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家道訓 / 巻之二・総論中

一人の家の禍は、多くは利を求むるよりおこる。利を貪れば却て財を失ひ、わざはひ來ること多し。利を求めんよりは、只家業を怠りなくつとめ、家財を妄に費さずして、分外の利を貪らざれば、禍なく財を失はず。凡利を貪るは禍の本なり。戒むべし。一古語に、つとむれば貧にかち、愼めばわざはひにかつといへり。此の語、甚だ人に益あり。家のわざをよくつとむる人は必ず富む。身のことをよく愼めば、必ず禍なし。勤愼の二字、常に守り行ふべし。自ら行ひて家人にも行はしむべし。勤むるは天の道なり。天はめぐりてやまず。愼むは地の道なり。地はしづかにして動かず。つとむると愼むとは、天地の道にしたがひて則とす。是人の行ふべき道なり。此事深き理あり。

新字:一人の家の禍は、多くは利を求むるよりおこる。利を貪れば却て財を失ひ、わざはひ来ること多し。利を求めんよりは、只家業を怠りなくつとめ、家財を妄に費さずして、分外の利を貪らざれば、禍なく財を失はず。凡利を貪るは禍の本なり。戒むべし。一古語に、つとむれば貧にかち、慎めばわざはひにかつといへり。此の語、甚だ人に益あり。家のわざをよくつとむる人は必ず富む。身のことをよく慎めば、必ず禍なし。勤慎の二字、常に守り行ふべし。自ら行ひて家人にも行はしむべし。勤むるは天の道なり。天はめぐりてやまず。慎むは地の道なり。地はしづかにして動かず。つとむると慎むとは、天地の道にしたがひて則とす。是人の行ふべき道なり。此事深き理あり。

書き下し

一人の家の禍は、多くは利を求むるよりおこる。利を貪れば却て財を失ひ、わざはひ来ること多し。利を求めんよりは、只家業を怠りなくつとめ、家財を妄に費さずして、分外の利を貪らざれば、禍なく財を失はず。凡利を貪るは禍の本なり。戒むべし。一古語に、つとむれば貧にかち、慎めばわざはひにかつといへり。此の語、甚だ人に益あり。家のわざをよくつとむる人は必ず富む。身のことをよく慎めば、必ず禍なし。勤慎の二字、常に守り行ふべし。自ら行ひて家人にも行はしむべし。勤むるは天の道なり。天はめぐりてやまず。慎むは地の道なり。地はしづかにして動かず。つとむると慎むとは、天地の道にしたがひて則とす。是人の行ふべき道なり。此事深き理あり。

現代語訳

人の家の災いは、多くは利を求めることから起こります。利をむさぼれば、かえって財を失い、災いが来ることが多いのです。利を求めるよりは、ただ家業を怠りなく努め、家の財をむやみに費やさず、分を超えた利をむさぼらなければ、災いはなく財を失いません。およそ利をむさぼるのは災いの本です。戒めるべきです。古語に「努めれば貧しさに勝ち、慎めば災いに勝つ」とあります。この言葉は、たいへん人に益があります。家の仕事をよく努める人は必ず富みます。身のことをよく慎めば、必ず災いはありません。勤と慎の二字を常に守り行うべきです。自分で行い、家の者にも行わせるべきです。努めるのは天の道です。天はめぐって止みません。慎むのは地の道です。地は静かで動きません。努めることと慎むこととは、天地の道に従って則とするのです。これが人の行うべき道です。このことには深い理があります。

解説

家の災いの多くは利を求めることから起こると言い、利をむさぼるより家業を怠らず、財をむやみに費やさないことを勧めます。そして「勤むれば貧に勝ち、慎めば禍に勝つ」という古語を引き、勤と慎の二字を家訓として守り、家の者にも行わせよと説きます。勤は休まずめぐる天の道、慎は静かに動かない地の道になぞらえられています。働き続けることと、軽率な行動を控えることの両方がそろって家は保たれるという考えは、家計や経営の基本そのものです。

この章句が説くこと

勤勉慎み利家業天地

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