初学訓 / 巻之四
一人を知ることは、至りて難し。人の心は、かくれて見えず。わが知闇ければ、人の善惡を知りがたし。其上、私あれば、人を好み惡むこと、公直ならずして、善人を惡み、惡人を好む。人の善惡を知らず、我心にかなへりとて、善人とすべからず。其人の善惡を擇ぶべし。君子は、友とする人も、召使ふ人も、つとめて其人を擇ぶ。もし、わが心にかなへりとて、擇ばずして、惡しき人を友とし臣として近づくれば、其人に引きそこなはれ、莫大の禍となること、和漢古今例多し。能々人を擇ぶべし。人を擇ばざれば、大なる禍あり。愼むべし。
新字:一人を知ることは、至りて難し。人の心は、かくれて見えず。わが知闇ければ、人の善悪を知りがたし。其上、私あれば、人を好み悪むこと、公直ならずして、善人を悪み、悪人を好む。人の善悪を知らず、我心にかなへりとて、善人とすべからず。其人の善悪を択ぶべし。君子は、友とする人も、召使ふ人も、つとめて其人を択ぶ。もし、わが心にかなへりとて、択ばずして、悪しき人を友とし臣として近づくれば、其人に引きそこなはれ、莫大の禍となること、和漢古今例多し。能々人を択ぶべし。人を択ばざれば、大なる禍あり。慎むべし。
書き下し
一人を知ることは、至りて難し。人の心は、かくれて見えず。わが知闇ければ、人の善悪を知りがたし。其上、私あれば、人を好み悪むこと、公直ならずして、善人を悪み、悪人を好む。人の善悪を知らず、我心にかなへりとて、善人とすべからず。其人の善悪を択ぶべし。君子は、友とする人も、召使ふ人も、つとめて其人を択ぶ。もし、わが心にかなへりとて、択ばずして、悪しき人を友とし臣として近づくれば、其人に引きそこなはれ、莫大の禍となること、和漢古今例多し。能々人を択ぶべし。人を択ばざれば、大なる禍あり。慎むべし。
現代語訳
人を知ることは、きわめて難しい。人の心は隠れて見えません。自分の知が暗ければ、人の善悪を知りがたい。そのうえ私心があれば、人を好み憎むことが公正でなく、善人を憎み、悪人を好みます。人の善悪を知らずに、自分の心にかなったからといって善人としてはいけません。その人の善悪を選ぶべきです。君子は、友とする人も、召し使う人も、努めてその人を選びます。もし自分の心にかなったからといって選ばずに、悪い人を友とし臣として近づければ、その人に引きずられて損なわれ、莫大な禍となることは、日本にも中国にも昔から例が多い。よくよく人を選ぶべきです。人を選ばなければ、大きな禍があります。慎むべきです。
解説
この章句が説くこと
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