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春秋左氏伝 / 僖公二十八年 宛濮の盟

六月,晉人復衛侯。甯武子與衛人盟于宛濮,曰:「天禍衛國,君臣不協,以及此憂也。今天誘其衷,使皆降心以相從也。不有居者,誰守社稷?不有行者,誰扞牧圉?不協之故,用昭乞盟于爾大神以誘天衷。自今日以往,既盟之後,行者無保其力,居者無懼其罪。有渝此盟,以相及也。明神先君,是糾是殛。」國人聞此盟也,而後不貳。衛侯先期入,甯子先,長牂守門以為使也,與之乘而入。公子歂犬、華仲前驅。叔孫將沐,聞君至,喜,捉髮走出,前驅射而殺之。公知其無罪也,枕之股而哭之。歂犬走出,公使殺之。元咺出奔晉。城濮之戰,晉中軍風于澤,亡大旆之左旃。祁瞞奸命,司馬殺之以徇于諸侯。使茅茷代之。師還。壬午,濟河。舟之僑先歸,士會攝右。

新字:六月,晋人復衛侯。甯武子与衛人盟于宛濮,曰:「天禍衛国,君臣不協,以及此憂也。今天誘其衷,使皆降心以相従也。不有居者,誰守社稷?不有行者,誰扞牧圉?不協之故,用昭乞盟于爾大神以誘天衷。自今日以往,既盟之後,行者無保其力,居者無懼其罪。有渝此盟,以相及也。明神先君,是糾是殛。」国人聞此盟也,而後不貳。衛侯先期入,甯子先,長牂守門以為使也,与之乗而入。公子歂犬、華仲前駆。叔孫将沐,聞君至,喜,捉髪走出,前駆射而殺之。公知其無罪也,枕之股而哭之。歂犬走出,公使殺之。元咺出奔晋。城濮之戦,晋中軍風于沢,亡大旆之左旃。祁瞞奸命,司馬殺之以徇于諸侯。使茅茷代之。師還。壬午,済河。舟之僑先帰,士会摂右。

書き下し

六月、晉人衛侯を復す。甯武子衛人と宛濮に盟ひて曰く、「天衛國に禍し、君臣協はず、以って此の憂ひに及ぶなり。今天其の衷を誘(みちび)き、皆心を降して以って相從はしむるなり。居る者有らずんば、誰か社稷を守らん。行く者有らずんば、誰か牧圉(ぼくぎょ)を扞(まも)らん。協はざるの故に、用って昭らかに盟を爾大神に乞ひて以って天の衷を誘く。今日より以往、既に盟ふの後、行く者は其の力を保むこと無く、居る者は其の罪を懼るること無かれ。此の盟を渝ふること有らば、以って相及ぼさん。明神先君、是れ糾し是れ殛せん」と。國人此の盟を聞きて、而る後に貳せず。衛侯期に先だちて入る。甯子先んず。長牂(ちょうそう)門を守り、以って使と為して、之と乘りて入る。公子歂犬(せんけん)・華仲前驅す。叔孫將に沐せんとし、君至ると聞き、喜びて髮を捉りて走り出づ。前驅射て之を殺す。公其の罪無きを知るなり、之を股に枕せしめて之を哭す。歂犬走り出づ。公之を殺さしむ。元咺出でて晉に奔る。城濮の戰ひに、晉の中軍澤に風(はし)り、大旆(たいはい)の左旃(させん)を亡ふ。祁瞞命を奸(をか)す。司馬之を殺し、以って諸侯に徇ふ。茅茷(ぼうはい)をして之に代はらしむ。師還る。壬午、河を濟る。舟之僑先に歸る。士會右を攝す。

現代語訳

六月、晋は衛侯(成公)を復位させた。甯武子(甯俞、衛の大夫)は衛の人々と宛濮で盟約して言った。「天が衛国に禍を下し、君臣が和合しなかったために、この憂いに至った。いま天はその真心を導き、皆が心をへりくだらせて互いに従い合うようにしてくださった。国に留まる者がいなければ、誰が社稷を守ろう。君に従って国を出る者がいなければ、誰が牛馬を養う者たち(君の身辺)を守ろう。和合しなかったゆえに、ここに明らかに汝ら大いなる神に盟約を乞い、天の真心を導きたい。今日より後、盟約を結んだのちは、君に従って出た者はその功を頼みとしてはならず、留まっていた者はその罪を恐れることはない。この盟約に背く者があれば、禍はその身に及ぶ。明らかなる神と先君が、これを糾し、これを誅されよう」。国人はこの盟約を聞いて、それからは二心を抱かなくなった。ところが衛侯は約束の期日より早く国に入ろうとした。甯武子が先に行き、門を守っていた長牂が甯武子を衛侯の使者と思い、共に車に乗って入った。公子歂犬(せんけん)と華仲が先駆けとなった。叔孫(叔武、衛侯の弟)はちょうど髪を洗おうとしていたが、君が来たと聞いて喜び、髪を握ったまま走り出た。先駆けの者が矢を射て叔武を殺した。衛侯は叔武に罪がないことを知っていたので、その頭を自分の股に載せて哭した。歂犬は逃げ出したが、衛侯は彼を殺させた。元咺は国を出て晋に亡命した。城濮の戦いの際、晋の中軍は沢で風に吹かれ、大旗の左の旗を失った。祁瞞が軍令を犯したので、司馬がこれを斬り、諸侯に示してみせしめとした。茅茷(ぼうはい)を代わりに任じた。晋軍は帰途についた。壬午の日、黄河を渡った。舟之僑が勝手に先に帰国したので、士会が車右の役を代行した。

解説

城濮の戦いの後、晋の裁定で衛の成公が帰国を許される。国に残った者と君に従って亡命した者との対立を、甯武子は宛濮の盟で収めようとした。「居る者有らずんば、誰か社稷を守らん。行く者有らずんば、誰か牧圉を扞らん」は、どちらの側にも役割があったと認める言葉で、「行く者は其の力を保むこと無く、居る者は其の罪を懼るること無かれ」と、功を誇ることも罪を恐れることも封じる。分裂した組織を一つに戻すための、よく考えられた和解の言葉である。国人はこれで二心を捨てた。ところが成公自身が約束の期日を破って先に入り、先駆けが留守を守っていた弟の叔武を射殺してしまう。髪を握ったまま喜んで迎えに出た叔武の姿はあまりに痛ましい。和解の枠組みを作っても、疑いを捨てきれない当事者の一歩がすべてを壊すことがある。後半は晋軍の軍紀の記事で、次の句の「三罪」につながる。

この章句が説くこと

和解盟約猜疑信義軍紀

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