初学訓 / 巻之三
一學問は、古の聖賢を師として、五常を心に保ち、五倫を身に行ひ、次に、天下萬物の理を窮め、古今の事に通じて、わが心の知を開く道なり。凡そもろもろのいやしき小藝すら皆師あり、稽古ありて、つとめ學び、久しくして後に、其わざをよく習ひ得る理なり。いはんやわが身を修め、人ををさむる莫大の道理を知ることなれば、師なく學問なくしては、いかに生れつきたる才ありとも、何ぞかゝることを、ひとり知るべきや。これ云はずして其是非を思ひ知るべし。こゝを以て、いにしへの聖人、生れながら知るの人といへども、なほ師を求めて、道を問ひ學びたまふ。いはんや今の人の知は、古人に及ばず。幸に聖賢の書多し、幼よりつとめて讀み、明師良友を求め從ひ、をしへを受けて、道理を知り知を開くべし。人間第一のつとむべきわざ、是より先なるはなし。いにしへの聖人、天下の人の敎のため、學問所を建て、師を立て、學ばしめ給ふは、此故なり。
新字:一学問は、古の聖賢を師として、五常を心に保ち、五倫を身に行ひ、次に、天下万物の理を窮め、古今の事に通じて、わが心の知を開く道なり。凡そもろもろのいやしき小芸すら皆師あり、稽古ありて、つとめ学び、久しくして後に、其わざをよく習ひ得る理なり。いはんやわが身を修め、人ををさむる莫大の道理を知ることなれば、師なく学問なくしては、いかに生れつきたる才ありとも、何ぞかゝることを、ひとり知るべきや。これ云はずして其是非を思ひ知るべし。こゝを以て、いにしへの聖人、生れながら知るの人といへども、なほ師を求めて、道を問ひ学びたまふ。いはんや今の人の知は、古人に及ばず。幸に聖賢の書多し、幼よりつとめて読み、明師良友を求め従ひ、をしへを受けて、道理を知り知を開くべし。人間第一のつとむべきわざ、是より先なるはなし。いにしへの聖人、天下の人の教のため、学問所を建て、師を立て、学ばしめ給ふは、此故なり。
書き下し
一学問は、古の聖賢を師として、五常を心に保ち、五倫を身に行ひ、次に、天下万物の理を窮め、古今の事に通じて、わが心の知を開く道なり。凡そもろもろのいやしき小芸すら皆師あり、稽古ありて、つとめ学び、久しくして後に、其わざをよく習ひ得る理なり。いはんやわが身を修め、人ををさむる莫大の道理を知ることなれば、師なく学問なくしては、いかに生れつきたる才ありとも、何ぞかかることを、ひとり知るべきや。これ云はずして其是非を思ひ知るべし。ここを以て、いにしへの聖人、生れながら知るの人といへども、なほ師を求めて、道を問ひ学びたまふ。いはんや今の人の知は、古人に及ばず。幸に聖賢の書多し、幼よりつとめて読み、明師良友を求め従ひ、をしへを受けて、道理を知り知を開くべし。人間第一のつとむべきわざ、是より先なるはなし。いにしへの聖人、天下の人の教のため、学問所を建て、師を立て、学ばしめ給ふは、此故なり。
現代語訳
学問とは、昔の聖賢を師として、五常を心に保ち、五倫を身に行い、次に天下万物の理を窮め、古今の事に通じて、自分の心の知を開く道です。およそもろもろの卑しい小さな芸でさえ、みな師があり稽古があって、努め学び、長くたって後に、その技をよく習い得る理です。まして自分の身を修め人を治める莫大な道理を知ることなのですから、師がなく学問がなくては、どれほど生まれつきの才があっても、どうしてこのようなことを一人で知ることができましょうか。これは言わずとも、その是非を思い知るべきです。このため、昔の聖人は、生まれながらに知る人であっても、なお師を求めて道を問い学ばれました。まして今の人の知は古人に及びません。幸いに聖賢の書は多い。幼いときから努めて読み、明らかな師やよい友を求めて従い、教えを受けて、道理を知り知を開くべきです。人間として第一に努めるべきことで、これより先なるものはありません。昔の聖人が、天下の人の教えのために学問所を建て、師を立てて学ばせられたのは、このためです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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歎異抄・第十二条経釈を読み学せざる輩、往生不定の由のこと。この条、すこぶる不足言の義と言いつべし。 他力真実の旨を明かせる諸の聖教は、本願を信じ念仏を申さば仏に成る、そのほか何の学問かは往生の要なるべきや。 まことにこの理に迷えらん人は、いかにもいかにも学問して、本願の旨を知るべきなり。 経釈を読み学すといえども、聖教の本意を心得ざる条、もっとも不便のことなり。
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人物志・體別夫れ學は材を成す所以なり、疏は情を推す所以なり。偏材の性は、移轉すべからず。
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言志四録・南洲手抄学之を古訓に稽へ、問之を師友に質すは、人皆之を知る。学必ず之を躬に学び、問必ず諸を心に問ふは、其れ幾人有らんか。
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言志四録・南洲手抄朝にして食はずば、昼にして饑う。少うして学ばずば、壮にして惑ふ。饑うるは猶忍ぶ可し、惑ふは奈何ともす可からず。
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論語・為政篇子曰く、異端を攻むるは、斯れ害のみ。
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説苑・建本子思曰わく、学は才を益す所以なり、礪は刃を致す所以なり。吾嘗て幽処して深く思うも、学の速やかなるに若かず。吾嘗て跂ちて望むも、高きに登りて博く見るに若かず。故に風に順いて呼べば、声疾しきを加えざれども聞く者衆し。丘に登りて招けば、臂長きを加えざれども見る者遠し。故に魚は水に乗り、鳥は風に乗り、草木は時に乗る。
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