尚書 / 泰誓下
肆予小子,誕以爾眾士,殄殲乃讎。爾眾士其尚迪果毅,以登乃辟。功多有厚賞,不迪有顯戮。嗚呼!惟我文考,若日月之照臨,光于四方,顯于西土。惟我有周,誕受多方。予克受,非予武,惟朕文考無罪。受克予,非朕文考有罪,惟予小子無良。」
新字:肆予小子,誕以爾衆士,殄殲乃讎。爾衆士其尚迪果毅,以登乃辟。功多有厚賞,不迪有顕戮。嗚呼!惟我文考,若日月之照臨,光于四方,顕于西土。惟我有周,誕受多方。予克受,非予武,惟朕文考無罪。受克予,非朕文考有罪,惟予小子無良。」
書き下し
肆(ゆゑ)に予小子、誕(おほ)いに爾衆士を以て、乃の讎を殄殲(てんせん)せん。爾衆士其れ尚はくは迪(ふ)みて果毅にして、以て乃の辟を登(な)せ。功多ければ厚賞有り、迪まざれば顕戮有り。嗚呼(ああ)、惟れ我が文考、日月の照臨するが若く、四方に光り、西土に顕らかなり。惟れ我が有周、誕いに多方を受く。予受に克たば、予の武に非ず、惟れ朕が文考罪無ければなり。受予に克たば、朕が文考罪有るに非ず、惟れ予小子良無ければなり。」
現代語訳
だから私、若輩者は、汝ら兵士たちを大いに率いて、汝らの仇を滅ぼし尽くそう。汝ら兵士たちは、どうか果断で剛毅に進み、汝らの君主(私)に功を成させよ。功の多い者には厚い賞があり、進まない者にははっきりとした刑罰がある。ああ、我が亡き父文王は、太陽や月が照らし臨むように、四方に輝き、西方の地に明らかであった。我が周は、大いに多くの国々(の心)を受けた。私が受に勝つとすれば、それは私の武勇によるのではなく、我が父文王に罪がないからである。受が私に勝つとすれば、それは我が父文王に罪があるのではなく、ただ私が不肖だからである。」
解説
泰誓三篇の結びである。武王は、果断に進む者には厚い賞、退く者には刑罰があると賞罰を明示したうえで、勝てば父文王の徳のおかげ、負ければ自分の不徳のせいだと言い切る。勝利の功を先人に帰し、敗北の責めを自分一人に引き受けるこの言い方は、上に立つ者の謙虚さと覚悟を示す典型として後世に重んじられた。文王を日月にたとえ、周が多くの国の心を得たのは先代の積み重ねによると強調する点にも、周が徳による天命の継承を正統性の柱としたことがよく表れている。成果は前任者や仲間の積み重ねに、失敗は自分の判断に帰する姿勢は、今のリーダーの信頼を支える。本篇は東晋期に伝わった古文尚書に属し、後世の編纂とみる説が有力である。
関連する章句
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尚書・泰誓下時れ厥の明、王乃ち大いに六師を巡り、明らかに衆士に誓ふ。王曰く、「嗚呼(ああ)、我が西土の君子、天に顕道有り、厥の類惟れ彰らかなり。今商王受、五常を狎侮し、荒怠して敬せず。自ら天に絶ち、怨を民に結ぶ。朝に渉る者の脛を斮(き)り、賢人の心を剖く。威を作し殺戮して、四海を毒痡(どくふ)す。奸回を崇信し、師保を放黜し、典刑を屏棄し、正士を囚奴にし、郊社修めず、宗廟享せず、奇技淫巧を作して以て婦人を悦ばしむ。上帝順はず、祝(ことごと)く時の喪を降す。爾其れ孜孜として、予一人を奉じ、恭しく天罰を行へ。古人言へる有り、曰く、『我を撫すれば則ち後(きみ)、我を虐ぐれば則ち讎』と。独夫受、洪(おほ)いに惟れ威を作す、乃ち汝の世讎なり。
