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春秋左氏伝 / 昭公五年 一臧一否、誰か能く当たらん

將以釁鼓。則吳知所備矣。敝邑雖羸。若早脩完。其可以息師。難易有備。可謂吉矣。且吳社稷是卜。豈為一人。使臣獲釁軍鼓。而敝邑知備。以禦不虞。其為吉孰大焉。國之守龜。其何事不卜。一臧一否。其誰能當之。城濮之兆。其報在邲。今此行也。其庸有報志。乃弗殺。楚師濟於羅汭。沈尹赤會楚子次於萊山。薳射帥繁揚之師。先入南懷。楚師從之。及汝清。吳不可入。楚子遂觀兵於坻箕之山。是行也。吳早設備。楚無功而還。以蹶由歸。楚子懼吳。使沈尹射待命于巢。薳啟彊待命于雩婁。禮也。秦后子復歸於秦。景公卒故也。

新字:将以釁鼓。則呉知所備矣。敝邑雖羸。若早脩完。其可以息師。難易有備。可謂吉矣。且呉社稷是卜。豈為一人。使臣獲釁軍鼓。而敝邑知備。以禦不虞。其為吉孰大焉。国之守亀。其何事不卜。一臧一否。其誰能当之。城濮之兆。其報在邲。今此行也。其庸有報志。乃弗殺。楚師済於羅汭。沈尹赤会楚子次於萊山。薳射帥繁揚之師。先入南懐。楚師従之。及汝清。呉不可入。楚子遂観兵於坻箕之山。是行也。呉早設備。楚無功而還。以蹶由帰。楚子懼呉。使沈尹射待命于巣。薳啓彊待命于雩婁。礼也。秦后子復帰於秦。景公卒故也。

書き下し

將に以て鼓に釁らんとす。則ち吳備ふる所を知らん。敝邑羸(よわ)しと雖も、若し早く脩完せば、其れ以て師を息むべし。難易に備へ有り、吉と謂ふべし。且つ吳は社稷を是れ卜す、豈に一人の為ならんや。使臣軍鼓に釁らるるを獲て、敝邑備へを知り、以て不虞を禦がば、其の吉為ること孰れか大ならん。國の守龜、其れ何事をか卜せざらん。一は臧(よ)く一は否(あ)し、其れ誰か能く之に當たらん。城濮の兆、其の報いは邲に在り。今此の行や、其れ庸ぞ報ゆる志有らん」と。乃ち殺さず。楚の師羅汭を濟る。沈尹赤楚子に會して萊山に次る。薳射繁揚の師を帥ゐて、先づ南懷に入る。楚の師之に從ふ。汝清に及ぶ。吳入るべからず。楚子遂に兵を坻箕の山に觀す。是の行や、吳早く備へを設け、楚功無くして還る。蹶由を以て歸る。楚子吳を懼れ、沈尹射をして命を巢に待たしめ、薳啟彊をして命を雩婁に待たしむ。禮なり。秦の后子秦に復歸す。景公卒する故なり。

現代語訳

(蹶由の言葉の続き)殺して軍鼓に血を塗ろうとしておられます。それならば呉は何に備えるべきかを知ることができます。敝邑は弱いとはいえ、早く守りを整えれば、君の軍を止めることができましょう。難しい場合にも易しい場合にも備えがあるのですから、吉と言うべきです。それに呉が占ったのは国家社稷のことであって、どうして私一人の身のためでありましょう。使者である私が軍鼓の血祭りにされ、それによって敝邑が備えるべきことを知り、不測の事態を防げるなら、これより大きな吉がありましょうか。国の守りの亀甲は、どんなことでも占います。あるときは吉、あるときは凶と出ますが、そのどちらに当たるかを誰が決められましょう。城濮の戦いの吉兆は、その報いが邲の敗戦となって現れました。今回の出兵も、いずれ報いがないとどうして言えましょう」。そこで楚は蹶由を殺さなかった。楚軍は羅汭を渡った。沈尹赤が楚子と合流して萊山に駐屯した。薳射が繁揚の軍を率いて先に南懐に入り、楚軍がそれに続いた。汝清まで進んだが、呉には攻め込めなかった。楚子はそこで坻箕の山で軍を閲兵して示威した。この出兵では、呉が早くから備えを固めていたので、楚は何の功もなく引き返した。蹶由を連れて帰った。楚子は呉を恐れ、沈尹射を巣で、薳啓彊を雩婁で待機させ、命令を待たせた。これは礼にかなったことである。秦の后子(公子鍼)が秦に帰国した。景公が亡くなったからである。

解説

蹶由の弁明の後半である。自分が殺されれば呉はかえって備えを知る。占ったのは国家の吉凶であって自分一人の命ではない。だから殺されても吉だと言い切る。さらに占いそのものの性質に踏み込み、「一は臧く一は否し、其れ誰か能く之に當たらん」と述べる。吉凶はどちらにも転ぶもので、誰もそれを一方に決めることはできない。城濮で晋に出た吉兆が、のちに邲の敗戦として報いを受けたように、今回の楚の出兵にもいずれ報いがあるかもしれない、と釘を刺して結ぶ。霊王は蹶由を殺さなかった。呉は実際に早くから備えを整えており、楚は閲兵で威を示しただけで引き返した。占いの結果を運命として受け取るのではなく、その結果をどう使うかで吉にも凶にもなる、という蹶由の考え方が、戦役の結末でも裏づけられている。

この章句が説くこと

占い備え機転因果外交

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