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春秋左氏伝 / 襄公三十一年 文王の威儀

父子兄弟。內外大小。皆有威儀也。周詩曰。朋友攸攝。攝以威儀。言朋友之道。必相教訓。以威儀也。周書數文王之德曰。大國畏其力。小國懷其德。言畏而愛之也。詩云。不識不知。順帝之則。言則而象之也。紂囚文王七年。諸侯皆從之囚。紂於是乎懼而歸之。可謂愛之。文王伐崇。再駕而降為臣。蠻夷帥服。可謂畏之。文王之功。天下誦而歌舞之。可謂則之。文王之行。至今為法。可謂象之。有威儀也。故君子在位可畏。施舍可愛。進退可度。周旋可則。容止可觀。作事可法。德行可象。聲氣可樂。動作有文。言語有章。以臨其下。謂之有威儀也。

新字:父子兄弟。内外大小。皆有威儀也。周詩曰。朋友攸摂。摂以威儀。言朋友之道。必相教訓。以威儀也。周書数文王之徳曰。大国畏其力。小国懐其徳。言畏而愛之也。詩云。不識不知。順帝之則。言則而象之也。紂囚文王七年。諸侯皆従之囚。紂於是乎懼而帰之。可謂愛之。文王伐崇。再駕而降為臣。蠻夷帥服。可謂畏之。文王之功。天下誦而歌舞之。可謂則之。文王之行。至今為法。可謂象之。有威儀也。故君子在位可畏。施舎可愛。進退可度。周旋可則。容止可観。作事可法。徳行可象。声気可楽。動作有文。言語有章。以臨其下。謂之有威儀也。

書き下し

父子兄弟、內外大小、皆威儀有るを言ふなり。周詩に曰く、『朋友の攝くる攸は、攝くるに威儀を以てす』と。朋友の道は、必ず相教訓するに威儀を以てするを言ふなり。周書に文王の德を數へて曰く、『大國は其の力を畏れ、小國は其の德を懷ふ』と。畏れて之を愛するを言ふなり。詩に云ふ、『識らず知らず、帝の則に順ふ』と。則りて之に象るを言ふなり。紂文王を囚ふること七年、諸侯皆之に從ひて囚はる。紂是に於てか懼れて之を歸す。之を愛すと謂ふべし。文王崇を伐ち、再駕して降りて臣と為る。蠻夷帥ゐて服す。之を畏ると謂ふべし。文王の功、天下誦して之を歌舞す。之に則ると謂ふべし。文王の行ひ、今に至るまで法と為す。之に象ると謂ふべし。威儀有ればなり。故に君子位に在りて畏るべく、施舍愛すべく、進退度とすべく、周旋則るべく、容止觀るべく、作事法とすべく、德行象るべく、聲氣樂しむべし。動作文有り、言語章有り、以て其の下に臨む。之を威儀有りと謂ふなり」と。

現代語訳

父子・兄弟、内と外、大と小のあらゆる関係に、それぞれ威儀があることを言っているのです。周の詩に『友人どうしが助け合うのは、威儀によってである』とあるのは、友人の道は必ず威儀によって互いに教え導き合うものだということを言っているのです。『周書』は文王の徳を数え上げて『大国はその力を畏れ、小国はその徳を慕う』と述べています。これは畏れつつ愛することを言っているのです。『詩』に『知らず知らずのうちに、上帝の法則に従う』とあるのは、手本として見習うことを言っているのです。紂王が文王を七年間捕らえていたとき、諸侯はみな文王に従って自ら捕らわれの身となりました。紂はそこで恐れて文王を釈放しました。これは文王が愛されていたと言えます。文王が崇を討ったとき、二度出兵しただけで崇は降伏して臣下となり、蛮夷も相率いて服従しました。これは文王が畏れられていたと言えます。文王の功績は、天下の人々が誦し、歌い舞いました。これは文王が手本とされたと言えます。文王の行いは、今日に至るまで規範とされています。これは文王が見習われていると言えます。いずれも文王に威儀があったからです。ですから君子は、位にあっては畏れられるべく、施しや赦しは慕われるべく、進むも退くも法度となるべく、立ち居振る舞いは手本となるべく、容貌や態度は見るに足るべく、事業は規範となるべく、徳行は見習われるべく、声や気配は人を楽しませるべきなのです。動作には筋目があり、言葉には条理があって、それによって下の者に臨む。これを威儀があるというのです」。

解説

前の句に続く北宮文子の威儀論の後半である。威儀は君臣の間だけでなく、父子・兄弟・朋友など、あらゆる人間関係に通じるものだと説き、その典型として周の文王を挙げる。紂王に七年間囚われたとき諸侯がみな従って囚われの身となったのは「愛された」証であり、崇を二度の出兵で降したのは「畏れられた」証である。人々が功績を歌い、行いを今も規範とするのは「則られ」「象られた」証である。畏・愛・則・象の四つがそろうことが、威儀の完成した姿として示される。結びの「位に在りて畏るべく、施舎愛すべく、進退度とすべく」と続く八句は、指導者の振る舞いを八つの面から並べた名文で、後世に礼容を論じる際の典拠となった。威儀を外見の飾りではなく、周囲が自然に従い見習うようになる総合的な力として捉えている点が読みどころである。前句の公子囲の装った威儀と並べると、形だけの威厳と中身を伴った威厳との違いが浮かび上がる。

この章句が説くこと

威儀徳手本リーダーシップ礼容

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