玉勝間 / 十三の巻 おほてて
榮華物語衣ノ珠ノ卷に、兒の詞に、祖父のことを、おほててと云へること有。
新字:栄華物語衣ノ珠ノ巻に、児の詞に、祖父のことを、おほててと云へること有。
書き下し
栄華物語衣の珠の巻に、児の詞に、祖父のことを、おおててと云えること有り。
現代語訳
『栄花物語』衣の珠の巻に、幼い子どもの言葉として、祖父のことを「おおてて」と言っていることがある。
解説
『栄花物語』に、幼い子が祖父を「おおてて」と呼ぶ言葉が見えることを書き留めた、ごく短い段である。「てて」は父を指す幼児語で、「おおてて」は大きい父、すなわち祖父を意味する。今の「おじいちゃん」にあたる平安時代の子どもの呼び方が、物語の中に偶然残っていたわけである。宣長は古語の研究で、歌や公的な文章に使われる雅やかな言葉だけでなく、日常の話し言葉や幼児語、方言にも強い関心を寄せた。書き言葉には残りにくい暮らしの言葉は、物語の会話部分などにわずかに痕跡をとどめるだけである。言葉の歴史は、改まった文章だけでは分からないという認識がこの小さな覚え書きの背後にある。
関連する章句
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