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玉勝間 / 十一の巻 神楽の調子

同書に、平調は、金商なり、西方音なり。亡國音なり。神樂は本は平調なり、依爲亡國音、後に成壹越調云云。又氣比ノ宮、神樂は、用盤涉調云云。

新字:同書に、平調は、金商なり、西方音なり。亡国音なり。神楽は本は平調なり、依為亡国音、後に成壱越調云云。又気比ノ宮、神楽は、用盤渉調云云。

書き下し

同書に、平調は、金商なり、西方の音なり。亡国の音なり。神楽は本は平調なり、亡国の音たるに依りて、後に壱越調と成る云云。また気比の宮の神楽は、盤渉調を用うと云云。

現代語訳

同じ書に、平調は五行の金、五音の商にあたり、西方の音である。亡国の音である。神楽はもとは平調であったが、亡国の音であるため、後に壱越調になった、とのことである。また気比の宮の神楽は、盤渉調を用いる、とのことである。

解説

雅楽の調子と神楽の関係について、『体源抄』の説を引いた短い段である。雅楽には壱越調・平調・双調・黄鐘調・盤渉調・太食調の六調子があり、中国の五行説によって方角や季節と結びつけられていた。平調は金・商・西方にあたり、秋の物悲しい音、ひいては「亡国の音」とされたため、神楽は壱越調に改められたという。気比神宮の神楽は盤渉調を用いるとも添えられている。宣長はここでは評を控えているが、少し後の段で別の説を引いて、この「神楽はもと平調」の説を誤りと断じている。五行思想で音楽の吉凶を決める説明は、宣長の嫌う漢意の典型でもあった。一つの説を記したうえで、後から別の資料と照らし合わせる、宣長の読書の進め方がうかがえる。

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