墨子 / 耕柱
子墨子曰:「和氏之璧,隋侯之珠,三棘六異,此諸侯之所謂良寳也。可以富國家,衆人民,治刑政,安社稷乎?曰:不可。所謂貴良寶者,為其可以利也,而和氏之璧,隋侯之珠,三棘六異,不可以利人,是非天下之良寶也。今用義為政於國家,人民必衆,刑政必治,社稷必安。所為貴良寶者,可以利民也,而義可以利人,故曰:義,天下之良寶也。」
新字:子墨子曰:「和氏之璧,隋侯之珠,三棘六異,此諸侯之所謂良寳也。可以富国家,衆人民,治刑政,安社稷乎?曰:不可。所謂貴良宝者,為其可以利也,而和氏之璧,隋侯之珠,三棘六異,不可以利人,是非天下之良宝也。今用義為政於国家,人民必衆,刑政必治,社稷必安。所為貴良宝者,可以利民也,而義可以利人,故曰:義,天下之良宝也。」
書き下し
子墨子曰く、「和氏の璧、隋侯の珠、三棘六異、此れ諸侯の所謂る良寳なり。以て國家を富まし、人民を衆くし、刑政を治め、社稷を安んず可きか。曰く、不可なり。所謂る良寶を貴ぶ者は、其の以て利す可きが為なり。而して和氏の璧、隋侯の珠、三棘六異は、以て人を利す可からず。是れ天下の良寶に非ざるなり。今、義を用いて政を國家に為さば、人民必ず衆く、刑政必ず治まり、社稷必ず安からん。良寶を貴ぶ所以の者は、以て民を利す可ければなり。而して義は以て人を利す可し。故に曰く、義は天下の良寶なり」と。
現代語訳
墨子が言った。「和氏の璧、隋侯の珠、三棘六異、これらは諸侯がいわゆる良い宝と呼ぶものである。これで国家を富ませ、人民を増やし、刑政を治め、社稷を安んじることができるか。できない。良い宝を貴ぶのは、それが役に立つからである。ところが和氏の璧も隋侯の珠も三棘六異も、人を利することができない。だから天下の良い宝ではない。いま義によって国家の政治を行えば、人民は必ず増え、刑政は必ず治まり、社稷は必ず安らかになる。良い宝を貴ぶのは、民を利することができるからである。義は人を利することができる。だから言う、義は天下の良い宝である」。
解説
宝とは何かを定義し直す一段です。名高い宝玉を並べたうえで、それらが国を富ませ民を増やせるかと問い、できないと答える。貴ぶ理由は役に立つことにあるはずだ、という前提から、義こそ宝だと結論します。値打ちを、値段や希少さではなく、それが何を生むかで測り直す。資産の見方としても読めます。
この章句が説くこと
価値宝実利定義義
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