尚書 / 泰誓上
惟十有三年,春,大會于孟津。王曰:「嗟我友邦冢君,越我御事庶士,明聽誓。
新字:惟十有三年,春,大会于孟津。王曰:「嗟我友邦冢君,越我御事庶士,明聴誓。
書き下し
惟れ十有三年、春、大いに孟津に会す。王曰く、「嗟(ああ)、我が友邦の冢君(ちょうくん)、越(およ)び我が御事庶士、明らかに誓を聴け。
現代語訳
(文王の受命から)十三年目の春、(武王は諸侯と)孟津(もうしん、黄河の渡し場)で大いに会盟した。王(武王)は言った。「ああ、我が友邦の君主たちよ、また我が政務を執る者たち、諸々の士よ、この誓いをはっきりと聞け。
解説
泰誓三篇は、周の武王が殷の紂王を討つにあたり、諸侯と兵士に向けて行った誓(出陣の誓約)である。上篇の冒頭である本章句は、十三年の春、黄河の渡し場孟津に諸侯が集まった場面を記し、武王が友邦の君と官吏・士卒に誓いを聴けと呼びかける。誓の文体は、まず聴き手をはっきりと名指しし、次に敵の罪を数え上げ、最後に賞罰を告げるという型を持つ。大事を前に、誰に向けて語るのかを明確にすることから始めるのは、今の組織で大きな方針を示す場面にも通じる作法である。今文の泰誓は早くに失われ、本篇は東晋期に伝わった古文尚書に属し、後世の編纂とみる説が有力である。
関連する章句
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尚書・泰誓中惟れ戊午、王河朔に次(やど)る。群后師を以て畢く会す。王乃ち師を徇(めぐ)りて誓ひて曰く、「嗚呼(ああ)、西土の有衆、咸朕が言を聴け。我聞く、
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史記 周本紀是に於て武王遍く諸侯に告げて曰く、「殷重罪有り、以て畢く伐たざる可からず」と。乃ち文王に遵ひ、遂に戎車三百乗、虎賁三千人、甲士四万五千人を率ゐて、以て東のかた紂を伐つ。十一年十二月戊午、師畢く盟津を渡り、諸侯咸会す。曰く、「孳孳として怠ること無かれ」と。武王乃ち太誓を作り、衆庶に告ぐ。「今殷王紂乃ち其の婦人の言を用ゐ、自ら天に絶ち、其の三正を毀壊し、其の王父母弟を離逖し、乃ち其の先祖の楽を断棄し、乃ち淫声を為り、用て正声を変乱し、婦人を怡説せしむ。故に今予発維れ共に天罰を行ふ。勉めよや夫子、再びす可からず、三たびす可からず」と。二月甲子の昧爽、武王朝に商の郊の牧野に至り、乃ち誓ふ。武王左に黄鉞を杖き、右に白旄を秉りて、以て麾く。曰く、「遠きかな西土の人」と。武王曰く、「嗟、我が有国の冢君、司徒・司馬・司空、亜旅・師氏、千夫長・百夫長、及び庸・蜀・羌・髳・微・纑・彭・濮の人、爾の戈を称げ、爾の干を比べ、爾の矛を立てよ。予其れ誓はん」と。王曰く、「古人言へる有り、『牝雞は晨する無し。牝雞の晨するは、惟れ家の索くるなり』と。今殷王紂は維れ婦人の言を是れ用ゐ、自ら其の先祖の肆祀を棄てて答へず、昏くして其の家国を棄て、其の王父母弟を遺てて用ゐず、乃ち維れ四方の多罪の逋逃を、是れ崇び是れ長とし、是れ信じ是れ使ひ、百姓に暴虐し、以て商国に姦軌せしむ。今予発維れ共に天の罰を行ふ。今日の事は、六歩七歩を過ぎずして、乃ち止まりて斉へよ。夫子勉めよや。四伐五伐六伐七伐を過ぎずして、乃ち止まりて斉へよ。勉めよや夫子。尚はくは桓桓として、虎の如く羆の如く、豺の如く離の如く、商の郊に于いて、奔るを御ぐことなく、以て西土に役せしめよ。勉めよや夫子。爾勉めざる所あらば、其れ爾の身に于いて戮有らん」と。
