尚書 / 舜典
夔曰:「於!予擊石拊石,百獸率舞。」帝曰:「龍,朕堲讒說殄行,震驚朕師。命汝作納言,夙夜出納朕命,惟允!」帝曰:「咨!汝二十有二人,欽哉!惟時亮天功。」
新字:夔曰:「於!予撃石拊石,百獣率舞。」帝曰:「竜,朕堲讒説殄行,震驚朕師。命汝作納言,夙夜出納朕命,惟允!」帝曰:「咨!汝二十有二人,欽哉!惟時亮天功。」
書き下し
夔(き)曰く、「於(ああ)、予石を撃ち石を拊(う)てば、百獣率(ひき)ゐて舞ふ」と。帝曰く、「竜よ、朕讒説(ざんせつ)の行を殄(た)つを堲(にく)む。朕が師を震驚す。汝に命じて納言と作す。夙夜朕が命を出納し、惟れ允(まこと)にせよ」と。帝曰く、「咨(ああ)、汝二十有二人、欽まんかな。惟れ時(これ)天功を亮(たす)けよ」と。
現代語訳
夔(き、音楽の長官)は言った。「ああ、私が石の楽器を打ち鳴らせば、あらゆる獣が連れ立って舞う。」帝(舜)は言った。「竜(りゅう)よ。私は、讒言や人の善行を損なう行いを憎む。それはわが民を震え驚かせる。そなたを納言(王命の伝達と下からの言上をつかさどる官)に任じる。朝から晩まで、わが命令を下に伝え、下の言葉を上に取り次ぎ、ただ誠実であれ。」帝は言った。「ああ、そなたたち二十二人よ。つつしんで務めよ。ただこの時に、天の事業を助けよ。」
解説
舜の任官の締めくくりの部分である。音楽の長官となった夔は、自分が石の楽器を打てば獣までが舞うと、音楽の力を語る。舜は続いて竜を納言に任じ、讒言や人の善行を損なう行いが民を動揺させることを憎むと述べ、命令を下に伝え、下の言葉を上に取り次ぐ役目を誠実に果たせと命じる。最後に、任じた二十二人の臣に向けて、天の事業を助けよと呼びかける。讒言が組織を乱すことを見抜き、その対策として情報の上下の流れを担う専任の役を置いた点に、舜の統治の周到さがある。組織で噂や中傷が広まるのは、正しい情報の通り道が細いときである。上意を正確に伝え、現場の声を曲げずに届ける役を大切にすることが、人心の安定につながる。
関連する章句
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史記 五帝本紀是に於て舜乃ち文祖に至り、四嶽に謀り、四門を辟き、四方の耳目を明通し、十二牧に命じて帝徳を論ぜしめ、厚徳を行ひ、佞人を遠ざくれば、則ち蛮夷率ゐ服す。舜四嶽に謂ひて曰く、「能く庸を奮ひて堯の事を美くする者有らば、官に居りて事を相けしめん」と。皆曰く、「伯禹司空と為らば、帝の功を美くす可し」と。舜曰く、「嗟、然り。禹、汝水土を平らげよ、維れ是れ勉めよ」と。禹拝稽首して、稷・契と皋陶とに譲る。舜曰く、「然り、往け」と。舜曰く、「棄、黎民始めて飢う。汝后稷となり、時に百穀を播け」と。舜曰く、「契、百姓親しまず、五品馴れず。汝司徒と為りて、敬みて五教を敷け、寛に在れ」と。舜曰く、「皋陶、蛮夷夏を猾し、寇賊姦軌す。汝士と作れ。五刑に服有り、五服に三就あり。五流に度有り、五度に三居あり。維れ明らかなれば能く信ぜられん」と。舜曰く、「誰か能く予が工を馴めん」と。皆曰く垂可なりと。是に於て垂を以て共工と為す。舜曰く、「誰か能く予が上下の草木鳥獣を馴めん」と。皆曰く益可なりと。