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春秋左氏伝 / 襄公二十四年 部婁に松柏無し

冬。楚子伐鄭以救齊。門于東門。次于棘澤。諸侯還救鄭。晉侯使張骼。輔躒。致楚師。求御于鄭。鄭人卜宛射犬吉。子大叔戒之曰。大國之人。不可與也。對曰無有眾寡。其上一也。大叔曰。不然。部婁無松柏。二子在幄。坐射犬于外。既食而後食之。使御廣車而行。己皆乘乘車。將及楚師。而後從之乘。皆踞轉而鼓琴。近不告而馳之。皆取冑於櫜而冑。入壘皆下。搏人以投。收禽挾囚。弗待而出。皆超乘。抽弓而射。既免。復踞轉而鼓琴。曰。公孫同乘。兄弟也。故再不謀。對曰。曩者志入而已。今則怯也。皆笑曰。公孫之亟也。楚子自棘澤還。使薳啟彊帥師送陳無宇。吳人為楚舟師之役故。召舒鳩人。舒鳩人叛楚。

新字:冬。楚子伐鄭以救斉。門于東門。次于棘沢。諸侯還救鄭。晋侯使張骼。輔躒。致楚師。求御于鄭。鄭人卜宛射犬吉。子大叔戒之曰。大国之人。不可与也。対曰無有衆寡。其上一也。大叔曰。不然。部婁無松柏。二子在幄。坐射犬于外。既食而後食之。使御広車而行。己皆乗乗車。将及楚師。而後従之乗。皆踞転而鼓琴。近不告而馳之。皆取冑於櫜而冑。入塁皆下。搏人以投。収禽挟囚。弗待而出。皆超乗。抽弓而射。既免。復踞転而鼓琴。曰。公孫同乗。兄弟也。故再不謀。対曰。曩者志入而已。今則怯也。皆笑曰。公孫之亟也。楚子自棘沢還。使薳啓彊帥師送陳無宇。呉人為楚舟師之役故。召舒鳩人。舒鳩人叛楚。

書き下し

冬、楚子鄭を伐ちて以って齊を救ふ。東門に門し、棘澤に次る。諸侯還りて鄭を救ふ。晉侯張骼・輔躒をして楚師に致さしめ、御を鄭に求む。鄭人卜するに宛射犬吉なり。子大叔之を戒めて曰く、「大國の人は、與にす可からざるなり」と。對へて曰く、「眾寡有る無く、其の上は一なり」と。大叔曰く、「然らず。部婁に松柏無し」と。二子幄に在り、射犬を外に坐せしめ、既に食して而る後に之に食せしむ。廣車を御して行かしめ、己は皆乘車に乘る。將に楚師に及ばんとして、而る後に之に從ひて乘る。皆轉に踞して琴を鼓す。近づけども告げずして之を馳す。皆冑を櫜より取りて冑し、壘に入りて皆下り、人を搏ちて以って投げ、禽を收め囚を挾む。待たずして出づ。皆超乘し、弓を抽きて射る。既に免れ、復た轉に踞して琴を鼓して曰く、「公孫、乘を同じくす、兄弟なり。故に再び謀らざるか」と。對へて曰く、「曩者は入るを志すのみ。今は則ち怯なり」と。皆笑ひて曰く、「公孫の亟なるかな」と。楚子棘澤より還り、薳啟彊をして師を帥ゐて陳無宇を送らしむ。吳人楚の舟師の役の為の故に、舒鳩人を召す。舒鳩人楚に叛く。

現代語訳

冬、楚子は鄭を攻めて斉を救おうとした。鄭の東門を攻め、棘沢に駐屯した。諸侯は夷儀から引き返して鄭を救援した。晋侯(平公)は張骼と輔躒に楚軍へ挑戦させることにし、その御者を鄭に求めた。鄭が占うと宛射犬が吉と出た。子大叔(游吉)は射犬に戒めて言った。「大国の人とは対等にふるまってはならない」。射犬は答えた。「兵の多い少ないにかかわらず、御者が車の上で上位にあるのは同じです」。大叔は言った。「そうではない。小さな丘には松や柏は生えないのだ(小国の者は大国の者と同列ではない)」。張骼と輔躒の二人は幕舎の中にいて、射犬を外に座らせ、自分たちが食べ終わってから射犬に食事をさせた。射犬には広車(戦車)を御して行かせ、自分たちは普通の乗用車に乗った。楚軍に近づいてから、ようやく射犬の戦車に乗り移った。二人は車の横木に腰かけて琴を弾いていた。射犬は楚軍に近づいても何も告げずに車を突っ込ませた。二人はあわてて袋から兜を取り出してかぶり、敵の砦に入るとみな車から飛び降り、敵兵をつかんでは投げ飛ばし、捕虜を縛って脇に抱えた。射犬は二人を待たずに車を出した。二人はみな走っている車に飛び乗り、弓を取って射た。危地を脱すると、二人はまた横木に腰かけて琴を弾きながら言った。「公孫(射犬)よ、同じ車に乗れば兄弟ではないか。どうして二度とも我々に相談しなかったのだ」。射犬は答えた。「さきほどは突入することだけを考えていました。いまは恐ろしくなったのです」。二人はみな笑って言った。「公孫はせっかちなことだ」。楚子は棘沢から帰り、薳啓彊に軍を率いさせて陳無宇を斉へ送らせた。呉は楚の水軍の役の報復として、舒鳩の人々を招き寄せた。舒鳩は楚に背いた。

解説

晋の勇士張骼と輔躒が楚軍に一騎討ちを挑み、その戦車の御者を鄭から出させた。選ばれた宛射犬に、子大叔は「大国の人とは対等にふるまうな」と戒め、「部婁に松柏無し」、小さな丘に大木は育たないと言った。小国の者は大国の者と同列ではないという、身の程を知れという忠告である。案の定、二人は射犬を外に座らせ、食事も後回しにした。射犬はその仕打ちに、戦場で応えた。敵陣に近づいても告げずに突っ込み、帰りも二人を待たずに車を出した。二人は兜も付けていなかったが、そこは勇士で、敵兵を投げ飛ばし捕虜を抱えて走る車に飛び乗った。そのうえで琴を弾きながら「同じ車に乗れば兄弟だ」と言うあたりに余裕がある。射犬の「さっきは突入することしか考えず、今は怖くなった」という答えに二人は笑った。立場の違う協力者を軽んじると、どこで意趣返しをされるか分からない。

この章句が説くこと

分限処遇協力勇気意趣返し

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