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初学訓 / 巻之四

一勤は、萬事の立ちて行はるゝ所なり。勤めざれば、おこたりて、何事も廢る。五倫の道も、勤にあらざれば行はれず。中につきて、忠孝の道をつとむるは、人道の大節なり。四民ともに、夙にはやく起き、夜におそく寢ねて、其家業をよく勤むれば、各その業をさまる。士は、君につかへて身をかへりみず、私なくして誠をつとむべし。此の如くなれば、祿は求めずして、其中にあり。農工商は、家の業をよく勤めつゝ愼みて、僞なければ、財を得て貧しからず。古語に、人生は勤にあり、つとむれば則ち匱しからず、と言へるが如し。

新字:一勤は、万事の立ちて行はるゝ所なり。勤めざれば、おこたりて、何事も廃る。五倫の道も、勤にあらざれば行はれず。中につきて、忠孝の道をつとむるは、人道の大節なり。四民ともに、夙にはやく起き、夜におそく寝ねて、其家業をよく勤むれば、各その業をさまる。士は、君につかへて身をかへりみず、私なくして誠をつとむべし。此の如くなれば、禄は求めずして、其中にあり。農工商は、家の業をよく勤めつゝ慎みて、偽なければ、財を得て貧しからず。古語に、人生は勤にあり、つとむれば則ち匱しからず、と言へるが如し。

書き下し

一勤は、万事の立ちて行はるる所なり。勤めざれば、おこたりて、何事も廃る。五倫の道も、勤にあらざれば行はれず。中につきて、忠孝の道をつとむるは、人道の大節なり。四民ともに、夙にはやく起き、夜におそく寝ねて、其家業をよく勤むれば、各その業をさまる。士は、君につかへて身をかへりみず、私なくして誠をつとむべし。此の如くなれば、禄は求めずして、其中にあり。農工商は、家の業をよく勤めつつ慎みて、偽なければ、財を得て貧しからず。古語に、人生は勤にあり、つとむれば則ち匱しからず、と言へるが如し。

現代語訳

勤は、あらゆる事が立って行われるもとです。勤めなければ、怠って何事もすたれます。五倫の道も、勤めなければ行われません。中でも忠孝の道を努めるのは、人の道の大きな節目です。四民ともに、朝早く起き、夜遅く寝て、その家業をよく勤めれば、それぞれその業は治まります。士は主君に仕えて身を顧みず、私心なく誠を務めるべきです。このようであれば、俸禄は求めなくてもその中にあります。農工商は家の業をよく勤めつつ慎んで、偽りがなければ、財を得て貧しくありません。古語に「人の生は勤めにある。勤めれば乏しくない」と言うとおりです。

解説

勤、つまり勤勉を万事の土台とする条です。朝早く起き夜遅く寝るという表現は『詩経』にも見える古い言い回しで、ひたむきな勤めを表します。古語は『春秋左氏伝』の「民の生は勤に在り、勤むれば則ち匱しからず」です。益軒は、忠孝のような人倫の道も、勤めなければ行われないと言います。どんなに正しい考えも、日々の実行が伴わなければ形になりません。才能より続けることのほうが大きな力になるという、今も変わらない教えです。

この章句が説くこと

勤勉家業左伝忠孝努力

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