。古の聖人是を憂ひ、師を立て、学び所を立て、天下の人に、幼き時より道を教へ給ひしかば、人の道立ちて、禽獣に近きことを免る。凡人の小なる業も、皆師なく教なくしては、自らは為し難し。況や人の大なる道は、古のさばかり賢き人といへど、学ばずして自らは知り難くて、皆聖人を師として学べり。

書き下し

一凡人となれるものは、皆天地の徳をうけ、心に仁義礼智信の五性を生れつきたれば、其性のままに随へば、父子、君臣、夫婦、長幼、朋友の五倫の道行はる。是人の万物に勝れて尊き所なり。是を以て、人は万物の霊と云へるなるべし。霊とは、万物に勝れて明なる智あるを云へり。されども、食にあき、衣をあたたかに著、居所を安くするのみにて、人倫の教なければ、人の道を知らず、禽獣に近くして、万物の霊と云へるしるしなし。古の聖人是を憂ひ、師を立て、学び所を立て、天下の人に、幼き時より道を教へ給ひしかば、人の道立ちて、禽獣に近きことを免る。凡人の小なる業も、皆師なく教なくしては、自らは為し難し。況や人の大なる道は、古のさばかり賢き人といへど、学ばずして自らは知り難くて、皆聖人を師として学べり。

現代語訳

およそ人として生まれた者は、皆天地の徳を受け、心に仁・義・礼・智・信の五つの性を生まれつき持っていますので、その本性のままに従えば、父子・君臣・夫婦・長幼・朋友という五倫の道が行われます。これが人が万物にすぐれて尊いところです。それで人は「万物の霊」と言われるのでしょう。霊とは、万物にすぐれて明らかな知恵があることを言います。けれども、食べ物に満ち足り、衣服を暖かく着て、住まいを安楽にするだけで、人倫の教えがなければ、人の道を知らず、鳥や獣に近くなって、万物の霊と言われるしるしがありません。昔の聖人はこれを憂い、師を立て、学びの場を立てて、天下の人に幼い時から道を教えられたので、人の道が立ち、鳥獣に近いことを免れたのです。およそ人の小さな仕事でさえ、師も教えもなければ、自分ひとりではなかなかできません。まして人の大いなる道は、昔のあれほど賢い人々でさえ学ばずには自然に知ることが難しく、皆聖人を師として学んだのです。

解説

人は五常の性を備えた万物の霊だが、教えがなければ禽獣に近くなる、という儒学の人間観を述べた条です。「飽食暖衣、逸居して教無きときは則ち禽獣に近し」は孟子滕文公上の言葉で、聖人が学校を立てた理由もそこから説明されます。小さな技芸でさえ師なしには身につかないのだから、人の道ならなおさらだ、という論法は明快です。生まれつきの善さを信じつつ、それを育てる教育の役割を重んじる姿勢は、家庭でのしつけや企業の人材育成を考えるときの基本的な前提として、今もそのまま使えます。

この章句が説くこと

五倫五常教育人倫聖人学問

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る