倭忠経 / 忠經目錄・目録後半 孝から尽忠までの章立て
此章には。忠ある人は。よく父母に。孝あることを云へり。廣爲國章第十一此章には。大小によらず。國を治るは。忠をおこなふより。ひろまるといふ事を云へり。廣至理章第十二此章には。國を治る至極の事を。ひろく云のべたるなり。揚聖章第十三此章は。かみ君の德あるを。下臣たる者。一國。一家。一天下に。云ひろめて。世間にあまねく。あらはるゝ事を云へり。揚は。あぐるとよみて。君の聖德を。あげひろむる也。辨忠章第十四辨はわきまふなり。此章は。臣の忠不忠を。上君。わきまへ。知りたまふべき事を云へり。忠諫章第十五此章は。君あやまちある時は。臣たるもの。いさめたゞす事を云へり。證應章第十六此章は忠不忠。明かに。天道に鑑たまひ。忠有ものは。福にあひ。不忠なるものは。禍にあふ事を云へり。報國章第十七此章には。忠ある人は。かならず君恩を。報ずる事を云へり。盡忠章第十八此章は。臣たるもの。忠の至極を。おこなひつくす事を云へり。目錄終
新字:此章には。忠ある人は。よく父母に。孝あることを云へり。広為国章第十一此章には。大小によらず。国を治るは。忠をおこなふより。ひろまるといふ事を云へり。広至理章第十二此章には。国を治る至極の事を。ひろく云のべたるなり。揚聖章第十三此章は。かみ君の徳あるを。下臣たる者。一国。一家。一天下に。云ひろめて。世間にあまねく。あらはるゝ事を云へり。揚は。あぐるとよみて。君の聖徳を。あげひろむる也。弁忠章第十四弁はわきまふなり。此章は。臣の忠不忠を。上君。わきまへ。知りたまふべき事を云へり。忠諫章第十五此章は。君あやまちある時は。臣たるもの。いさめたゞす事を云へり。証応章第十六此章は忠不忠。明かに。天道に鑑たまひ。忠有ものは。福にあひ。不忠なるものは。禍にあふ事を云へり。報国章第十七此章には。忠ある人は。かならず君恩を。報ずる事を云へり。尽忠章第十八此章は。臣たるもの。忠の至極を。おこなひつくす事を云へり。目録終
書き下し
此章には。忠ある人は。よく父母に。孝あることを云へり。廣爲國章第十一此章には。大小によらず。國を治るは。忠をおこなふより。ひろまるといふ事を云へり。廣至理章第十二此章には。國を治る至極の事を。ひろく云のべたるなり。揚聖章第十三此章は。かみ君の德あるを。下臣たる者。一國。一家。一天下に。云ひろめて。世間にあまねく。あらはるゝ事を云へり。揚は。あぐるとよみて。君の聖德を。あげひろむる也。辨忠章第十四辨はわきまふなり。此章は。臣の忠不忠を。上君。わきまへ。知りたまふべき事を云へり。忠諫章第十五此章は。君あやまちある時は。臣たるもの。いさめたゞす事を云へり。證應章第十六此章は忠不忠。明かに。天道に鑑たまひ。忠有ものは。福にあひ。不忠なるものは。禍にあふ事を云へり。報國章第十七此章には。忠ある人は。かならず君恩を。報ずる事を云へり。盡忠章第十八此章は。臣たるもの。忠の至極を。おこなひつくす事を云へり。目錄終
現代語訳
保孝行章第十。この章では、忠のある人は、よく父母に孝行があることを述べています。広為国章第十一。この章では、大小にかかわらず、国を治めるのは、忠を行うことから広まるということを述べています。広至理章第十二。この章では、国を治める至極のことを、広く述べています。揚聖章第十三。この章は、上に立つ君に徳があることを、臣下が一国、一家、天下に言い広めて、世間にあまねく知らせることを述べています。揚とは「あげる」と読み、君の聖なる徳をあげ広めるという意味です。弁忠章第十四。弁とは「わきまえる」ことです。この章は、臣の忠・不忠を、上に立つ君がわきまえ知らなければならないことを述べています。忠諫章第十五。この章は、君に過ちがあるとき、臣がいさめ正すことを述べています。証応章第十六。