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初学訓 / 巻之一

一仁は、心の德の惣名にして、物をあはれむ理なり。仁をわかてば、仁義となる。義は、宜しきなり。宜とは、萬事に相應して、各よき程に行ふをいふ。すべて、人倫萬物をあはれむは仁なり。是、理一なり。親兄弟、夫婦、親戚、家人等、其外萬民をあはれむに、其親しき疎き、高き卑きにつきて、輕重のわかちありて、各其人に相應して宜しきを義といふ。かくの如く、物によりて宜しきことかはれるは、分殊なり。理一と分殊との分を知るべし。仁義のわかち、其字義かくのごとし。

新字:一仁は、心の徳の惣名にして、物をあはれむ理なり。仁をわかてば、仁義となる。義は、宜しきなり。宜とは、万事に相応して、各よき程に行ふをいふ。すべて、人倫万物をあはれむは仁なり。是、理一なり。親兄弟、夫婦、親戚、家人等、其外万民をあはれむに、其親しき疎き、高き卑きにつきて、軽重のわかちありて、各其人に相応して宜しきを義といふ。かくの如く、物によりて宜しきことかはれるは、分殊なり。理一と分殊との分を知るべし。仁義のわかち、其字義かくのごとし。

書き下し

一仁は、心の徳の惣名にして、物をあはれむ理なり。仁をわかてば、仁義となる。義は、宜しきなり。宜とは、万事に相応して、各よき程に行ふをいふ。すべて、人倫万物をあはれむは仁なり。是、理一なり。親兄弟、夫婦、親戚、家人等、其外万民をあはれむに、其親しき疎き、高き卑きにつきて、軽重のわかちありて、各其人に相応して宜しきを義といふ。かくの如く、物によりて宜しきことかはれるは、分殊なり。理一と分殊との分を知るべし。仁義のわかち、其字義かくのごとし。

現代語訳

仁は心の徳の総名であって、物を憐れむ理です。仁を分ければ、仁と義になります。義とは宜しいということです。宜しいとは、あらゆる事にふさわしく、それぞれほどよく行うことをいいます。すべて人々や万物を憐れむのは仁です。これが「理は一つ」ということです。親兄弟、夫婦、親戚、家の者など、そのほか万民を憐れむにあたって、親しい・疎い、身分が高い・低いによって軽重の区別があり、それぞれその人にふさわしく宜しいことを義といいます。このように、相手によって宜しいことが変わるのが「分は殊なる」ということです。理一と分殊との区別を知るべきです。仁と義の分かれと、その字の意味はこのとおりです。

解説

「理一分殊」は宋の程頤が張載の『西銘』を評して述べ、朱子が重んじた考えです。すべてを憐れむ心は一つでも、その表し方は相手との関係でふさわしく変わる。益軒はこれを仁と義の関係として説明します。たとえば同じ思いやりでも、子どもには守り育てる形、親には敬う形、友には率直な助言の形をとります。誰にでも同じ扱いをするのが公平なのではなく、相手に応じてふさわしく接することが義なのです。人間関係の知恵として今も役立つ考え方です。

この章句が説くこと

仁義理一分殊宜しき関係

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