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春秋左氏伝 / 定公四年 子大叔の九言

若之何其使蔡先衛也。武王之母弟八人。周公為太宰。康叔為司寇。聃季為司空。五叔無官。豈尚年哉。曹。文之昭也。晉。武之穆也。曹為伯甸。非尚年也。今將尚之。是反先王也。晉文公為踐土之盟。衛成公不在。夷叔。其母弟也。猶先蔡。其載書云。王若曰。晉重。魯申。衛武。蔡甲午。鄭捷。齊潘。宋王臣。莒期。藏在周府。可覆視也。吾子欲復文武之略。而不正其德。將如之何。萇弘說。告劉子。與范獻子謀之。乃長衛侯於盟。反自召陵。鄭子大叔未至而卒。晉趙簡子為之臨甚哀。曰。黃父之會。夫子語我九言曰。無始亂。無怙富。無恃寵。無違同。無敖禮。無驕能。無復怒。無謀非德。無犯非義。沈人不會于召陵。晉人使蔡伐之。

新字:若之何其使蔡先衛也。武王之母弟八人。周公為太宰。康叔為司寇。聃季為司空。五叔無官。豈尚年哉。曹。文之昭也。晋。武之穆也。曹為伯甸。非尚年也。今将尚之。是反先王也。晋文公為践土之盟。衛成公不在。夷叔。其母弟也。猶先蔡。其載書云。王若曰。晋重。魯申。衛武。蔡甲午。鄭捷。斉潘。宋王臣。莒期。蔵在周府。可覆視也。吾子欲復文武之略。而不正其徳。将如之何。萇弘説。告劉子。与范献子謀之。乃長衛侯於盟。反自召陵。鄭子大叔未至而卒。晋趙簡子為之臨甚哀。曰。黄父之会。夫子語我九言曰。無始乱。無怙富。無恃寵。無違同。無敖礼。無驕能。無復怒。無謀非徳。無犯非義。沈人不会于召陵。晋人使蔡伐之。

書き下し

若之何ぞ其れ蔡をして衛に先んぜしめんや。武王の母弟八人、周公は太宰為り、康叔は司寇為り、聃季は司空為り、五叔は官無し。豈に年を尚ばんや。曹は文の昭なり。晉は武の穆なり。曹は伯甸為り、年を尚ぶに非ざるなり。今將に之を尚ばんとす、是れ先王に反くなり。晉の文公踐土の盟を為す。衛の成公在らず、夷叔は其の母弟なり、猶ほ蔡に先んず。其の載書に云ふ、『王若(かく)のごとく曰く、晉の重、魯の申、衛の武、蔡の甲午、鄭の捷、齊の潘、宋の王臣、莒の期』と。周府に藏す、覆視す可きなり。吾子文武の略を復せんと欲して、其の德を正さずんば、將に之を如何せんとす」と。萇弘說び、劉子に告げ、范獻子と之を謀り、乃ち衛侯を盟に長とす。召陵より反る。鄭の子大叔未だ至らずして卒す。晉の趙簡子之が為に臨みて甚だ哀しみて曰く、「黃父の會に、夫子我に九言を語りて曰く、『亂を始むる無かれ、富を怙む無かれ、寵を恃む無かれ、同に違ふ無かれ、禮に敖る無かれ、能に驕る無かれ、怒りを復びする無かれ、德に非ざるを謀る無かれ、義に非ざるを犯す無かれ』と」と。沈人召陵に會せず。晉人蔡をして之を伐たしむ。

現代語訳

どうして蔡を衛より先にできましょうか。武王の同母の弟は八人いましたが、周公は太宰、康叔は司寇、聃季は司空となり、ほかの五人の叔は官職がありませんでした。どうして年齢を尊んだといえましょう。曹は文王の子の系統(昭)であり、晋は武王の子の系統(穆)です(世代では曹が上です)。しかし曹は伯甸(下位の等級)とされました。年齢を尊ばなかったのです。いま年齢を尊ぼうとするのは、先王に背くことです。晋の文公が践土の盟を結んだとき、衛の成公は不在で、その同母の弟の夷叔(叔武)が出席しましたが、それでもなお蔡より先に置かれました。その盟約の文書にはこうあります。『王はこのように言う。晋の重(文公)、魯の申(僖公)、衛の武(叔武)、蔡の甲午(荘侯)、鄭の捷(文公)、斉の潘(昭公)、宋の王臣(成公)、莒の期』。これは周の府庫に収められていて、調べ直すことができます。あなたが文王・武王の規範を復興しようとしながら、その徳による序列を正さないのなら、いったいどうなさるおつもりですか」。萇弘は納得して喜び、劉子(劉文公)に告げ、范献子と相談して、盟約では衛侯を先にした。召陵から帰る途中、鄭の子大叔(游吉)が、帰り着かないうちに亡くなった。晋の趙簡子は彼のために弔いに臨んでたいへん悲しみ、言った。「黄父の会のとき、あの方は私に九つの言葉を語ってくれた。『乱を始めるな、富を頼むな、寵愛を恃むな、衆の同意に背くな、礼を侮るな、才能に驕るな、怒りを繰り返すな、徳にかなわぬことを謀るな、義にかなわぬことを犯すな』と」。沈の人々は召陵の会に参加しなかった。晋の人々は蔡に沈を伐たせた。

解説

祝佗の弁論の締めくくりである。武王の弟八人のうち官に就いたのは三人だけで、残る五人は官がなかった。世代が上の曹は下位の等級に置かれた。そして決定打として、晋の文公の践土の盟の載書を示す。衛は君主の代理の弟が出席したにもかかわらず、蔡より先に書かれていた。しかもその文書は周の府庫にあり、今すぐ確かめられる。萇弘は納得して喜び、衛が先となった。原則、先例、そして検証できる記録と、論拠を順に積み重ねる構成は、左伝の中でも屈指の弁論である。後半は鄭の子大叔(游吉)の死で、趙簡子がかつて授けられた「九言」を思い出して哀しむ。乱を始めるな、富を頼むな、寵を恃むな、能に驕るな、など、いずれも力を持つ者が陥りやすい振る舞いへの戒めで、若い執政に向けた先輩の言葉として読むと味わいが深い。自分の立場を主張するときは、相手が確かめられる記録に立つのが最も強い。

この章句が説くこと

戒め驕り序列証拠弁論謙虚

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