この章は、忠・不忠が明らかであり、天道がそれを見て、忠のある者は福にあい、不忠の者は禍にあうことを述べています。報国章第十七。この章では、忠のある人は必ず君の恩に報いることを述べています。尽忠章第十八。この章は、臣が忠の至極を行いつくすことを述べています。目録終わり。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『倭忠経』・盡忠章第十八・忠の極みは広く行き渡り天下を治める盡忠章第十八臣たる者。忠の至極を行ひ盡せば。一人のみならず。人〻見ならひ。一天下に。ひろく忠のみちおこなはれて。いかなる匹夫のたぐひまで。忠を行ずと云事なし。かくのごとくなる時は。則天下無事にして。政やすらかに行はる。扨才能有て。官位かね備る人の忠は。君の爲。隨分心をつくし。國家の太平をまねく。下〻の忠は。上の爲に力をつくし。一命をも君に奉り。身をおしまぬを忠といふ。是は我身ひとつの忠なり。官位備る人の忠は。一家。一國。一天下へ。忠を行ひ廣るゆへ。その忠大ひに行はる。かるがゆへに。明君の國を治るには。第一賢なる者を。見しり聞出して。國の政を。その賢者に任にあり。扨賢者は。眞實の忠を盡ゆへ。君の德ひろく天下にあまねし。いかにして。かくのごとく。施とほくひろきぞと云に。民に敎ほどこす道。すこしも私なく。實を以て號令を定。まづ人たる者。生れ付て。親を愛する念あれば。それにもとづき。
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『倭忠経』・盡忠章第十八・民の望みに添い、礼をもって国を和す孝行を行へと云ひ。民もと利を好めば。其心をはかりて。利あるやうにと施し。少も民の望に。さかはぬやうに。政を布施し。扨その上に。禮法を以て。上下の差別。人〻の心の和睦する。道ををしゆ。かくのごとくなるうちに。もし大勢の中に。惡人あれば。やむ事をゑず。その者を刑罰し。少も罪のかろき者を。ころす事なし。然れば人〻。をのれと不善をはぢて。殺す人をうらみず。猶も仁道の。民を子のごとく。愛する惠を。普く一國にひろむ。故にその君恩を。蒙る所の國〻。此君。萬〻歲と唱て。人のなつき親事。父母に仰つかふるが如し。然れば此誠。天神地祇に感通ありて。諸の福打つゞき。天下たいらかならん事。掌を返が如し。尤人〻よろこびて。或は詩に作り。或は歌にうたひて。萬代の後まで。德をかゞやかす。大臣の忠。いづれか是にしく事あらんや。此書天子へ奏覽するゆへ。天下を祝し。萬〻歲の長久を。終の章に。かさとめ畢。倭忠經下 終
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『倭忠経』・辨忠章第十四・忠言は耳に痛く、佞言は耳に心地よい辨忠章第十四忠の道を用る所は。廣大なる事なり。右に云へるごとく。忠は私を以。名付あらず。心の誠を忠と云へば。極〻大なるみちなり。是を近所に施ば。まのあたり。妻子眷屬まで。安じ和らぎ。是を遠きにほどこす時は。ひろく天地の。ぶ窮にも至るなり。仰で天につかへ。俯して地につかふるも。是忠の一念なり。このゆへに。明主の國をおさむるには。かならず第一に。忠の義をわきまふ。其いはれは。忠の義を正しく辨ざれば。一家一國の。無爲におさまる事有べからず。さて臣下の忠と。不忠を見知事は。賢なる者の辭は。眞實ありて。少も佞なる事なし。不肖の人のこと葉は。佞にして。うへは誠ある躰にて。内心は道理にそむけり。佞とは。辯舌をふるひ。鳥を驚といひ。鹿を馬と云ふたぐひなり。然るゆへに。これを聞人。多くは忠不忠を聞まどふなり。然も忠言は。當座は君の耳にさかふやうなれ共。至極の處。反て君の爲よろしく。國家のためめでたし。佞人の辭は。當分は君の心に。したがひさかはず。さま〴〵の辯説を工ゆへに。君の爲よきに似て。却て家をやぶり。國のかしぐるもとひたり。然れば心にしたがふ所をも。よろこばず。かくのごとくして。極る所。身の爲國の爲。いかんと工夫をめぐらし。當座耳にさかふ處をも。いからず。畢覺いかんと思案して。よろしき方を用ゆべし。され共さし當て耳にさかふ所には。多く怒人これあるものなり。たとへば。藥はよく病を癒せども。口に苦覺ゆる故。