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尚書・泰誓中百姓過ち有らば、予一人に在り。今朕必ず往かん、我が武惟れ揚がり、之の疆(さかひ)に侵し、彼の兇残を取らん、我が伐用て張り、湯に于いて光有らん。勖(つと)めよや夫子、或いは畏るる無きこと罔かれ、寧ろ敵に非ずと執れ。百姓檁檁(りんりん)として、厥の角を崩すが若し。嗚呼(ああ)、乃ち一徳一心、立ちて厥の功を定めば、惟れ克く世を永くせん。」
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尚書・泰誓上亶(まこと)に聡明なるもの、元后と作り、元后は民の父母と作る。今商王受、上天を敬せず、災を下民に降し、沈湎して色を冒し、敢て暴虐を行ふ。人を罪するに族を以てし、人を官するに世を以てす。惟れ宮室・台榭・陂池・侈服、以て爾万姓を残害す。忠良を焚炙し、孕婦を刳剔(こてき)す。皇天震怒し、我が文考に命じ、粛みて天威を将(おこな)はしむるも、大勛未だ集(な)らず。肆(ゆゑ)に予小子発、爾友邦の冢君を以て、政を商に観るに、惟れ受悛(あらた)むる心有る罔く、乃ち夷居して、上帝神祗に事へず、厥の先の宗廟を遺てて祀らず。犧牲粢盛(しせい)、既に兇盗に于(ゆ)く。乃ち曰く、『吾民有り命有り』と、其の侮を懲らす罔し。天下民を佑け、之が君を作り、之が師を作る。惟れ其れ克く上帝を相け、四方を寵綏せしむ。罪有ると罪無きと、予曷ぞ敢て厥の志を越ゆること有らん。力を同じくすれば徳を度り、徳を同じくすれば義を度る。受臣億万有れども、惟れ億万心なり。予臣三千有り、惟れ一心なり。商の罪貫盈し、天命じて之を誅す、予天に順はずんば、厥の罪惟れ鈞(ひと)し。予小子夙夜祗み懼れ、命を文考に受け、上帝に類し、冢土に宜し、爾有衆を以て、天の罰を厎(いた)さん。天民を矜(あはれ)み、民の欲する所、天必ず之に従ふ。爾尚はくは予一人を弼(たす)け、永く四海を清めよ。時なるかな、失ふべからず。」
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尚書・泰誓中惟れ戊午、王河朔に次(やど)る。群后師を以て畢く会す。王乃ち師を徇(めぐ)りて誓ひて曰く、「嗚呼(ああ)、西土の有衆、咸朕が言を聴け。我聞く、
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尚書・泰誓上惟れ十有三年、春、大いに孟津に会す。王曰く、「嗟(ああ)、我が友邦の冢君(ちょうくん)、越(およ)び我が御事庶士、明らかに誓を聴け。
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尚書・泰誓中今商王受、力めて無度を行ひ、犁老(りろう)を播棄し、罪人に昵比す。淫酗肆虐し、臣下之に化す。朋家仇を作し、権を脅かして相滅ぼし、無辜天に籲(さけ)び、穢徳彰聞す。惟れ天は民を恵み、惟れ辟(きみ)は天を奉ず。有夏の桀、天に若ふ克はず、毒を下国に流す、天乃ち成湯を佑命し、夏の命を降黜す。惟れ受の罪桀より浮(す)ぐ、元良を剥喪し、諫輔を賊虐し、己に天命有りと謂ひ、敬は行ふに足らずと謂ひ、祭は益無しと謂ひ、暴は傷無しと謂ふ、厥の監遠からず、彼の夏王に在り。天其れ予を以て民を乂めしめんとす、朕が夢朕が卜に協ひ、休祥を襲(かさ)ぬ、商を戎(う)てば必ず克たん、
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