酔古堂剣掃 / 集醒・足るを知る者は身貧しくして心富む
貪得者,身富而心貧;知足者,身貧而心富;居高者,形逸而神勞;處下者,形勞而神逸。
新字:貪得者,身富而心貧;知足者,身貧而心富;居高者,形逸而神労;処下者,形労而神逸。
書き下し
得るを貪る者は、身富みて心貧し。足るを知る者は、身貧しくして心富む。高きに居る者は、形逸にして神勞す。下に處る者は、形勞して神逸す。
現代語訳
得ることを貪る人は、身は富んでいても心は貧しいのです。足ることを知る人は、身は貧しくても心は豊かです。高い地位にいる人は、体は楽でも精神は疲れています。低い地位にいる人は、体は疲れても精神は安らかです。
解説
貪る人と足るを知る人、高きに居る人と下に処る人を、それぞれ身と心で対比した一則です。四つの句が二組の対になり、外から見える豊かさや楽さと、内の心の状態が逆になっていることを示しています。老子にも足るを知る者は富むという言葉があります。欲の深い人は、どれだけ得ても満たされず、心はいつも飢えています。地位の高い人は、体を動かさなくても、責任や気苦労で神経をすり減らしています。外から見た境遇だけで、人の幸不幸は測れないということです。昇進や収入を目指すのは悪いことではありませんが、それで心が貧しくなったり疲れたりしていないか、ときどき確かめてみることが大切です。
この章句が説くこと
知足清貧名利処世心身
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