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初学訓 / 巻之三

一言を謹めば禍なし。飮み食ふことをつゝしめば病なし。故に、古語曰、病は口より入り、禍は口より出づ。一同官同列の人は、私意の爭なく、人我の隔なくして、和睦し相愛すべし。是亦、朋友の道にて、君のためなり。家の亂は、多くは臣下の爭より起る。凡、われ一人を立てんとし、わが才を專に立てんとすれば、必ず同列を妨ぐるゆゑ、かへつてわが身の禍となる。又、同藝の人にも相爭ふべからず、そしるべからず。同列をそしり同藝をそしるは、これ小人のわざなり。才能善行は、相たすけて進むべし。不能あらば誹るべからず。

新字:一言を謹めば禍なし。飲み食ふことをつゝしめば病なし。故に、古語曰、病は口より入り、禍は口より出づ。一同官同列の人は、私意の争なく、人我の隔なくして、和睦し相愛すべし。是亦、朋友の道にて、君のためなり。家の乱は、多くは臣下の争より起る。凡、われ一人を立てんとし、わが才を専に立てんとすれば、必ず同列を妨ぐるゆゑ、かへつてわが身の禍となる。又、同芸の人にも相争ふべからず、そしるべからず。同列をそしり同芸をそしるは、これ小人のわざなり。才能善行は、相たすけて進むべし。不能あらば誹るべからず。

書き下し

一言を謹めば禍なし。飲み食ふことをつつしめば病なし。故に、古語曰、病は口より入り、禍は口より出づ。一同官同列の人は、私意の争なく、人我の隔なくして、和睦し相愛すべし。是亦、朋友の道にて、君のためなり。家の乱は、多くは臣下の争より起る。凡、われ一人を立てんとし、わが才を専に立てんとすれば、必ず同列を妨ぐるゆゑ、かへつてわが身の禍となる。又、同芸の人にも相争ふべからず、そしるべからず。同列をそしり同芸をそしるは、これ小人のわざなり。才能善行は、相たすけて進むべし。不能あらば誹るべからず。

現代語訳

言葉を慎めば禍はありません。飲み食いを慎めば病はありません。だから古語に「病は口から入り、禍は口から出る」とあります。同じ役職、同じ地位の人とは、私心による争いがなく、人と自分の隔てなく、和睦して互いに愛すべきです。これもまた友の道であり、主君のためです。家の乱れは、多くは家臣の争いから起こります。およそ自分一人を立てようとし、自分の才能ばかりを立てようとすれば、必ず同僚を妨げるので、かえってわが身の禍となります。また同じ芸の人とも争ってはならず、そしってはいけません。同僚をそしり、同じ芸の人をそしるのは、小人のすることです。才能や善い行いは、互いに助け合って進むべきです。できないところがあっても、そしってはいけません。

解説

「病は口より入り、禍は口より出づ」は、飲食と言葉の両方を慎めという古くからのことわざで、のちに『養生訓』を書く益軒にとっては二重に大切な言葉でした。後半は同僚との関係を説き、自分だけ目立とうとすれば同僚を妨げ、結局自分の禍になると言います。家の乱れは家臣の争いから起こるという指摘は、今の組織の派閥争いにもそのまま当てはまります。同業者や同僚は競争相手である前に、互いに高め合う仲間なのだと教えています。

この章句が説くこと

言葉飲食同僚和睦養生

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