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倭忠経 / 報國章第十七・国を富ませる施策と、真の利益の考え方

はかりごとなり。第三に。功を立るは。國の大將となりて。他國の仇をふせぎ。國をかたく守る義なり。國の利あるやうにとするは。四季に應じ。それ〴〵の土地に。耕作を勤る事をおしへ。年貢諸役をかろく。下〻の驕をとゞめ。費を正し。池を堀ては旱にそなへ。堤をつきては。洪水をふせぎ。その家〻の職に情をいれ。國に遊民なき時は。萬事不足なる事なく。諸方の者。その國に來りて。上の澤を。蒙らん事を望む。かくのごとくする時は。下〻利ありて。分際〳〵の用たる。是みな。君恩を報ずるのみちなり。是等は。一つの忠ありて。然も才能かね備りたる。臣の行ふ道なり。扨此利といふに。心得あるべき事なり。上の爲に利あるやうにと。民の物をしめとれば。國かならずかしげて。終に君の利にあらず。又上の奢をやめ。民の爲に。利あるやうにとすれば。國かならず昌。諸方の者。集來る。しかれば君必憂なく。要用たらずと云事なし。是を國を利すると云へり。詩經にも云へり。人の一言をうけても。その返答をし。わづかの德をうけても。必報る事あるなれば。忠臣たる者。君の高恩を。あくまで蒙り。其恩を報ずまじきかとなり。

新字:はかりごとなり。第三に。功を立るは。国の大将となりて。他国の仇をふせぎ。国をかたく守る義なり。国の利あるやうにとするは。四季に応じ。それ〴〵の土地に。耕作を勤る事をおしへ。年貢諸役をかろく。下〻の驕をとゞめ。費を正し。池を堀ては旱にそなへ。堤をつきては。洪水をふせぎ。その家〻の職に情をいれ。国に遊民なき時は。万事不足なる事なく。諸方の者。その国に来りて。上の沢を。蒙らん事を望む。かくのごとくする時は。下〻利ありて。分際〳〵の用たる。是みな。君恩を報ずるのみちなり。是等は。一つの忠ありて。然も才能かね備りたる。臣の行ふ道なり。扨此利といふに。心得あるべき事なり。上の為に利あるやうにと。民の物をしめとれば。国かならずかしげて。終に君の利にあらず。又上の奢をやめ。民の為に。利あるやうにとすれば。国かならず昌。諸方の者。集来る。しかれば君必憂なく。要用たらずと云事なし。是を国を利すると云へり。詩経にも云へり。人の一言をうけても。その返答をし。わづかの徳をうけても。必報る事あるなれば。忠臣たる者。君の高恩を。あくまで蒙り。其恩を報ずまじきかとなり。

書き下し

はかりごとなり。第三に。功を立るは。國の大將となりて。他國の仇をふせぎ。國をかたく守る義なり。國の利あるやうにとするは。四季に應じ。それ〴〵の土地に。耕作を勤る事をおしへ。年貢諸役をかろく。下〻の驕をとゞめ。費を正し。池を堀ては旱にそなへ。堤をつきては。洪水をふせぎ。その家〻の職に情をいれ。國に遊民なき時は。萬事不足なる事なく。諸方の者。その國に來りて。上の澤を。蒙らん事を望む。かくのごとくする時は。下〻利ありて。分際〳〵の用たる。是みな。君恩を報ずるのみちなり。是等は。一つの忠ありて。然も才能かね備りたる。臣の行ふ道なり。扨此利といふに。心得あるべき事なり。上の爲に利あるやうにと。民の物をしめとれば。國かならずかしげて。終に君の利にあらず。又上の奢をやめ。民の爲に。利あるやうにとすれば。國かならず昌。諸方の者。集來る。しかれば君必憂なく。要用たらずと云事なし。是を國を利すると云へり。詩經にも云へり。人の一言をうけても。その返答をし。わづかの德をうけても。必報る事あるなれば。忠臣たる者。君の高恩を。あくまで蒙り。其恩を報ずまじきかとなり。

現代語訳

計略です。第三に、功を立てるのは、国の大将となって、他国の仇を防ぎ、国を固く守る意味です。国の利益になるようにするのは、四季に応じて、それぞれの土地で耕作に励むことを教え、年貢や諸役を軽くし、下々の奢りを止め、費用を正し、池を掘っては旱に備え、堤を築いては洪水を防ぎ、それぞれの家職に精を入れ、国に遊民がなくなれば、万事に不足ということがなく、諸方の者がその国に来て、上の恩沢を蒙ることを望むようになります。このようにすれば、下々に利益があって、身分に応じた用に事欠きません。これらはみな、君恩に報いる道です。これらは、一つの忠があって、しかも才能を兼ね備えた臣が行う道です。さて、この利ということについて、心得あるべきことがあります。上のために利益があるようにと、民の物を搾り取れば、国は必ず傾いて、ついには君の利益にもなりません。反対に、上の奢りをやめて、民のために利益があるようにすれば、国は必ず栄え、諸方の者が集まってきます。そうすれば君は必ず憂いなく、必要な物が足りないということもありません。これを国を利すると言います。詩経にも言います。人の一言を受けても、その返答をし、わずかな徳を受けても、必ず報いることがあるのだから、忠臣たる者が、君の高い恩を十分に蒙りながら、その恩に報いないでよいものか、と。

解説

目先の利益のために下から搾り取れば、組織は傾き、結局は上の利益にもならない、という指摘は現代の経営にも通じます。無理なコスト削減や過重なノルマで現場を疲弊させれば、人材流出と品質低下を招きます。逆に、上が無駄な贅沢を控え、現場が働きやすくなる環境を整えれば、人が集まり業績も安定します。管理職は、短期の数字と中長期の健全さを両立させる視点を持ちたいところです。部下を搾るのでなく、育てて豊かにする経営感覚が、組織への忠誠です。

この章句が説くこと

倭忠経南部立庵恩に報いる人材推挙利益忠

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