是に於て益を以て朕が虞と為す。益拝稽首して、諸臣朱虎・熊羆に譲る。舜曰く、「往け、汝諧へり」と。遂に朱虎・熊羆を以て佐と為す。舜曰く、「嗟、四嶽、能く朕が三礼を典る有るか」と。皆曰く伯夷可なりと。舜曰く、「嗟、伯夷、汝を以て秩宗と為す。夙夜維れ敬み、直にして維れ静絜なれ」と。伯夷夔・龍に譲る。舜曰く、「然り。夔を以て典楽と為し、稺子に教へしむ。直にして温、寛にして栗、剛にして虐なる毋く、簡にして傲なる毋からしめよ。詩は意を言ひ、歌は言を長くし、声は永に依り、律は声を和す。八音能く諧ひ、相倫を奪ふ毋くんば、神人以て和せん」と。夔曰く、「於、予石を撃ち石を拊てば、百獣率ゐ舞ふ」と。舜曰く、「龍、朕讒説の殄偽にして、朕が衆を振驚するを畏忌す。汝に命じて納言と為す。夙夜朕が命を出入し、惟れ信あれ」と。舜曰く、「嗟、女二十有二人、敬めよや、惟れ時に天事を相けよ」と。三歳に一たび功を考へ、三たび考へて絀陟す。遠近の衆功咸興る。三苗を分北す。
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尚書・舜典「咨(ああ)、十有二牧」と。曰く、「食なるかな、惟れ時(これ)。遠きを柔(やす)んじ邇(ちか)きを能(をさ)め、徳を惇(あつ)くし元を允(まこと)にし、而して任人を難(しりぞ)くれば、蛮夷率(したが)ひ服せん」と。舜曰く、「咨、四岳。能く庸(こう)を奮ひて帝の載(こと)を熙(ひろ)め、百揆に宅(を)りて采(こと)を亮(たす)け、疇(たぐひ)を恵(したが)へしむる有らんか」と。僉(みな)曰く、「伯禹を司空と作(な)さん」と。帝曰く、「俞(しか)り。咨、禹、汝水土を平らかにせよ。惟れ時(これ)懋(つと)めんかな」と。禹拝して稽首し、稷・契暨(およ)び皐陶に譲る。帝曰く、「俞り、汝往かんかな」と。帝曰く、「棄よ、黎民阻飢(そき)す。汝后稷として、時(こ)の百穀を播(ま)け」と。帝曰く、「契よ、百姓親しまず、五品遜(したが)はず。汝司徒と作りて、敬みて五教を敷け。寛に在り」と。帝曰く、「皐陶よ、蛮夷夏を猾(みだ)し、寇賊姦宄(かんき)す。汝士と作れ。五刑服する有り、五服は三就す。五流宅する有り、五宅は三居す。惟れ明らかにして克く允(まこと)にせよ」と。帝曰く、「疇(たれ)か予が工に若(したが)はん」と。僉曰く、「垂(すい)なるかな」と。帝曰く、「俞り。咨、垂、汝共工たれ」と。垂拝して稽首し、殳斨(しゆしやう)暨び伯与に譲る。帝曰く、「俞り、往かんかな。汝諧(かな)へり」と。帝曰く、「疇か予が上下の草木鳥獣に若はん」と。僉曰く、「益なるかな」と。帝曰く、「俞り。咨、益、汝朕が虞と作れ」と。益拝して稽首し、朱虎・熊羆(ゆうひ)に譲る。帝曰く、「俞り、往かんかな。汝諧へり」と。帝曰く、「咨、四岳。能く朕が三礼を典(つかさど)る有らんか」と。僉曰く、「伯夷」と。帝曰く、「俞り。咨、伯、汝秩宗と作れ。夙夜惟れ寅(つつし)み、直なるかな惟れ清し」と。伯拝して稽首し、夔(き)・竜に譲る。帝曰く、「俞り、往け、欽まんかな」と。帝曰く、「夔よ、汝に命じて楽を典り、冑子(ちうし)を教へしむ。
