導師導古典を学びたいすべての人に

玉勝間 / 十三の巻 七夕の歌にささがにの糸をよめる事

源ノ順の七夕ノ歌に、「たなばたは空にしるらむ、ささがにのいとかくばかり祭るこころをと詠めるは、歳時記に、此祭時、陳瓜菓於庭中、乞巧時、有嬉子瓜上網、以爲得矣。また事文類聚に、京師、七月七夕、婦女望月、以小蜘蛛在合子中、次日看之、若網圓正、謂得巧と云へり。

新字:源ノ順の七夕ノ歌に、「たなばたは空にしるらむ、ささがにのいとかくばかり祭るこころをと詠めるは、歳時記に、此祭時、陳瓜菓於庭中、乞巧時、有嬉子瓜上網、以為得矣。また事文類聚に、京師、七月七夕、婦女望月、以小蜘蛛在合子中、次日看之、若網円正、謂得巧と云へり。

書き下し

源の順の七夕の歌に、「たなばたは空にしるらむ、ささがにのいとかくばかり祭るこころをと詠めるは、歳時記に、この祭の時、瓜菓を庭中に陳ね、巧を乞う時、嬉子の瓜の上に網する有れば、以て得たりと為す。また事文類聚に、京師、七月七夕、婦女月を望み、小蜘蛛を以て合子の中に在らしめ、次の日これを看る、若し網の円正なれば、巧を得たりと謂うと云えり。

現代語訳

源順の七夕の歌に「織女は空で知っているだろう、蜘蛛の糸のように、これほどまでに祭る私の心を」と詠んでいるのは、『歳時記』(荊楚歳時記)に「この祭の時、瓜や果物を庭に並べて技芸の上達を乞う。そのとき小さな蜘蛛が瓜の上に網を張っていれば、願いがかなったしるしとする」とあり、また『事文類聚』に「都では七月七日の夕べ、婦女が月を仰ぎ、小さな蜘蛛を小箱の中に入れておき、翌日これを見る。もし網が丸く整っていれば、技芸を得たという」とあるのによっている。

解説

平安時代の学者歌人源順が、七夕の歌に「ささがに(蜘蛛)の糸」を詠み込んだ理由を、中国の年中行事の書から明らかにした段である。七夕はもともと中国の乞巧奠で、女性が織女に裁縫や技芸の上達を願う祭りであった。瓜の上に蜘蛛が網を張るのを吉兆とし、小箱に入れた蜘蛛の網が丸く整っていれば願いがかなうとする習わしがあった。順は漢籍に通じた人で、この故事を踏まえて「いと(糸・いと)」を掛けた技巧的な歌を詠んだのである。宣長は漢意を厳しく批判したが、歌の典拠を明らかにするためには漢籍も丹念に引いた。一首の背景にある故事を知ると、言葉の掛け合わせの妙がはじめて見えてくる。

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る