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春秋左氏伝 / 襄公二十三年 乱に克つは権に在り

四月。欒盈帥曲沃之甲。因魏獻子以晝入絳。初。欒盈佐魏莊子於下軍。獻子私焉。故因之。趙氏以原屏之難怨欒氏。韓趙方睦。中行氏以伐秦之役怨欒氏。而固與范氏和親。知悼子少而聽於中行氏。程鄭嬖於公。唯魏氏及七輿大夫與之。樂王鮒侍坐於范宣子。或告曰。欒氏至矣。宣子懼。桓子曰。奉君以走固宮。必無害也。且欒氏多怨。子為政。欒氏自外。子在位。其利多矣。既有利權。又執民柄。將何懼焉。欒氏所得。其唯魏氏乎。而可強取也。夫克亂在權。子無懈矣。公有姻喪。王鮒使宣子墨縗冒絰。二婦人輦以如公。奉公以如固宮。范鞅逆魏舒。則成列既乘。將逆欒氏矣。趨進曰。欒氏帥賊以入。

新字:四月。欒盈帥曲沃之甲。因魏献子以昼入絳。初。欒盈佐魏荘子於下軍。献子私焉。故因之。趙氏以原屏之難怨欒氏。韓趙方睦。中行氏以伐秦之役怨欒氏。而固与范氏和親。知悼子少而聴於中行氏。程鄭嬖於公。唯魏氏及七輿大夫与之。楽王鮒侍坐於范宣子。或告曰。欒氏至矣。宣子懼。桓子曰。奉君以走固宮。必無害也。且欒氏多怨。子為政。欒氏自外。子在位。其利多矣。既有利権。又執民柄。将何懼焉。欒氏所得。其唯魏氏乎。而可強取也。夫克乱在権。子無懈矣。公有姻喪。王鮒使宣子墨縗冒絰。二婦人輦以如公。奉公以如固宮。范鞅逆魏舒。則成列既乗。将逆欒氏矣。趨進曰。欒氏帥賊以入。

書き下し

四月、欒盈曲沃の甲を帥ゐ、魏獻子に因りて以って晝に絳に入る。初め、欒盈魏莊子を下軍に佐く。獻子焉に私す。故に之に因る。趙氏原・屏の難を以って欒氏を怨む。韓・趙方に睦まじ。中行氏伐秦の役を以って欒氏を怨み、而して固より范氏と和親す。知悼子少くして中行氏に聽く。程鄭公に嬖せらる。唯だ魏氏及び七輿大夫のみ之に與す。樂王鮒范宣子に侍坐す。或ひと告げて曰く、「欒氏至れり」と。宣子懼る。桓子曰く、「君を奉じて以って固宮に走らば、必ず害無からん。且つ欒氏は怨み多し。子は政を為す。欒氏は外よりし、子は位に在り、其の利多し。既に利權有り、又民の柄を執る、將た何をか懼れん。欒氏の得る所は、其れ唯だ魏氏のみか。而して強ひて取る可し。夫れ亂に克つは權に在り。子懈ること無かれ」と。公に姻喪有り。王鮒宣子をして墨縗冒絰し、二婦人輦して以って公に如かしめ、公を奉じて以って固宮に如く。范鞅魏舒を逆ふ。則ち列を成して既に乘り、將に欒氏を逆へんとす。趨り進みて曰く、「欒氏賊を帥ゐて以って入る。

現代語訳

四月、欒盈は曲沃の兵を率い、魏献子(魏舒)を頼みとして、白昼に都の絳に入った。かつて欒盈は下軍で魏荘子(魏絳、献子の父)の副将を務めており、献子は欒盈と個人的に親しかった。それで彼を頼ったのである。一方、趙氏は原・屏の難(趙同・趙括が滅ぼされた事件)のことで欒氏を怨んでいた。韓氏と趙氏はちょうど仲がよかった。中行氏は秦を伐った戦役(欒黶が勝手に撤退した件)のことで欒氏を怨み、もともと范氏と親しかった。知悼子(荀盈)は幼く、中行氏の言うことに従っていた。程鄭は平公に寵愛されていた。ただ魏氏と七輿大夫だけが欒氏に味方した。楽王鮒(楽桓子)が范宣子のそばに座っていたとき、ある者が「欒氏が来ました」と告げた。宣子は恐れた。桓子は言った。「君をお連れして固宮(堅固な宮殿)に逃げ込めば、必ず害はありません。それに欒氏には怨む者が多い。あなたは政治を執っている。欒氏は外から来た者、あなたは位にある者で、有利な点は多い。利と権限を握り、そのうえ民を動かす権柄を執っているのに、何を恐れることがありましょう。欒氏が味方にできるのは、おそらく魏氏だけでしょう。しかもそれは力ずくで奪い取れます。そもそも乱に勝つかどうかは権(機を見た処置)にかかっています。気を緩めてはなりません」。ちょうど平公には姻戚の喪があった。王鮒は宣子に黒く染めた喪服と冠の喪帯を着けさせ、二人の婦人に輿を引かせて女の喪の行列に見せかけ、公のもとへ行かせた。そして公を奉じて固宮に入った。范鞅は魏舒を迎えに行った。魏舒の兵はすでに隊列を整えて車に乗り、欒氏を迎えようとしていた。范鞅は走り寄って言った。「欒氏が賊を率いて攻め入りました。

解説

斉の助けで曲沃に入った欒盈が、ついに都の絳に攻め込む。左伝はここで晋の諸卿の立場を一つずつ並べる。趙氏、韓氏、中行氏、知氏、程鄭はそれぞれの因縁から范氏の側にあり、欒氏に付いたのは魏氏と七輿大夫だけだった。戦いの帰趨は、刃を交える前の人間関係でほぼ決まっていたことが分かる。慌てる范宣子に、楽王鮒は冷静に利害を数え上げた。君主を確保すること、政権を握る者と外から来た者の差、そして唯一の味方の魏氏は奪い取れること。「夫れ乱に克つは権に在り」の権は、状況に応じた臨機の処置を指す。宣子を喪服の婦人の行列に紛れさせて君主のもとへ送るという機転がその実例である。危機のときに最初にすべきは正統性の源である君主を押さえることだ、という判断がこの場面の要になっている。有事の際に何を真っ先に確保するかを考えさせる。

この章句が説くこと

権謀危機管理正統性派閥人間関係

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