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春秋左氏伝 / 文公元年 秦伯、孟明を責めず

殽之役,晉人既歸秦師,秦大夫及左右皆言於秦伯曰:「是敗也,孟明之罪也,必殺之。」秦伯曰:「是孤之罪也。周芮良夫之詩曰:『大風有隧,貪人敗類。聽言則對,誦言如醉。匪用其良,覆俾我悖。』是貪故也,孤之謂矣。孤實貪以禍夫子,夫子何罪?」復使為政。

新字:殽之役,晋人既帰秦師,秦大夫及左右皆言於秦伯曰:「是敗也,孟明之罪也,必殺之。」秦伯曰:「是孤之罪也。周芮良夫之詩曰:『大風有隧,貪人敗類。聴言則対,誦言如酔。匪用其良,覆俾我悖。』是貪故也,孤之謂矣。孤実貪以禍夫子,夫子何罪?」復使為政。

書き下し

殽の役、晉人既に秦の師を歸す。秦の大夫及び左右皆秦伯に言ひて曰く、「是の敗や、孟明の罪なり。必ず之を殺せ」と。秦伯曰く、「是れ孤の罪なり。周の芮良夫の詩に曰く、『大風隧(みち)有り、貪人類を敗る。聽言には則ち對へ、誦言には醉へるが如し。其の良を用ゐず、覆つて我をして悖らしむ』と。是れ貪の故なり、孤の謂なり。孤實に貪りて以って夫子に禍す。夫子何の罪かあらん」と。復た政を為さしむ。

現代語訳

殽の戦いの後、晋が捕らえた秦の三将を帰したとき、秦の大夫たちや側近はみな秦伯(穆公)に言った。「この敗戦は孟明の罪です。必ず殺すべきです」。秦伯は言った。「これは私の罪である。周の芮良夫の詩(『詩経』大雅・桑柔)に『大風には通り道があり、貪欲な者は仲間を損なう。耳に心地よい言葉には応じ、道理を説く言葉には酔ったようにぼんやりする。善き人を用いず、かえって私を道に背かせる』とある。これは貪欲のせいであり、私のことを言っているのだ。私が実に欲をかいて、あの人(孟明)に禍を負わせたのだ。あの人に何の罪があろうか」。そして再び孟明に政務を執らせた。

解説

殽の大敗の後、秦の朝廷では孟明を処刑せよという声が上がった。穆公はそれを退け、「是れ孤の罪なり」と言い切る。前の句で敗軍を迎えたときにも同じことを言っていたが、ここではさらに『詩経』の芮良夫の詩を引き、自分こそが「貪人」であり、耳に心地よい言葉に応じて諫言には酔ったように耳を貸さなかったと自己を断じる。蹇叔の諫めを退けて遠征を強行したのは自分の貪欲だった、という反省である。そのうえで孟明を罰さず、政務に復帰させた。敗戦の責任を現場の将に押しつけるのは、組織にとって最もたやすい処理である。穆公はその道を取らず、判断の誤りを判断した者のところに置いた。この信任が、後に孟明が国政を立て直し、秦が西戎に覇を唱える結果につながる。責任の所在を正しく置くことが、失敗した人材を生かす前提になるという構造が見える。

この章句が説くこと

責任自省寛容信任諫言

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