素書 / 『素書』足るを知る吉
吉莫吉于知足、苦莫苦于多愿、悲莫悲于精散、病莫病于無常、短莫短于茍得、幽莫幽于貪鄙、孤莫孤于自恃、危莫危于任疑、敗莫敗于多私。右第四章、言本宗不可以離德。
新字:吉莫吉于知足、苦莫苦于多愿、悲莫悲于精散、病莫病于無常、短莫短于苟得、幽莫幽于貪鄙、孤莫孤于自恃、危莫危于任疑、敗莫敗于多私。右第四章、言本宗不可以離徳。
書き下し
吉は足るを知るより吉なるは莫く、苦は願い多きより苦しきは莫く、悲しきは精散ずるより悲しきは莫く、病は無常より病は莫く、短きは苟くも得るより短きは莫く、幽きは貪鄙より幽きは莫く、孤なるは自ら恃むより孤なるは莫く、危うきは疑いに任ずるより危うきは莫く、敗るるは私多きより敗るるは莫し。右第四章、本宗は徳を離る可からざるを言う。
現代語訳
吉であることとして、足るを知ることに勝るものはなく、苦しみとして、願いが多いことに勝るものはなく、悲しみとして、精神が散りぢりになることに勝るものはなく、病として、定まりなく乱れることに勝るものはなく、短慮として、かりそめに得ようとすることに勝るものはなく、暗さとして、貪りと卑しさに勝るものはなく、孤立として、自分だけを頼むことに勝るものはなく、危うさとして、疑わしい者に任せることに勝るものはなく、敗北として、私心が多いことに勝るものはありません。以上が第四章で、根本は徳から離れてはならないという意味です。
解説
前の章句と同じ型で、今度は避けるべきものを多く並べます。足るを知る、願いを減らす、気を散らさない、苟くも得ようとしない、貪らない、自分だけを頼まない、疑わしい者に重要な任務を渡さない、私心を抑える、という実用的な戒めです。「無常」を病とする点は、定まりなく乱れる心のあり方を指すと読めます。現代の組織なら、目先の成果に飛びつく短期志向、一人で抱え込む自己過信、適性の定まらない人への大役の任せ方などに当てはまり、一つ一つが点検項目にもなります。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
知足多願精散苟得貪鄙自恃
関連する章句
-
『格言聯璧』持躬類・安きは足るを知るより安きは莫し受享して慮り疾病に及べば、則ち儉を用ふ。 安きは足るを知るより安きは莫く、危きは多言より危きは莫し。 貴きは求むる無きより貴きは莫く、賤しきは欲多きより賤しきは莫く、樂しきは善を好むより樂しきは莫く、苦しきは貪り多きより苦しきは莫く、長ずるは博く謀るより長ずるは莫く、短なるは自ら恃むより短なるは莫く、明かなるは物を體するより明かなるは莫く、暗きは幾に昧きより暗きは莫し。
-
素書・『素書』福禍は積み重ねにある怨みは小過を舎かざるに在り、患いは預め謀を定めざるに在り。福は善を積むに在り、禍は悪を積むに在り、饑えは農を賤しむに在り、寒きは織を惰るに在り、安きは人を得るに在り、危うきは事を失うに在り。富は来たるを迎うるに在り、貧は時を棄つるに在り。上常に躁ぐこと無ければ、下疑心無し。上を軽んずれば罪を生じ、下を侮れば親しむ無し。近臣重んぜられざれば、遠臣之を軽んず。自ら疑う者は人を信ぜず、自ら信ずる者は人を疑わず。
-
素書・『素書』道ある者は吉、同じ者は引き合う夫れ人の行う所、道有れば則ち吉、道無ければ則ち凶なり。吉なる者は百福の帰する所、凶なる者は百禍の攻むる所、其の神聖に非ず、自然の鍾まる所なり。善策を務むる者は悪事無く、遠慮無き者は近憂有り。志を同じくすれば相得、仁を同じくすれば相憂い、悪を同じくすれば相党し、愛を同じくすれば相求め、美を同じくすれば相妬み、智を同じくすれば相謀り、貴を同じくすれば相害し、利を同じくすれば相忌み、声を同じくすれば相応じ、気を同じくすれば相感じ、類を同じくすれば相依り、義を同じくすれば相親しみ、難を同じくすれば相済い、道を同じくすれば相成し、芸を同じくすれば相規し、巧を同じくすれば相勝つ。此れ乃ち数の得る所、理と違う有らず。
-
『酔古堂剣掃』集醒・足るを知る者は身貧しくして心富む得るを貪る者は、身富みて心貧し。足るを知る者は、身貧しくして心富む。高きに居る者は、形逸にして神勞す。下に處る者は、形勞して神逸す。
-
『大和俗訓』巻之四・心術下一慾すくなくして、わが身の足る事を知るものは、分限を安んじて、貧賤にしても亦楽しむ。たのしむ者は常にあきたる。慾多くして、足る事を知らざるものは、富貴にしても、分限を知らずして、あきたらず。あきたらざる者は、楽むことを知らずして、外に求めて止まず。つひにわざはひとなる事、亦多し。
-
素書・『素書』心得の最上六つ夫れ志心篤行の術は、長きは博く謀るより長きは莫く、安きは辱を忍ぶより安きは莫く、先なるは徳を修むるより先なるは莫く、楽しきは善を好むより楽しきは莫く、神なるは至誠より神なるは莫し。明らかなるは物を体するより明らかなるは莫し。