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初学訓 / 巻之三

一利口にして才力するどに、世變になれて、小事にかしこき人に、大體にくらくて、よき智惠なく愚なる人あり。又、辨才なく才力つたなき人に、かへりて、其心明らかにして、大體にかしこき人あり。人に交り人を使ふ人は、人を用ふるに、外の貌のうるはしきと、言のかしこきに迷ふことなかれ、よく其心の内を察すべし。外明らかなれば內くらく、外くらければ内明らかなり。故に、外はたらきて內おろかなる人あり、外くらくして內明らかなる人あり。たとへば、水と火との如し。水は、外くらくして物を照す光なけれども、內見え透きて明らかなり。火は、外明らかにして、よく物を照せども、その内くらくして見え透かず。人の内外かはりあるも、これに同じ。必ず其貌によりて、人を見あやまるべからず。

新字:一利口にして才力するどに、世変になれて、小事にかしこき人に、大体にくらくて、よき智恵なく愚なる人あり。又、弁才なく才力つたなき人に、かへりて、其心明らかにして、大体にかしこき人あり。人に交り人を使ふ人は、人を用ふるに、外の貌のうるはしきと、言のかしこきに迷ふことなかれ、よく其心の内を察すべし。外明らかなれば内くらく、外くらければ内明らかなり。故に、外はたらきて内おろかなる人あり、外くらくして内明らかなる人あり。たとへば、水と火との如し。水は、外くらくして物を照す光なけれども、内見え透きて明らかなり。火は、外明らかにして、よく物を照せども、その内くらくして見え透かず。人の内外かはりあるも、これに同じ。必ず其貌によりて、人を見あやまるべからず。

書き下し

一利口にして才力するどに、世変になれて、小事にかしこき人に、大体にくらくて、よき智恵なく愚なる人あり。又、弁才なく才力つたなき人に、かへりて、其心明らかにして、大体にかしこき人あり。人に交り人を使ふ人は、人を用ふるに、外の貌のうるはしきと、言のかしこきに迷ふことなかれ、よく其心の内を察すべし。外明らかなれば内くらく、外くらければ内明らかなり。故に、外はたらきて内おろかなる人あり、外くらくして内明らかなる人あり。たとへば、水と火との如し。水は、外くらくして物を照す光なけれども、内見え透きて明らかなり。火は、外明らかにして、よく物を照せども、その内くらくして見え透かず。人の内外かはりあるも、これに同じ。必ず其貌によりて、人を見あやまるべからず。

現代語訳

口が達者で才力が鋭く、世の変化に慣れて小さな事に賢い人に、大きな事には暗くて、よい知恵がなく愚かな人がいます。また、弁才がなく才力がつたない人に、かえってその心が明らかで、大きな事に賢い人がいます。人と交わり人を使う人は、人を用いるのに、外見の立派さや言葉の賢さに迷ってはいけません。よくその心の内を察すべきです。外が明らかなら内は暗く、外が暗ければ内は明らかです。だから外は働いて内が愚かな人もいれば、外は暗くて内が明らかな人もいます。たとえば水と火のようなものです。水は外が暗くて物を照らす光はないけれども、内は透き通って明らかです。火は外が明らかでよく物を照らすけれども、その内は暗くて透き通りません。人の内と外が違うのも、これと同じです。必ずその外見によって人を見誤ってはいけません。

解説

人を見る目についての鋭い観察です。弁が立ち小回りの利く人が大局に暗いこともあれば、口下手な人が物事の本質をよく見抜いていることもあります。益軒はこれを、外は暗いが内は透き通る水と、外を照らすが内は見えない火にたとえます。論語でも孔子は「巧言令色鮮なし仁」と戒めました。採用面接や人事評価で、話のうまさや見た目の印象に引きずられることは今もよくあります。人を用いる立場の人こそ、言葉の奥にある心を見る目を養う必要があるのです。

この章句が説くこと

人を見る目外見弁舌人材論語

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