初学訓 / 巻之二
一此三は、天が下の生きとし生ける人、高きいやしき、賢し愚なる、皆、是を好まざる人なし。まづ、富貴を好むより長生を好むこと重しとは、如何ぞや。富貴とは、祿多きを富といひ、位高きを貴といふ。富は國土をたもち、貴きこと國王となるは、富貴の至極なり。もし人ありて、汝に、國土をあたへ王位をゆづるべし。しからば、汝が命を奪ふべしとあらば、いかなる愚人も、命を失ひて、國土と王位を得んと思ふ者はあらじ。是、大富貴を捨てて、命を生きんことを願ふこと、かくの如し。然れば、富貴をこのむより、長生を好むは重きにあらずや。
新字:一此三は、天が下の生きとし生ける人、高きいやしき、賢し愚なる、皆、是を好まざる人なし。まづ、富貴を好むより長生を好むこと重しとは、如何ぞや。富貴とは、禄多きを富といひ、位高きを貴といふ。富は国土をたもち、貴きこと国王となるは、富貴の至極なり。もし人ありて、汝に、国土をあたへ王位をゆづるべし。しからば、汝が命を奪ふべしとあらば、いかなる愚人も、命を失ひて、国土と王位を得んと思ふ者はあらじ。是、大富貴を捨てて、命を生きんことを願ふこと、かくの如し。然れば、富貴をこのむより、長生を好むは重きにあらずや。
書き下し
一此三は、天が下の生きとし生ける人、高きいやしき、賢し愚なる、皆、是を好まざる人なし。まづ、富貴を好むより長生を好むこと重しとは、如何ぞや。富貴とは、禄多きを富といひ、位高きを貴といふ。富は国土をたもち、貴きこと国王となるは、富貴の至極なり。もし人ありて、汝に、国土をあたへ王位をゆづるべし。しからば、汝が命を奪ふべしとあらば、いかなる愚人も、命を失ひて、国土と王位を得んと思ふ者はあらじ。是、大富貴を捨てて、命を生きんことを願ふこと、かくの如し。然れば、富貴をこのむより、長生を好むは重きにあらずや。
現代語訳
この三つは、天の下に生きるすべての人が、身分の高い低い、賢い愚かにかかわらず、みな好まない人はいません。まず、富貴を好むより長生きを好むほうが重いとはどういうことでしょうか。富貴とは、俸禄が多いのを富といい、位が高いのを貴といいます。富は国土を保ち、貴さは国王となるのが、富貴の極みです。もし人が、あなたに国土を与え王位を譲ろう、その代わりにあなたの命を奪う、と言ったなら、どんな愚かな人でも、命を失って国土と王位を得ようと思う者はいないでしょう。このように、大きな富貴を捨てても命を生きることを願うのです。ですから、富貴を好むより長生きを好むほうが重いのではないでしょうか。
解説
この章句が説くこと
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