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春秋左氏伝 / 哀公十八年・十九年 聖人は卜筮を煩はさず

十八年春。宋殺皇瑗。公聞其情。復皇氏之族。使皇緩為右師。巴人伐楚。圍鄾。初。右司馬子國之卜也。觀瞻曰。如志。故命之。及巴師至。將卜師。王曰。寧如志。何卜焉。使帥師而行。請承。王曰。寢尹工尹。勤先君者也。三月。楚公孫寧。吳由于。薳固。敗巴師于鄾。故封子國於析。君子曰。惠王知志。夏書曰。官占。唯能蔽志。昆命于元龜。其是之謂乎。志曰。聖人不煩卜筮。惠王其有焉。夏。衛石圃逐其君起。起奔齊。衛侯輒自齊復歸。逐石圃。而復石魋。與大叔遺。十九年春。越人侵楚。以誤吳也。夏。楚公子慶。公孫寬。追越師。至冥。不及。乃還。秋。楚沈諸梁伐東夷。三夷男女。及楚師盟于敖。冬。叔青如京師。敬王崩故也。

新字:十八年春。宋殺皇瑗。公聞其情。復皇氏之族。使皇緩為右師。巴人伐楚。囲鄾。初。右司馬子国之卜也。観瞻曰。如志。故命之。及巴師至。将卜師。王曰。寧如志。何卜焉。使帥師而行。請承。王曰。寝尹工尹。勤先君者也。三月。楚公孫寧。呉由于。薳固。敗巴師于鄾。故封子国於析。君子曰。恵王知志。夏書曰。官占。唯能蔽志。昆命于元亀。其是之謂乎。志曰。聖人不煩卜筮。恵王其有焉。夏。衛石圃逐其君起。起奔斉。衛侯輒自斉復帰。逐石圃。而復石魋。与大叔遺。十九年春。越人侵楚。以誤呉也。夏。楚公子慶。公孫寛。追越師。至冥。不及。乃還。秋。楚沈諸梁伐東夷。三夷男女。及楚師盟于敖。冬。叔青如京師。敬王崩故也。

書き下し

十八年春、宋、皇瑗を殺す。公、其の情を聞き、皇氏の族を復し、皇緩をして右師為らしむ。巴人、楚を伐ちて鄾を圍む。初め、右司馬子國の卜ふや、觀瞻曰く、「志の如し」と。故に之に命ず。巴師の至るに及び、將に師を卜せんとす。王曰く、「寧は志の如し。何ぞ卜せん」と。師を帥ゐて行かしむ。承を請ふ。王曰く、「寢尹・工尹は、先君に勤めし者なり」と。三月、楚の公孫寧・吳由于・薳固、巴師を鄾に敗る。故に子國を析に封ず。君子曰く、「惠王は志を知る。夏書に曰く、『官占は、唯だ能く志を蔽めて、昆に元龜に命ず』と。其れ是の謂か。志に曰く、『聖人は卜筮を煩はさず』と。惠王其れ焉有り」と。夏、衛の石圃、其の君起を逐ふ。起、齊に奔る。衛侯輒、齊より復歸し、石圃を逐ひて、石魋と大叔遺とを復す。十九年春、越人、楚を侵す。以て吳を誤るなり。夏、楚の公子慶・公孫寬、越師を追ひ、冥に至る。及ばず。乃ち還る。秋、楚の沈諸梁、東夷を伐つ。三夷の男女、楚師と敖に盟ふ。冬、叔青、京師に如く。敬王崩ずる故なり。

現代語訳

哀公十八年の春、宋は皇瑗を殺した。のちに景公は事の真相を知り、皇氏一族の地位を回復させ、皇緩を右師とした。巴の人々が楚を討ち、鄾を包囲した。これより先、右司馬に子国(公孫寧)を任じるかを占ったとき、占い役の観瞻(かんせん)は「志のとおりです」と判じた。それで子国に任命したのである。巴の軍が来ると、総大将を誰にするか占おうとした。王(恵王)は言った。「寧(子国)はかつて志のとおりと出た。どうしてまた占う必要があろう」。そして子国に軍を率いて出陣させた。子国は副将をつけてほしいと願い出た。王は言った。「寝尹と工尹は、先君によく尽くした者たちだ」。三月、楚の公孫寧・呉由于・薳固が鄾で巴の軍を破った。それで子国を析に封じた。君子は言った。「恵王は志を知る人であった。『夏書』に『占いを司る官は、まず人の志を定め、そのうえで大亀に命じて占う』とある。まさにこのことを言うのであろう。古い記録に『聖人は卜筮をむやみに煩わさない』とある。恵王にはそれがあった」。夏、衛の石圃がその君の起を追放した。起は斉に亡命した。衛侯輒(出公)が斉から帰国して復位し、石圃を追放して、石魋と大叔遺を呼び戻した。哀公十九年の春、越人が楚を侵した。呉を欺いて油断させるためであった。夏、楚の公子慶と公孫寛が越の軍を追って冥まで行ったが、追いつけずに引き返した。秋、楚の沈諸梁(葉公)が東夷を討った。三つの夷の男女が楚の軍と敖で盟約した。冬、叔青が周の都に行った。敬王が崩御したためである。

解説

楚の恵王は、かつて子国を右司馬に任じたとき「志の如し」と占いに出たのを覚えていて、巴の侵攻に際して改めて占わずに子国を送り出した。君子はこれを『夏書』の「官占は、唯だ能く志を蔽めて、昆に元龜に命ず」と、古い記録の「聖人は卜筮を煩はさず」を引いて称える。占いは、まず人が意思を定めたうえで確かめるものであって、決断そのものを預けるものではない。一度確かめた判断を、事が起こるたびに占い直して揺らがせない。当時の占いに依存する政治のなかで、左伝が決断の主体を人に置く考えを示した一節として注目される。後半は衛の君主の交代、越が楚を攻めて呉を欺く策、敬王の崩御と、記録が続く。越の動きは次の句から始まる呉の滅亡への伏線である。一度下した判断を状況ごとに蒸し返さない姿勢は、任せた人への信頼の示し方としても読める。

この章句が説くこと

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