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尚書・泰誓下時れ厥の明、王乃ち大いに六師を巡り、明らかに衆士に誓ふ。王曰く、「嗚呼(ああ)、我が西土の君子、天に顕道有り、厥の類惟れ彰らかなり。今商王受、五常を狎侮し、荒怠して敬せず。自ら天に絶ち、怨を民に結ぶ。朝に渉る者の脛を斮(き)り、賢人の心を剖く。威を作し殺戮して、四海を毒痡(どくふ)す。奸回を崇信し、師保を放黜し、典刑を屏棄し、正士を囚奴にし、郊社修めず、宗廟享せず、奇技淫巧を作して以て婦人を悦ばしむ。上帝順はず、祝(ことごと)く時の喪を降す。爾其れ孜孜として、予一人を奉じ、恭しく天罰を行へ。古人言へる有り、曰く、『我を撫すれば則ち後(きみ)、我を虐ぐれば則ち讎』と。独夫受、洪(おほ)いに惟れ威を作す、乃ち汝の世讎なり。
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尚書・泰誓上亶(まこと)に聡明なるもの、元后と作り、元后は民の父母と作る。今商王受、上天を敬せず、災を下民に降し、沈湎して色を冒し、敢て暴虐を行ふ。人を罪するに族を以てし、人を官するに世を以てす。惟れ宮室・台榭・陂池・侈服、以て爾万姓を残害す。忠良を焚炙し、孕婦を刳剔(こてき)す。皇天震怒し、我が文考に命じ、粛みて天威を将(おこな)はしむるも、大勛未だ集(な)らず。肆(ゆゑ)に予小子発、爾友邦の冢君を以て、政を商に観るに、惟れ受悛(あらた)むる心有る罔く、乃ち夷居して、上帝神祗に事へず、厥の先の宗廟を遺てて祀らず。犧牲粢盛(しせい)、既に兇盗に于(ゆ)く。乃ち曰く、『吾民有り命有り』と、其の侮を懲らす罔し。天下民を佑け、之が君を作り、之が師を作る。惟れ其れ克く上帝を相け、四方を寵綏せしむ。罪有ると罪無きと、予曷ぞ敢て厥の志を越ゆること有らん。力を同じくすれば徳を度り、徳を同じくすれば義を度る。受臣億万有れども、惟れ億万心なり。予臣三千有り、惟れ一心なり。商の罪貫盈し、天命じて之を誅す、予天に順はずんば、厥の罪惟れ鈞(ひと)し。予小子夙夜祗み懼れ、命を文考に受け、上帝に類し、冢土に宜し、爾有衆を以て、天の罰を厎(いた)さん。天民を矜(あはれ)み、民の欲する所、天必ず之に従ふ。爾尚はくは予一人を弼(たす)け、永く四海を清めよ。時なるかな、失ふべからず。」
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尚書・泰誓中今商王受、力めて無度を行ひ、犁老(りろう)を播棄し、罪人に昵比す。淫酗肆虐し、臣下之に化す。朋家仇を作し、権を脅かして相滅ぼし、無辜天に籲(さけ)び、穢徳彰聞す。惟れ天は民を恵み、惟れ辟(きみ)は天を奉ず。有夏の桀、天に若ふ克はず、毒を下国に流す、天乃ち成湯を佑命し、夏の命を降黜す。惟れ受の罪桀より浮(す)ぐ、元良を剥喪し、諫輔を賊虐し、己に天命有りと謂ひ、敬は行ふに足らずと謂ひ、祭は益無しと謂ひ、暴は傷無しと謂ふ、厥の監遠からず、彼の夏王に在り。天其れ予を以て民を乂めしめんとす、朕が夢朕が卜に協ひ、休祥を襲(かさ)ぬ、商を戎(う)てば必ず克たん、
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尚書・泰誓下肆(ゆゑ)に予小子、誕(おほ)いに爾衆士を以て、乃の讎を殄殲(てんせん)せん。爾衆士其れ尚はくは迪(ふ)みて果毅にして、以て乃の辟を登(な)せ。功多ければ厚賞有り、迪まざれば顕戮有り。嗚呼(ああ)、惟れ我が文考、日月の照臨するが若く、四方に光り、西土に顕らかなり。惟れ我が有周、誕いに多方を受く。予受に克たば、予の武に非ず、惟れ朕が文考罪無ければなり。受予に克たば、朕が文考罪有るに非ず、惟れ予小子良無ければなり。」
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