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尚書・益稷四鄰を欽(つつし)め。庶頑讒説(しよぐわんざんせつ)、若(も)し時(これ)に在らずんば、侯(こう)して以て之を明らかにし、撻(う)ちて以て之を記(しる)し、書して用(も)て識(しる)さんかな、並び生きんことを欲するかな。工は以て言を納れ、時(これ)にして之を颺(あ)げよ。格(ただ)しければ則ち之を承けて之を庸(もち)ゐ、否なれば則ち之を威(おど)せ」と。禹曰く、「俞(しか)りなるかな。帝光天の下、海隅の蒼生に至るまで、万邦の黎献、共に惟れ帝の臣なり。惟れ帝時(これ)を挙げ、敷(あまね)く納るるに言を以てし、明らかにするに功を以てし、車服以て庸ゐれば、誰か敢へて譲らず、敢へて敬して応ぜざらん。帝時(これ)にして敷かずんば、同じく日に奏すとも功罔(な)からん」と。帝曰く、「丹朱の傲(おご)りの若(ごと)くなること無かれ。惟れ慢遊是れ好み、傲虐是れ作(な)す。昼夜罔く頟頟(がくがく)とし、水罔きに舟を行る。家に朋淫し、用(も)て厥(そ)の世を殄(た)つ。予創(こ)りて時(かく)の若くし、塗山に娶る、辛壬癸甲。啓呱呱(ここ)として泣けども、予子とせず、惟れ荒(おほ)いに土功を度(はか)る。五服を弼成して五千に至る。州に十有二の師あり、外は四海に薄(せま)り、咸(みな)五長を建て、各(おのおの)迪(みち)びきて功有り。苗は頑にして工に即かず。帝其れ念へや」と。帝曰く、「朕が徳を迪(ふ)むは、時(こ)れ乃(なんぢ)の功にして、惟れ敘(つい)づればなり」と。皐陶方(まさ)に厥の敘を祗(つつし)み、方に象刑を施して、惟れ明らかなり。夔(き)曰く、「鳴球を戛撃(かつげき)し、搏拊(はくふ)・琴・瑟、以て詠ず」と。祖考来たり格(いた)り、虞賓位に在り、群后徳もて譲る。下に管・鼗鼓(たうこ)あり、合止には柷敔(しゆくぎよ)、笙鏞(しやうよう)以て間(まじ)はる。鳥獣蹌蹌(さうさう)たり。簫韶(せうせう)九成して、鳳皇来儀す。夔曰く、「於(ああ)、予石を撃ち石を拊てば、百獣率ゐて舞ひ、庶尹允(まこと)に諧(やはら)ぐ」と。帝庸(も)て歌を作りて曰く、「天の命を勑(つつし)み、惟れ時惟れ幾(き)」と。乃ち歌ひて曰く、「股肱喜ぶかな、元首起こるかな、百工熙(ひろ)まるかな」と。皐陶拝手稽首し颺言(やうげん)して曰く、「念へや。率ゐて事を作し興し、乃の憲を慎み、欽まんかな。屢(しばしば)乃の成るを省み、欽まんかな」と。乃ち賡(つ)ぎて載(すなは)ち歌ひて曰く、
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史記 夏本紀言の如くならずんば、刑之に従ふ。舜の徳大いに明らかなり。是に於て夔楽を行ひ、祖考至り、羣后相譲り、鳥獣翔り舞ひ、九成して、鳳皇来儀し、百獣率ゐ舞ひ、百官信に諧ふ。帝此を用て歌を作りて曰く、「天の命を陟ぐるは、維れ時維れ幾」と。乃ち歌ひて曰く、「股肱喜べば、元首起こり、百工熙まる」と。皋陶拝手稽首し揚言して曰く、「念へや、率ゐて事を興すを為し、乃の憲を慎め、敬めや」と。乃ち更めて歌を為りて曰く、「元首明らかなれば、股肱良く、庶事康し」と。「元首叢脞なれば、股肱惰り、万事墮る」と。