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玉勝間 / 十四の巻 人のうまれつきさまざまある事

人の生れつきさまざま有る物なり。物の義理、事の利害など、すべて萬の事を、心にはよく思ひわきまへながら、口にはえ云はぬ人も有り。また口にはよく云へども、然行ふ事はえせぬ人も有り。又口には得云はねども、よく行ふ人もあり。又口にはよく云へども、文には得書きいでぬ人あり。又口に、え云はねども、文にはよく書いづる人も有るなり。

新字:人の生れつきさまざま有る物なり。物の義理、事の利害など、すべて万の事を、心にはよく思ひわきまへながら、口にはえ云はぬ人も有り。また口にはよく云へども、然行ふ事はえせぬ人も有り。又口には得云はねども、よく行ふ人もあり。又口にはよく云へども、文には得書きいでぬ人あり。又口に、え云はねども、文にはよく書いづる人も有るなり。

書き下し

人の生まれつきさまざま有る物なり。物の義理、事の利害など、すべて万の事を、心にはよく思いわきまえながら、口にはえ云わぬ人も有り。また口にはよく云えども、然行う事はえせぬ人も有り。又口には得云わねども、よく行う人もあり。又口にはよく云えども、文には得書きいでぬ人あり。又口に、え云わねども、文にはよく書きいずる人も有るなり。

現代語訳

人の生まれつきはさまざまあるものである。物事の筋道や事の損得など、およそあらゆることを、心ではよく考え分かっていながら、口ではうまく言えない人もいる。また口ではよく言うけれども、そのとおりに行うことはできない人もいる。また口ではうまく言えないけれども、よく行う人もいる。また口ではよく言うけれども、文章にはうまく書き表せない人もいる。また口ではうまく言えないけれども、文章にはよく書き表す人もいるのである。

解説

人の生まれつきの得手不得手について述べた短い段である。心では分かっていても言葉にできない人、口は達者でも実行できない人、口下手でもよく行う人、話は上手でも文章が書けない人、話は苦手でも文章はうまい人と、考えること・話すこと・行うこと・書くことの力が、人によってばらばらに備わっていることを並べている。これは前の段で見た、一言一行で人の善し悪しを決めつけるなという主張と通じるもので、人を一つの物差しで測ることへの戒めとも読める。口の達者な人を賢いと思い、話下手な人を愚かと見るのは誤りである。人の能力をいくつもの面から見るという考えは、人を育てたり評価したりする場面で今も大切な視点である。

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