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初学訓 / 巻之二

是、いとけなき時、父母を慕へる心を、一生の間失はざるなり。慕の字、身を終るまで忘るべからず。又、外へ出づれば、必ず父母にまうし、歸れば、必ず先、父母に見えて後、わが所に退く。行きて遊ぶに、常の處ありて、みだりにゆかず。習ふに、つねのわざありておこたらず。わが身の行をつゝしみつとめて、不義無禮の行なく、氣ずゐにして放逸なるわざなく、惡友に交らずして、父母にうれへ心づかひ無からしむるは、是、養志なり。

新字:是、いとけなき時、父母を慕へる心を、一生の間失はざるなり。慕の字、身を終るまで忘るべからず。又、外へ出づれば、必ず父母にまうし、帰れば、必ず先、父母に見えて後、わが所に退く。行きて遊ぶに、常の処ありて、みだりにゆかず。習ふに、つねのわざありておこたらず。わが身の行をつゝしみつとめて、不義無礼の行なく、気ずゐにして放逸なるわざなく、悪友に交らずして、父母にうれへ心づかひ無からしむるは、是、養志なり。

書き下し

是、いとけなき時、父母を慕へる心を、一生の間失はざるなり。慕の字、身を終るまで忘るべからず。又、外へ出づれば、必ず父母にまうし、帰れば、必ず先、父母に見えて後、わが所に退く。行きて遊ぶに、常の処ありて、みだりにゆかず。習ふに、つねのわざありておこたらず。わが身の行をつつしみつとめて、不義無礼の行なく、気ずゐにして放逸なるわざなく、悪友に交らずして、父母にうれへ心づかひ無からしむるは、是、養志なり。

現代語訳

これは、幼いときに父母を慕った心を、一生の間失わないということです。「慕」の字を、生涯忘れてはいけません。また、外へ出るときは必ず父母に申し上げ、帰ったら必ずまず父母に会ってから自分の部屋に下がります。遊びに行くにも決まった所があって、むやみに行かない。習い事にも決まった業があって怠らない。自分の行いを慎み努めて、不義や無礼の行いがなく、気ままで放逸なふるまいがなく、悪い友と交わらず、父母に心配や気遣いをさせないこと、これが志を養うことです。

解説

外出時に告げ、帰れば顔を見せ、行き先を定めるという作法は、『礼記』曲礼上篇の「出づるには必ず告げ、反れば必ず面す。遊ぶ所必ず常有り、習ふ所必ず業有り」に基づきます。益軒は、親に心配をかけないように自分の身を慎むことも、親の志を養う孝だと言います。現代でも、子どもの帰りが遅いのに連絡がなければ親は気が気ではありません。行き先を伝え、無事を知らせるという小さな習慣が、家族の安心と信頼を育てるのです。

この章句が説くこと

孝礼記養志慎み家族

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