諸葛亮集 / 後出師表・第三段
謹陳其事如左:高帝明並日月,謀臣淵深,然涉險被創,危然後安。今陛下未及高帝,謀臣不如良、平,而欲以長計取勝,坐定天下,此臣之未解一也。劉繇、王朗各據州郡,論安言計,動引聖人,羣疑滿腹,衆難塞胸,今歲不戰,明年不征,使孫策坐大,遂幷江東,此臣之未解二也。曹操智計殊絕於人,其用兵也,髣髴孫、吳,然困於南陽,險於烏巢,危於祁連,偪於黎陽,幾敗北山,殆死潼關,然後僞定一時耳,況臣才弱,而欲以不危而定之,此臣之未解三也。曹操五攻昌霸不下,四越巢湖不成,任用李服而李服圖之,委夏侯而夏侯敗亡,先帝每稱操爲能,猶有此失,況臣駑下,何能必勝?此臣之未解四也。自臣到漢中,中間朞年耳,然喪趙雲、陽羣、馬玉、閻芝、丁立、白壽、劉郃、鄧銅等及曲長屯將七十餘人,突將無前,賨、叟、青羌散騎、武騎一千餘人,此皆數十年之內所糾合四方之精銳,非一州之所有,若復數年,則損三分之二也,當何以圖敵?此臣之未解五也。今民窮兵疲,而事不可息,事不可息,則住與行勞費正等,而不及今圖之,欲以一州之地與賊持久,此臣之未解六也。
新字:謹陳其事如左:高帝明並日月,謀臣淵深,然渉険被創,危然後安。今陛下未及高帝,謀臣不如良、平,而欲以長計取勝,坐定天下,此臣之未解一也。劉繇、王朗各拠州郡,論安言計,動引聖人,羣疑満腹,衆難塞胸,今歳不戦,明年不征,使孫策坐大,遂幷江東,此臣之未解二也。曹操智計殊絶於人,其用兵也,髣髴孫、呉,然困於南陽,険於烏巣,危於祁連,偪於黎陽,幾敗北山,殆死潼関,然後偽定一時耳,況臣才弱,而欲以不危而定之,此臣之未解三也。曹操五攻昌覇不下,四越巣湖不成,任用李服而李服図之,委夏侯而夏侯敗亡,先帝毎称操為能,猶有此失,況臣駑下,何能必勝?此臣之未解四也。自臣到漢中,中間朞年耳,然喪趙雲、陽羣、馬玉、閻芝、丁立、白寿、劉郃、鄧銅等及曲長屯将七十余人,突将無前,賨、叟、青羌散騎、武騎一千余人,此皆数十年之内所糾合四方之精鋭,非一州之所有,若復数年,則損三分之二也,当何以図敵?此臣之未解五也。今民窮兵疲,而事不可息,事不可息,則住与行労費正等,而不及今図之,欲以一州之地与賊持久,此臣之未解六也。
書き下し
謹んで其の事を左の如く陳ぶ。高帝は明らかなること日月に並び、謀臣は淵深なるも、険を涉り創を被り、危ふくして然る後に安んず。今、陛下は未だ高帝に及ばず、謀臣は良・平に如かず、而も長計を以て勝ちを取り、坐して天下を定めんと欲す。此れ臣の未だ解せざる一なり。劉繇・王朗は各々州郡に拠り、安を論じ計を言ふに、動もすれば聖人を引き、群疑は腹に満ち、衆難は胸を塞ぎ、今歳戦はず、明年征せず、孫策をして坐大せしめ、遂に江東を并せしむ。此れ臣の未だ解せざる二なり。曹操は智計人に殊絶し、其の用兵や髣髴として孫・呉なり。然れども南陽に困しみ、烏巣に険ふく、祁連に危ふく、黎陽に偪られ、北山に幾ど敗れ、潼関に殆ど死し、然る後に偽に一時を定めしのみ。況んや臣は才弱きに、不危を以て之を定めんと欲す。此れ臣の未だ解せざる三なり。曹操は昌霸を五たび攻めて下さず、巣湖を四たび越えて成らず、李服を任用して李服之を図り、夏侯に委ねて夏侯敗亡す。先帝は毎に操を称して能と為せるに、猶ほ此の失有り。況んや臣は駑下なるに、何ぞ能く必ず勝たん。此れ臣の未だ解せざる四なり。臣の漢中に到りしより、中間朞年のみ。然れども趙雲・陽羣・馬玉・閻芝・丁立・白壽・劉郃・鄧銅ら及び曲長・屯将七十余人を喪ひ、突将の無前、賨・叟、青羌、散騎・武騎一千余人を失へり。此れ皆数十年の内に糾合せし四方の精鋭にして、一州の有する所に非ず。若し復た数年ならば、則ち三分の二を損なはん。当に何を以て敵を図るべき。此れ臣の未だ解せざる五なり。今、民は窮し兵は疲るるに、事は息むべからず。事息むべからざれば、則ち住と行と労費正に等し。而るに今に及びて之を図らず、一州の地を以て賊と持久せんと欲す。此れ臣の未だ解せざる六なり。
現代語訳
謹んで、その事柄を次のとおり申し述べます。高帝(劉邦)は明らかさが日月に並ぶほどで、謀臣の知恵も深かったのに、険しい道を踏み、傷を負い、危うい目に遭ってのちに安定しました。いま陛下は高帝に及ばず、謀臣も張良・陳平に及ばないのに、長期の計で勝利を取り、座して天下を定めようとしています。これが、私にはまだ理解できないことの一つ目です。劉繇と王朗はそれぞれ州郡に拠り、安全を論じ計を語るたびに聖人の言葉を引き、疑いが腹に満ち、困難が胸をふさぎ、今年は戦わず、来年も征かず、孫策を大きくさせ、ついに江東を併合させてしまいました。これが二つ目です。曹操は知謀が人より抜きんでており、用兵は孫子・呉子に似ていますが、それでも南陽で苦しみ、烏巣で危うく、祁連で危うく、黎陽で迫られ、北山でほとんど敗れ、潼関でほとんど死にかけ、そののちにかりそめに一時の安定を得たにすぎません。まして私は才が弱いのに、危険なく平定しようとするのです。これが三つ目です。曹操は昌霸を五度攻めても下せず、巣湖を四度越えても成らず、李服を任用すれば李服に謀られ、夏侯に任せれば夏侯は敗れ亡びました。先帝は常に曹操を有能と称えていたのに、なおこうした失敗があります。まして愚かな私が、どうして必ず勝てるでしょうか。これが四つ目です。私が漢中に来てから、わずか一年です。それでも趙雲、陽羣、馬玉、閻芝、丁立、白壽、劉郃、鄧銅ら及び曲長・屯将七十余人を失い、突将の無前、賨・叟、青羌、散騎・武騎の一千余人を失いました。これらはみな数十年のうちに四方から集めた精鋭で、一州にあるものではありません。もしこの先数年続けば、三分の二を損なうでしょう。そのとき、どうして敵を図れるでしょうか。これが五つ目です。いま民は窮し兵は疲れていますが、事は止められません。止められないなら、留まっても進んでも労力と費用はまさに同じです。それなのに今のうちに策を講じず、一州の地で賊と持久戦をしようとしています。これが六つ目です。
解説
この章句が説くこと
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