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初学訓 / 巻之二

一養體とは、父母の口腹身體をやしなふを云ふ。わが家の力になるべきほどは、飮食を味よくとゝのへ、父母の好み給ふ物を問ひてすゝむべし。富貴の人の子も、みづから飮食を鹽梅し、其味のよしあしと、冷えたると煖かなるとを試むべし。又夏冬をりをりの身にかなへる衣服をこしらへて、これをすゝめ、居所寢所を安からしめ、冬は溫に、夏は涼しくし、風寒暑濕をふせぎ、身にしたがへる調度、もろもろの器物の、事闕けざるやうに調へすゝむべし。およそ、父母の身を養ふには、飮食、衣服、居室、器物を不足なく備ふるにあり。子たる者、これを心にかけて營むべし、疎なるべからず。年老いては、脾胃よわく、元氣乏しければ、飮食の養、尤くはしかるべし。

新字:一養体とは、父母の口腹身体をやしなふを云ふ。わが家の力になるべきほどは、飲食を味よくとゝのへ、父母の好み給ふ物を問ひてすゝむべし。富貴の人の子も、みづから飲食を塩梅し、其味のよしあしと、冷えたると煖かなるとを試むべし。又夏冬をりをりの身にかなへる衣服をこしらへて、これをすゝめ、居所寝所を安からしめ、冬は温に、夏は涼しくし、風寒暑湿をふせぎ、身にしたがへる調度、もろもろの器物の、事闕けざるやうに調へすゝむべし。およそ、父母の身を養ふには、飲食、衣服、居室、器物を不足なく備ふるにあり。子たる者、これを心にかけて営むべし、疎なるべからず。年老いては、脾胃よわく、元気乏しければ、飲食の養、尤くはしかるべし。

書き下し

一養体とは、父母の口腹身体をやしなふを云ふ。わが家の力になるべきほどは、飲食を味よくととのへ、父母の好み給ふ物を問ひてすすむべし。富貴の人の子も、みづから飲食を塩梅し、其味のよしあしと、冷えたると煖かなるとを試むべし。又夏冬をりをりの身にかなへる衣服をこしらへて、これをすすめ、居所寝所を安からしめ、冬は温に、夏は涼しくし、風寒暑湿をふせぎ、身にしたがへる調度、もろもろの器物の、事闕けざるやうに調へすすむべし。およそ、父母の身を養ふには、飲食、衣服、居室、器物を不足なく備ふるにあり。子たる者、これを心にかけて営むべし、疎なるべからず。年老いては、脾胃よわく、元気乏しければ、飲食の養、尤くはしかるべし。

現代語訳

体を養うとは、父母の口や腹、身体を養うことをいいます。わが家の力が及ぶかぎり、飲食をおいしく整え、父母の好まれる物を尋ねてお勧めすべきです。裕福な家の子でも、自分で飲食の味加減をし、その味のよしあしや、冷めているか温かいかを確かめるべきです。また夏冬それぞれの時期の身に合った衣服をこしらえてお勧めし、居間や寝所を安らかにし、冬は暖かく、夏は涼しくし、風・寒さ・暑さ・湿気を防ぎ、身の回りの調度やもろもろの器物に不足がないように整えてお勧めすべきです。およそ父母の身を養うには、飲食・衣服・住まい・器物を不足なく備えることにあります。子である者は、これを心にかけて営むべきで、おろそかにしてはいけません。年老いると胃腸が弱く、元気が乏しいので、飲食の養いは特に行き届かせるべきです。

解説

孝のもう一つの柱、体を養う具体的な心得です。裕福でも人任せにせず、自分で味や温かさを確かめよという指摘には、のちに『養生訓』を書く益軒らしい配慮が表れています。冬は暖かく夏は涼しくというのは『礼記』曲礼上篇の「冬は温かにして夏は凊しくす」に通じます。老いて胃腸が弱った親の食事には特に気を配れという言葉は、今の介護食の考え方そのものです。親の体調や好みに合わせて暮らしを整えることは、今も変わらない孝の実践です。

この章句が説くこと

孝養体衣食住介護養生

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