帝拝して曰く、「然り、往きて欽めや」と。是に於て天下皆禹の明らかなる度数声楽を宗とし、山川の神主と為す。帝舜禹を天に薦め、嗣と為す。十七年にして帝舜崩ず。三年の喪畢はり、禹辞して舜の子商均に辟けて陽城に居る。天下の諸侯皆商均を去りて禹に朝す。禹是に於て遂に天子の位に即き、南面して天下を朝せしめ、国を夏后と号し、姓は姒氏なり。帝禹立ちて皋陶を挙げて之を薦め、且つ政を授けんとするも、皋陶卒す。皋陶の後を英・六に封じ、或いは許に在り。而して后益を挙げ、之に政を任ず。
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尚書・大禹謨帝曰く、「俞(しか)り。允に茲くの若くならば、嘉言伏する攸罔く、野に遺賢無く、万邦咸寧からん。
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史記 夏本紀天有辠を討ずれば、五刑五つながら用ゐんかな。吾が言厎に行ふ可きか」と。禹曰く、「女の言は致して績行す可し」と。皋陶曰く、「余未だ知ること有らず、道を賛けんことを思ふのみ」と。帝舜禹に謂ひて曰く、「女も亦昌言せよ」と。禹拝して曰く、「於、予何をか言はん。予日に孳孳たらんことを思ふ」と。皋陶禹を難じて曰く、「何をか孳孳と謂ふ」と。禹曰く、「鴻水天に滔り、浩浩として山を懐き陵に襄り、下民皆水に服す。予陸行には車に乗り、水行には舟に乗り、泥行には橇に乗り、山行には檋に乗り、山を行きて木を栞る。益と衆庶に稲と鮮食とを予ふ。以て九川を決して四海に致し、畎澮を浚ひて之を川に致す。稷と衆庶に得難きの食を予ふ。食少なければ、有余を調へて不足を補ひ、居を徙す。衆民乃ち定まり、万国治を為す」と。皋陶曰く、「然り、此れ而の美なり」と。禹曰く、「於、帝、乃の位に在るを慎み、爾の止まるを安んぜよ。徳を輔くれば、天下大いに応ぜん。意を清くして以て昭らかに上帝の命を待たば、天其れ重ねて命ずるに休を用てせん」と。帝曰く、「吁、臣なるかな、臣なるかな。臣は朕が股肱耳目と作る。予民を左右に有たんと欲す、女之を輔けよ。余古人の象、日月星辰を観て、文繡の服色を作らんと欲す、女之を明らかにせよ。予六律・五声・八音を聞き、来たりて滑を始め、以て五言を出入せんと欲す、女聴け。予即し辟ならば、女匡し拂せ。女面諛して、退きて予を謗ること無かれ。四輔の臣を敬せよ。諸衆の讒嬖の臣も、君の徳誠に施さば皆清からん」と。禹曰く、「然り。帝即し時ならずして、善悪を布同すれば則ち功毋からん」と。帝曰く、「丹朱の傲なるが若く、維れ慢游を是れ好み、水毋きに舟を行り、家に朋淫して、用て其の世を絶つこと毋かれ。予是に順ふ能はず」と。禹曰く、「啓を生むも、予子とせず。故を以て能く水土の功を成せり。輔けて五服を成し、五千里に至り、州に十二師、外は四海に薄り、咸五長を建て、各道びきて功有り。苗は頑にして功に即かず、帝其れ念へ」と。帝曰く、「吾が徳を道くは、乃ち女の功之を序づるなり」と。皋陶是に於て禹の徳を敬し、民をして皆禹に則らしむ。
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