春秋左氏伝 / 襄公九年 君子は心を労す
冬。十月。諸侯伐鄭。庚午。季武子。齊崔杼。宋皇鄖。從荀罃。士匄。門于鄟門。衛北宮括。曹人。邾人。從荀偃。韓起。門于師之梁。滕人。薛人。從欒黶。士魴。門于北門。杞人。郳人。從趙武。魏絳。斬行栗。甲戌。師于氾。令於諸侯曰。脩器備。盛餱糧。歸老幼。居疾于虎牢。肆眚圍鄭。鄭人恐。乃行成。中行獻子曰。遂圍之。以待楚人之救也。而與之戰。不然無成。知武子曰。許之盟而還師。以敝楚人。吾三分四軍。與諸侯之銳。以逆來者。於我未病。楚不能矣。猶愈於戰。暴骨以逞。不可以爭。大勞未艾。君子勞心。小人勞力。先王之制也。諸侯皆不欲戰。乃許鄭成。
新字:冬。十月。諸侯伐鄭。庚午。季武子。斉崔杼。宋皇鄖。従荀罃。士匄。門于鄟門。衛北宮括。曹人。邾人。従荀偃。韓起。門于師之梁。滕人。薛人。従欒黶。士魴。門于北門。杞人。郳人。従趙武。魏絳。斬行栗。甲戌。師于氾。令於諸侯曰。脩器備。盛餱糧。帰老幼。居疾于虎牢。肆眚囲鄭。鄭人恐。乃行成。中行献子曰。遂囲之。以待楚人之救也。而与之戦。不然無成。知武子曰。許之盟而還師。以敝楚人。吾三分四軍。与諸侯之鋭。以逆来者。於我未病。楚不能矣。猶愈於戦。暴骨以逞。不可以争。大労未艾。君子労心。小人労力。先王之制也。諸侯皆不欲戦。乃許鄭成。
書き下し
冬十月、諸侯鄭を伐つ。庚午、季武子・齊の崔杼・宋の皇鄖、荀罃・士匄に從ひて、鄟門(せんもん)に門す。衛の北宮括・曹人・邾人、荀偃・韓起に從ひて、師之梁に門す。滕人・薛人、欒黶・士魴に從ひて、北門に門す。杞人・郳人、趙武・魏絳に從ひて、行栗を斬る。甲戌、氾に師す。諸侯に令して曰く、「器備を脩め、餱糧を盛り、老幼を歸し、疾を虎牢に居き、眚(あやまち)を肆(ゆる)して鄭を圍め」と。鄭人恐れ、乃ち成を行ふ。中行獻子曰く、「遂に之を圍みて、以て楚人の救を待ち、而して之と戰はん。然らずんば成無し」と。知武子曰く、「之に盟を許して師を還し、以て楚人を敝れしめん。吾、四軍を三分し、諸侯の銳と與に、以て來る者を逆へば、我に於ては未だ病まず、楚は能はざらん。猶ほ戰ふに愈れり。骨を暴して以て逞しくするは、以て爭ふべからず。大勞未だ艾(をさ)まらず。君子は心を勞し、小人は力を勞す、先王の制なり」と。諸侯皆戰ふを欲せず、乃ち鄭の成を許す。
現代語訳
冬十月、諸侯が鄭を討った。庚午の日、季武子(魯)・斉の崔杼(さいちょ)・宋の皇鄖は、晋の荀罃と士匄に従って鄟門を攻めた。衛の北宮括・曹の軍・邾の軍は、荀偃と韓起に従って師之梁の門を攻めた。滕の軍と薛の軍は、欒黶と士魴に従って北門を攻めた。杞の軍と郳の軍は、趙武と魏絳に従って道沿いの栗の木を切り倒した。甲戌の日、氾に陣を敷いた。晋は諸侯に命じて言った。「武器と装備を整え、乾し飯を満たし、老人と幼い者は国へ帰し、病人は虎牢にとどめ置き、軽い罪は赦して、鄭を包囲せよ」。鄭の人々は恐れて、講和を申し入れた。中行献子(荀偃)は言った。「このまま包囲を続けて楚の救援を待ち、楚と戦うべきです。そうでなければ本当の講和にはなりません」。知武子(荀罃)は言った。「鄭に盟約を許して軍を引き揚げ、楚を疲れさせよう。我々は四軍を三つに分け、諸侯の精鋭とともに、交代でやって来る敵を迎え撃てば、我々は疲弊しないが、楚はもちこたえられない。そのほうが戦うよりまだましだ。骨を野にさらして思いを遂げるようなやり方では、争うことはできない。大きな苦労はまだ終わっていない。君子は心を労し、小人は力を労するというのが、先王の定めである」。諸侯は皆戦いを望まなかったので、鄭の講和を許した。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『春秋左氏伝』昭公三十年 伍員、楚を疲れさす冬、十二月、吳子鍾吾子を執へ、遂に徐を伐ち、山を防ぎて以って之に水(みづひた)す。己卯、徐を滅ぼす。徐子章禹其の髮を斷ち、其の夫人を攜へて、以って吳子を逆ふ。吳子唁して之を送り、其の邇臣をして之に從はしむ。遂に楚に奔る。楚の沈尹戌師を帥ゐて徐を救ふも、及ばず。遂に夷に城き、徐子をして之に處らしむ。吳子伍員に問ひて曰く、「初め而(なんぢ)楚を伐たんことを言ふ、余其の可なるを知れり。而るに其の余をして往かしめんことを恐れ、又人の余の功を有つを惡めり。今余將に自ら之を有たんとす。楚を伐つは何如」と。對へて曰く、「楚は執政衆くして乖(そむ)き、患ひに適任する莫し。若し三師を為(つく)りて以って肄(し)せば、一師至らば、彼必ず皆出でん。彼出づれば則ち歸り、彼歸れば則ち出でば、楚必ず道に敝れん。亟(しばしば)肄して以って之を罷らし、多方以って之を誤らしめ、既に罷れて後に三軍を以って之に繼がば、必ず大いに之に克たん」と。闔廬之に從ふ。楚是に於いてか始めて病む。
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『呻吟語』外篇・廣喻・兄は便宜を討り得ること多し僚友笑ひて曰く、「余は口津且に竭きんとす。而して咽は火の若し。始めて信ず、兄は便宜を討り得ること多きを」と。
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『呻吟語』内篇・應務・只是れ力を費やさず聖人の掀天揭地の事業は只管做す、只だ是れ力を費やさず。害を除き惡を去るは只管做す、只だ是れ氣を動かさず。險を蹈み艱に投ずるは只管做す、只だ是れ心を動かさず。
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孫子・作戦篇力屈き財殫き、中原内は家に虚し。百姓の費、十に其の七を去り、公家の費、破車罷馬、甲冑矢弩、戟楯蔽櫓、丘牛大車、十に其の六を去る。
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『呻吟語』内篇・養生・篋に在れば香は韞む篋に在れば香は韞み、几に在れば香は損し、爐に在れば香は燼く。
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