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『倭忠経』・保孝行章第十・孝行の根には忠の誠実さがある保孝行章第十孝行のもとは。忠ある事をたつとぶ。そのいはれは。忠を行はざれば。心に僞ありて。朝より夕に至り。事々心を用る處。みな道に背けり。しかれば忠の念起らざれば。先我身の守りをうしなふ。守といふは。この方の本心の。外のよこしまなる事に。奪れぬやうにとり守る事なり。凡一切の人。眼に色を見ては。その色に引おとされて。守をうしなひ。口に味をもとめては。其味におぼれて。守を失ひ。身の安樂を求ては。守をうしなふ。かくのごとくすれば。其身をあやうくするのみならず。親の名をも恥かしむるなり。然れば孝行に志あらん人は。第一忠の念を以。親につかふまつるべし。右に云ごとく。忠は誠なれば。眞實を以て。親につかふる時は。諸のさひはひありて。我身富貴に至れば。本より其身さかへ親をよろこばしめ。衣服飮食にいたるまで心のまゝにそなへて。親を養事歷然たり。かくのごとくする時は。他人見ならひ。各その親につかへて。孝を起ときは。我一人のみならず。他人の孝をも感動せるなり。是を人におよぼすとは云なり。詩經にも。孝子は我親に孝行を盡して。人をも吾如く孝行になるやうに。をしへなせば。孝子あまた出るゆへに。孝子ともしからずと云へり。又類をたまふとも云へり。是は自己一分の孝許は。至極の孝ならず。
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『倭忠経』・揚聖章第十三・君の徳を世に広め、悪口は言いふらさない揚聖章第十三上君の心あきらかなれば。速に佞人をおひしりぞけて。忠臣を擧用なり。右のごとく。下賢なる臣を。ゑらみ出し用るは。國を治る第一の大事なり。然れば忠臣たるもの。上の人に擧用られ。其家の榮を見て。をのづから諸人我と身を嗜。我逸と忠節をつくすゆへに。一人を用ゆれば。萬人を用るに當。しかるに君の德明らかならざれば。忠臣かへつて。君の爲に悖ゆへに。或は殺れ。或は追出されて。辱をうくるなり。扨忠臣たる者は。君の行の欠不足したる所あらば。媚諂をやめて。すみやかにいさめ補。君の明らかなる德有をば。いよ〳〵進め擧用。ひろく天下に云ひ廣は。臣たるものゝみちなり。然るゆへに。大舜の德をば。咎繇。歌に作り。周公旦は。文王のみちを頌にのべあらはし。周の宣王の美あるをば。尹吉甫といふ臣。詩を賦して後代まで殘しおけり。これらは皆。いにしへの忠臣の。君の德の明らかなる所を。あまねく天下に云ひ廣めし。先代の例かくのごとし。故に。古昔の士たるものは。道の盛なる時につかへては。必君の德を。ひろく天下にみちひろめ。且後代にのこす。しかるに不忠の臣たる者は。たま〳〵君に。善心の發るをも。却て是をとぢふさぎ。己が利欲を得ために。さま〴〵に媚をなし。邪にすゝめ入て。さて退ては。かくのごとくあしき事ありと。傍輩に語り。猶も他國の人に云ひあらはす。これそもいかんぞや。せめて善道をこそかたるまじけれ。君の惡名をいひふらすは。たとへば手飼の犬の主に喰付がごとし。多年妻子を扶持し。我身を養るゝ者の。己が忠は盡さずして。

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