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春秋左氏伝 / 荘公二十九年 土功の時

二十九年春,新作延廄。書,不時也。凡馬日中而出,日中而入。夏,鄭人侵許。凡師有鐘鼓曰伐,無曰侵,輕曰襲。秋,有蜚,爲災也。凡物不爲災不書。冬十二月,城諸及防,書,時也。凡土功,龍見而畢務,戒事也。火見而致用,水昏正而栽,日至而畢。樊皮叛王。

新字:二十九年春,新作延廄。書,不時也。凡馬日中而出,日中而入。夏,鄭人侵許。凡師有鐘鼓曰伐,無曰侵,軽曰襲。秋,有蜚,為災也。凡物不為災不書。冬十二月,城諸及防,書,時也。凡土功,竜見而畢務,戒事也。火見而致用,水昏正而栽,日至而畢。樊皮叛王。

書き下し

二十九年春、新たに延廄を作る。書するは、時ならざればなり。凡そ馬は日中にして出だし、日中にして入る。夏、鄭人許を侵す。凡そ師鐘鼓有るを伐と曰ひ、無きを侵と曰ひ、輕きを襲と曰ふ。秋、蜚有り、災を爲せばなり。凡そ物災を爲さざれば書せず。冬十二月、諸及び防に城く。書するは、時なればなり。凡そ土功は、龍見えて務めを畢へ、事を戒むるなり。火見えて用を致し、水昏に正しくして栽し、日至りて畢る。樊皮王に叛く。

現代語訳

荘公二十九年の春、延廄という厩舎を新たに造った。『春秋』がこれを記したのは、時期が適当でなかったからである。およそ馬は、春分の頃に牧場へ出し、秋分の頃に厩舎に入れるものである(春に厩舎を造るのは時期外れである)。夏、鄭の人々が許に侵入した。およそ軍が鐘や太鼓を鳴らして攻めるのを「伐」と言い、鳴らさないのを「侵」と言い、軽装で不意を突くのを「襲」と言う。秋、蜚(臭い虫)が発生した。『春秋』がこれを記したのは、災いとなったからである。およそ生き物が災いとならなければ記さない。冬十二月、諸と防に城壁を築いた。『春秋』がこれを記したのは、時期にかなっていたからである。およそ土木工事は、蒼龍の星宿が明け方に見えるころに農事を終えて、工事の準備を命じる。大火星が明け方に見えるころに道具を集め、営室の星が夕暮れに南中するころに板を立てて築き始め、冬至になれば終える。樊皮が周王に叛いた。

解説

この年の記事は、左伝の書法の説明がほとんどである。厩舎の建設は時期外れだったから記し、城壁の工事は時期にかなっていたから記す。同じ「記録する」でも、理由が逆である点が面白い。基準になっているのは農事の暦だ。土木工事は、星の運行で季節を測り、農作業が終わってから準備し、冬至までに終える。民を工事に動員するのは、田畑の仕事を妨げない農閑期に限るという原則である。また、軍事行動の書き分けも示される。鐘鼓を鳴らして堂々と攻めるのが「伐」、音を立てずに入るのが「侵」、軽装で不意を突くのが「襲」。同じ攻撃でもやり方で呼び名が変わり、そこに評価が込められる。虫の害も、害にならなければ記さない。何を記録に値するとみなすかの基準がはっきりしている。人を動かす仕事は、相手の本業の繁閑を見て時期を選ぶ。記録の基準を先に決めておけば、記録そのものが評価になるということでもある。

この章句が説くこと

時宜民力記録書法暦

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