師導古典を学びたいすべての人に

尚書 / 大禹謨

水、火、金、木、土、穀,惟修;正德、利用、厚生、惟和。九功惟敘,九敘惟歌。戒之用休,董之用威,勸之以九歌俾勿壞。」帝曰:「俞!地平天成,六府三事允治,萬世永賴,時乃功。」帝曰:「格,汝禹!朕宅帝位三十有三載,耄期倦于勤。汝惟不怠,總朕師。」禹曰:「朕德罔克,民不依。皋陶邁種德,德乃降,黎民懷之。帝念哉!念茲在茲,釋茲在茲,名言茲在茲,允出茲在茲,惟帝念功。」帝曰:「皋陶,惟茲臣庶,罔或干予正。汝作士,明于五刑,以弼五教。期于予治,

新字:水、火、金、木、土、穀,惟修;正徳、利用、厚生、惟和。九功惟敘,九敘惟歌。戒之用休,董之用威,勧之以九歌俾勿壊。」帝曰:「兪!地平天成,六府三事允治,万世永頼,時乃功。」帝曰:「格,汝禹!朕宅帝位三十有三載,耄期倦于勤。汝惟不怠,総朕師。」禹曰:「朕徳罔克,民不依。皋陶邁種徳,徳乃降,黎民懐之。帝念哉!念茲在茲,釈茲在茲,名言茲在茲,允出茲在茲,惟帝念功。」帝曰:「皋陶,惟茲臣庶,罔或干予正。汝作士,明于五刑,以弼五教。期于予治,

書き下し

水・火・金・木・土・穀、惟れ修まり、正徳・利用・厚生、惟れ和す。九功惟れ敘(つい)で、九敘惟れ歌ふ。之を戒むるに休(よろこび)を用ひ、之を董(ただ)すに威を用ひ、之を勧むるに九歌を以てし、壊(やぶ)ること勿(な)からしめよ」と。帝曰く、「俞(しか)り。地平らかに天成り、六府三事允(まこと)に治まり、万世永く頼る、時(こ)れ乃(なんぢ)の功なり」と。帝曰く、「格(きた)れ、汝禹。朕帝位に宅(を)ること三十有三載、耄期(ばうき)にして勤むるに倦む。汝惟れ怠らず、朕が師を総(す)べよ」と。禹曰く、「朕が徳克(よ)くせず、民依らず。皐陶は邁(つと)めて徳を種(し)き、徳乃ち降り、黎民之に懐(なつ)く。帝念へや。茲(これ)を念ふも茲に在り、茲を釈(す)つるも茲に在り、名言するも茲に在り、允に出だすも茲に在り。惟れ帝功を念へ」と。帝曰く、「皐陶よ、惟れ茲の臣庶、予が正を干(をか)すこと或る罔(な)し。汝士と作りて、五刑に明らかにし、以て五教を弼(たす)け、予が治に期す。

現代語訳

水・火・金・木・土・穀物の六つがよく整い、徳を正し、器物を役立て、民の暮らしを豊かにする三つの事が調和する。この九つの事業が秩序立てば、人々はその成果を歌にしてたたえる。人々を戒めるには褒賞の喜びを用い、正すには威厳を用い、励ますには九つの歌を用いて、せっかくの成果を損なわないようにせよ。」帝は言った。「そうだ。大地は平らかに治まり、天の運行も順調に成り、六府(水・火・金・木・土・穀)と三事(正徳・利用・厚生)がまことによく治まって、万世にわたって永く頼りにされる。これはそなたの功績だ。」帝は言った。「来たれ、禹よ。私は帝位にあって三十三年、年老いて政務に励むことに疲れた。そなたは怠ることがない。わが民を統べよ。」禹は言った。「私の徳は足りず、民は私を頼りにしない。皐陶は努めて徳を広め、その徳は下にまで行きわたり、民は彼を慕っている。帝よ、よく考えられよ。この人を思うときもこの人にあり、この人を捨てようとしてもやはりこの人にあり、名を挙げて言うのもこの人であり、誠の心から推すのもこの人である。帝よ、どうか彼の功績を思われよ。」帝は言った。「皐陶よ。この臣下と民の中に、わが正しい政治を犯す者が一人もいないのは、そなたが士(刑罰の長官)となって五刑を明らかにし、それによって五つの教えを助け、わが治世の目標にかなうようにしたからである。

解説

禹が政治の要点を「六府三事」として説き、帝舜が禹に位を譲ろうとする場面である。六府は水・火・金・木・土・穀という生活の資源、三事は正徳・利用・厚生で、徳を正し、物を役立て、暮らしを豊かにすることを指す。とくに「正徳・利用・厚生」は、道徳と経済と福祉を一体のものとして捉えた言葉として知られる。舜に後継を求められた禹は、自分の徳は足りないと辞退し、皐陶こそふさわしいと繰り返し推した。手柄のある者が自らを押し出さず、同僚の功績をまっすぐに語る姿は、理想の臣下の姿として描かれている。昇進の機会にこそ、仲間の働きを正当に言葉にできるかどうかに、その人の器が表れる。本篇は東晋期に伝わった古文尚書に属し、後世の編纂とみる説が有力である。

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る