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春秋左氏伝 / 閔公元年 心苟くも瑕無くば

士蒍曰:「大子不得立矣,分之都城,而位以卿,先為之極,又焉得立?不如逃之,無使罪至。為吳大伯,不亦可乎?猶有令名,與其及也。且諺曰:『心苟無瑕,何恤乎無家?』天若祚大子,其無晉乎!」卜偃曰:「畢萬之後必大。萬,盈數也;魏,大名也。以是始賞,天啟之矣。天子曰兆民,諸侯曰萬民。今名之大,以從盈數,其必有眾。」初,畢萬筮仕於晉,遇《屯》之《比》。辛廖占之,曰:「吉。《屯》固、《比》入,吉孰大焉?其必蕃昌。《震》為土、車從馬、足居之、兄長之、母覆之、眾歸之、六體不易、合而能固、安而能殺,公侯之卦也。公侯之子孫,必復其始。」

新字:士蒍曰:「大子不得立矣,分之都城,而位以卿,先為之極,又焉得立?不如逃之,無使罪至。為呉大伯,不亦可乎?猶有令名,与其及也。且諺曰:『心苟無瑕,何恤乎無家?』天若祚大子,其無晋乎!」卜偃曰:「畢万之後必大。万,盈数也;魏,大名也。以是始賞,天啓之矣。天子曰兆民,諸侯曰万民。今名之大,以従盈数,其必有衆。」初,畢万筮仕於晋,遇《屯》之《比》。辛廖占之,曰:「吉。《屯》固、《比》入,吉孰大焉?其必蕃昌。《震》為土、車従馬、足居之、兄長之、母覆之、衆帰之、六体不易、合而能固、安而能殺,公侯之卦也。公侯之子孫,必復其始。」

書き下し

士蒍曰く、「大子立つを得ず。之に都城を分かちて、位するに卿を以ってす。先づ之が爲に極めたり、又焉んぞ立つを得ん。之を逃るるに如かず、罪をして至らしむる無かれ。吳の大伯と爲る、亦た可ならずや。猶ほ令名有り、其の及ぶよりは與し。且つ諺に曰く、『心苟くも瑕無くば、何ぞ家無きを恤へん』と。天若し大子に祚せば、其れ晉無からんや」と。卜偃曰く、「畢萬の後必ず大ならん。萬は、盈數なり。魏は、大名なり。是を以って始めて賞す、天之を啟けり。天子を兆民と曰ひ、諸侯を萬民と曰ふ。今之に名づくるに大を以ってし、以って盈數に從ふ、其れ必ず眾有らん」と。初め、畢萬晉に仕へんことを筮し、《屯》の《比》に之くに遇ふ。辛廖之を占ひて曰く、「吉なり。《屯》は固く、《比》は入る、吉孰れか焉より大ならん。其れ必ず蕃昌せん。《震》土と爲り、車馬に從ひ、足之に居り、兄之に長たり、母之を覆ひ、眾之に歸す。六體易らず、合して能く固く、安くして能く殺す、公侯の卦なり。公侯の子孫は、必ず其の始めに復らん」と。

現代語訳

士蒍は言った。「太子(申生)は位を継ぐことはできまい。君は太子に都城(曲沃)を分け与え、卿の位につけた。先に臣下として行き着くところまで行かせてしまったのだ。どうしてさらに君位に立てようか。逃げるに越したことはない。罪が身に及ばないようにすべきだ。呉の太伯のように国を譲って去るのも、よいではないか。それでもなお良い名は残る。罪に巻き込まれるよりはましだ。それに諺にも『心にさえ傷がなければ、家がないことを何を憂えよう』とある。天がもし太子に幸いを与えるなら、晋でなくとも国は得られよう」。卜偃(晋の卜官)は言った。「畢万の子孫はきっと大きくなる。万は満ちた数である。魏は大きいという意味の名である。これで初めて賞を受けたのは、天がその道を開いたのだ。天子の民を兆民と言い、諸侯の民を万民と言う。いま大きいという名の地を与えられ、満ちた数である万の名に従っている。きっと多くの民を持つだろう」。これより前、畢万は晋に仕えることを筮で占い、屯の卦が比の卦に変わるものを得た。辛廖がこれを読み解いて言った。「吉です。屯は堅固、比は入るの意味で、これより大きな吉はありません。きっと子孫が繁栄するでしょう。屯の下卦の震が坤の土に変わり、車が馬に従い、足がそこに居り、兄がそれを率い、母がそれを覆い、民衆がそこに帰す。六つの象が変わらず、合わさって堅固であり、安らかでいて討つこともできる。これは公侯の卦です。公侯の子孫は、必ずその始めの地位に復するでしょう」。

解説

前の句で献公は太子申生のために曲沃に城を築いた。一見厚遇だが、士蒍はこれを後継から外す兆しと読む。都城を与え卿に任じたのは、臣下としての最高位に据えたということで、裏を返せば君主の座はもう与えないという意味だ。だから逃げよ、周の太伯が弟に位を譲って呉へ去ったように、と勧める。「心苟くも瑕無くば、何ぞ家無きを恤へん」。心にやましいところがなければ、家を失うことを憂える必要はない。地位に固執して身を滅ぼすより、名を保って去るほうがよいという判断である。申生はこの助言に従わず、のちに悲劇的な死を迎える。後半は畢万の子孫の繁栄を予言する話で、「萬」は満ちた数、「魏」は大きいという意味だから吉だとする。畢万の子孫はのちに魏氏として戦国の魏を建てる。予言はさておき、厚遇に見える人事の意味を読み取る士蒍の目は現実的である。昇進が栄転か左遷かは、その先に何が残されているかで判断すべきことがある。

この章句が説くこと

引き際後継者名誉予言人事の読み

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