初学訓 / 巻之四
一古語に、勤は貧に勝ち、愼は禍にかつといへり。いふこゝろは、勤むれば貧しからず、愼めば禍なしとなり。人世は、勤愼の二にて立てり。四民ともに、勤と愼とをしばしも忘るべからず。是、道を行ふ工夫なり。且又、貧と禍とをのがるゝ道なれば、是亦人身の至寶なり。其上に儉約を加へ、此三德を以て、家を保つべし。
新字:一古語に、勤は貧に勝ち、慎は禍にかつといへり。いふこゝろは、勤むれば貧しからず、慎めば禍なしとなり。人世は、勤慎の二にて立てり。四民ともに、勤と慎とをしばしも忘るべからず。是、道を行ふ工夫なり。且又、貧と禍とをのがるゝ道なれば、是亦人身の至宝なり。其上に倹約を加へ、此三徳を以て、家を保つべし。
書き下し
一古語に、勤は貧に勝ち、慎は禍にかつといへり。いふこころは、勤むれば貧しからず、慎めば禍なしとなり。人世は、勤慎の二にて立てり。四民ともに、勤と慎とをしばしも忘るべからず。是、道を行ふ工夫なり。且又、貧と禍とをのがるる道なれば、是亦人身の至宝なり。其上に倹約を加へ、此三徳を以て、家を保つべし。
現代語訳
古語に「勤めは貧しさに勝ち、慎みは禍に勝つ」とあります。その意味は、勤めれば貧しくなく、慎めば禍がないということです。人の世は勤と慎の二つで成り立っています。四民ともに、勤と慎をしばらくも忘れてはいけません。これが道を行う工夫です。また、貧しさと禍を逃れる道でもあるので、これもまた人の身の至宝です。そのうえに倹約を加え、この三つの徳によって家を保つべきです。
解説
勤は貧に勝ち、慎は禍に勝つという古語を引き、勤・慎・倹約の三つを家を保つ三徳とまとめます。益軒の著作全体を通じて繰り返される実践的な徳目です。勤めることで収入を得て、慎むことで失敗を避け、倹約することで蓄えを守る。家計や会社経営の基本原則そのものです。特別な才能や幸運に頼らなくても、この三つを続ければ家は保てるという教えは、地に足のついた生き方の指針として今も有効です。
この章句が説くこと
勤慎倹約家三徳
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