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倭忠経 / 報國章第十七・大臣が君恩に報いる四つの道前半

是國君の深き恩なり。是又。相應の恩を報ゆべし。しかも況や。少祿をも受る者。いかで君恩を。疎に思はんや。己が不忠はさし置。やゝもすれば。主人をうらみ。不足をいひ。不禮をにくむ人。世間に多し。後に惡處。前に先事なかれとなれば。己が一僕の。我に不奉公成をおもひ合。身の至らざるを顧ば。主人へ恨あるべからず。己が一尺のゆがみをわすれ。主人の一寸のひづみをとがめて。不忠の人となる。扨大臣の恩を報る道。四つあり。先下〻の中におゐて。賢才ある人をゑらみ出して。主君にすゝめ。用させ奉る。一つなり。二には。國を治る。思案工夫をめぐらし。君の善にうつり。惡をのぞき給ふ事を。言上すべし。三つには。君の爲に。苦勞をかへり見ず。と大なる功を立。四つには。國中の。利ある事をとりたつ。一國利ありて富ときは。自然と君。たらずと云事なし。國かしげて。民くるしめば。自然と君患多し。右此四つは。大臣の。君恩を報ゆる綱領なり。扨第一に。賢をゑらむに。賢は國の幹とて。木の眞。家のおも柱のごとし。人の目あてとし。下より手本とする所なり。第二に勸善懲惡を申上るは。一國の政。正しきやうにとの。

新字:是国君の深き恩なり。是又。相応の恩を報ゆべし。しかも況や。少禄をも受る者。いかで君恩を。疎に思はんや。己が不忠はさし置。やゝもすれば。主人をうらみ。不足をいひ。不礼をにくむ人。世間に多し。後に悪処。前に先事なかれとなれば。己が一僕の。我に不奉公成をおもひ合。身の至らざるを顧ば。主人へ恨あるべからず。己が一尺のゆがみをわすれ。主人の一寸のひづみをとがめて。不忠の人となる。扨大臣の恩を報る道。四つあり。先下〻の中におゐて。賢才ある人をゑらみ出して。主君にすゝめ。用させ奉る。一つなり。二には。国を治る。思案工夫をめぐらし。君の善にうつり。悪をのぞき給ふ事を。言上すべし。三つには。君の為に。苦労をかへり見ず。と大なる功を立。四つには。国中の。利ある事をとりたつ。一国利ありて富ときは。自然と君。たらずと云事なし。国かしげて。民くるしめば。自然と君患多し。右此四つは。大臣の。君恩を報ゆる綱領なり。扨第一に。賢をゑらむに。賢は国の幹とて。木の真。家のおも柱のごとし。人の目あてとし。下より手本とする所なり。第二に勧善懲悪を申上るは。一国の政。正しきやうにとの。

書き下し

是國君の深き恩なり。是又。相應の恩を報ゆべし。しかも況や。少祿をも受る者。いかで君恩を。疎に思はんや。己が不忠はさし置。やゝもすれば。主人をうらみ。不足をいひ。不禮をにくむ人。世間に多し。後に惡處。前に先事なかれとなれば。己が一僕の。我に不奉公成をおもひ合。身の至らざるを顧ば。主人へ恨あるべからず。己が一尺のゆがみをわすれ。主人の一寸のひづみをとがめて。不忠の人となる。扨大臣の恩を報る道。四つあり。先下〻の中におゐて。賢才ある人をゑらみ出して。主君にすゝめ。用させ奉る。一つなり。二には。國を治る。思案工夫をめぐらし。君の善にうつり。惡をのぞき給ふ事を。言上すべし。三つには。君の爲に。苦勞をかへり見ず。と大なる功を立。四つには。國中の。利ある事をとりたつ。一國利ありて富ときは。自然と君。たらずと云事なし。國かしげて。民くるしめば。自然と君患多し。右此四つは。大臣の。君恩を報ゆる綱領なり。扨第一に。賢をゑらむに。賢は國の幹とて。木の眞。家のおも柱のごとし。人の目あてとし。下より手本とする所なり。第二に勸善懲惡を申上るは。一國の政。正しきやうにとの。

現代語訳

これは国君の深い恩です。これにも相応の恩を報いるべきです。まして、少しでも禄を受ける者が、どうして君恩を疎かに思えるでしょうか。自分の不忠はさし置いて、ともすれば主人を恨み、不足を言い、無礼を憎む人が世間に多くいます。後ろに悪い所、前に先んずる事なかれ、といいますから、自分の一人の下僕が自分に不奉公であることを思い合わせ、わが身の至らなさを顧みれば、主人に恨みを抱くことはできないはずです。自分の一尺の歪みを忘れて、主人の一寸の歪みを咎めて、不忠の人となります。さて、大臣が君恩に報いる道には四つあります。まず、下々の中で賢才のある人を選び出して、主君に勧め、用いさせ申し上げることが一つです。二つには、国を治める思案工夫をめぐらし、君が善に移り悪を除かれることを言上すべきです。三つには、君のために苦労を顧みず、大きな功を立てることです。四つには、国中の利益になることを取り立てることです。一国に利益があって富めば、自然と君に不足ということはありません。国が傾き民が苦しめば、自然と君の患いが多くなります。この四つは、大臣が君恩に報いる綱領です。さて、第一に、賢を選ぶことについては、賢は国の幹といって、木の真、家の大黒柱のようなものです。人の目当てとし、下から手本とするところです。第二に、勧善懲悪を申し上げるのは、一国の政が正しくなるようにとの、

解説

恩に報いる方法として、人材の推挙、善悪の進言、功績を立てること、組織の利益を図ること、という四つが挙げられています。現代の管理職にも通じます。優秀な部下を見つけて上に推薦する、経営に必要な提言をする、困難な仕事を引き受けて成果を出す、組織全体の収益を高める。いずれも役職の大小に関わらず実行できます。また、自分の足りなさを棚に上げて上司の欠点だけを責めるな、という戒めも重要です。自分の課題を先に省みましょう。

この章句が説くこと

倭忠経南部立庵恩に報いる人材推挙利益忠

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