樵談治要抄録 / 奉行は正直な人を
一訴訟の奉行人其仁を選ばるべき事、凡奉行人は、其下の公事を執行ふ職たるによりて、政道の善惡、もとゝして是によるべし、いかにも心正直にして私を不レ存、黑白をわきまへ、文筆に達し、理非にまかせて最負をいたさゞらんを、よき奉行とは稱すべし、是によりてあやまりあらん奉行人をば、永くめしつかはるべからざるよし、貞永の式目にのせられ侍り、兩方の支證をとり合せ、究決せられて、理有方へ付られたるを、もとの給人として、難澁を致さんをば、別て罪科に處せらるべし、いはんや奉行人として、存知ながらとりあげ披露せんは、大なる越度なるべし、もし又奉行人として最負をいたし、かたてうちになされたる公事たらば、越訴を立て申さん事、其咎有べからず、其方の奉行たる人、傍輩にかたらはされ、
新字:一訴訟の奉行人其仁を選ばるべき事、凡奉行人は、其下の公事を執行ふ職たるによりて、政道の善悪、もとゝして是によるべし、いかにも心正直にして私を不レ存、黒白をわきまへ、文筆に達し、理非にまかせて最負をいたさゞらんを、よき奉行とは称すべし、是によりてあやまりあらん奉行人をば、永くめしつかはるべからざるよし、貞永の式目にのせられ侍り、両方の支証をとり合せ、究決せられて、理有方へ付られたるを、もとの給人として、難渋を致さんをば、別て罪科に処せらるべし、いはんや奉行人として、存知ながらとりあげ披露せんは、大なる越度なるべし、もし又奉行人として最負をいたし、かたてうちになされたる公事たらば、越訴を立て申さん事、其咎有べからず、其方の奉行たる人、傍輩にかたらはされ、
書き下し
一訴訟の奉行人其仁を選ばるべき事、凡奉行人は、其下の公事を執行ふ職たるによりて、政道の善惡、もとゝして是によるべし、いかにも心正直にして私を不レ存、黑白をわきまへ、文筆に達し、理非にまかせて最負をいたさゞらんを、よき奉行とは稱すべし、是によりてあやまりあらん奉行人をば、永くめしつかはるべからざるよし、貞永の式目にのせられ侍り、兩方の支證をとり合せ、究決せられて、理有方へ付られたるを、もとの給人として、難澁を致さんをば、別て罪科に處せらるべし、いはんや奉行人として、存知ながらとりあげ披露せんは、大なる越度なるべし、もし又奉行人として最負をいたし、かたてうちになされたる公事たらば、越訴を立て申さん事、其咎有べからず、其方の奉行たる人、傍輩にかたらはされ、
現代語訳
一、訴訟の奉行人はその人を選ばれるべきこと。おおよそ奉行人は、その下の公事を執り行う職なので、政道の善し悪しは、もとはこれによるでしょう。心が正直で私心を持たず、黒白をわきまえ、文筆に達し、理非にしたがって依怙贔屓をしない者を、よい奉行と称すべきです。このため、誤りのあった奉行人を長く召し使ってはならないと、貞永の式目に載せられています。双方の証拠を取り合わせ、究明して、理のある方へ付けられたのに、もとの給人が不服を唱えるなら、特に罪科に処せられるべきです。まして奉行人として、承知のうえで取り上げて披露するのは、大きな落ち度でしょう。もしまた奉行人が依怙贔屓をして、片手落ちにした公事ならば、越訴を立てて申すことは、その咎はないはずです。その方面の奉行たる人が、同僚に語らわれ、
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『甲陽軍鑑』品第四十扨て悪き事あり共類親広き近付知音のひいき多くある者は悪事を吉事と申なし、さやうのまつりごとにてむほんの儀もかくして悪事出来してから大将の耳へ入る共それは更に所詮なき儀なり、其みなもとは出頭人の親類うかへてまはり、或はよきひきもちたる奉公人共、下の手抦を中にいひ、中の手抦を上に申、又ひいきなきをば中にいひ、中を下にいふ事、ひいき〳〵の取さた故如此、
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『甲陽軍鑑』品第十三能き武士は先づ慇懃に惣別人の腹立つ事を、我方よりはせずそしるもけすも無案内なる者ども、己れが贔負の人をほむれば能き事と存知むざとほめ、世間に類まれなる男をもそしれば、我贔負の人は威光あがると思ふ人は是れも女人の穿鑿なり、そしるもけすも無穿鑿の近付き衆が、分別なき取りさたより出来する、さなくは又よき人の各ひとつ道理に参るに付き、一段中能き物にて候ぞ、
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『甲陽軍鑑』品第四十右の次に山県三郎兵衛曰く、一ツ塲所にて侍一二人走り廻りの中に、類親おほき方をましのやうに申、それは信玄公大きにきらひ給ふは、上かろければ、ひいき〳〵の沙汰にて悉皆大将もなく、縦へ大将ありても、未練なる君の下にて弓矢のせんさく、女人のいさかひにおほき方の申かつ様子に相似たり、大将よければ、ましはまし、おとり対々なるは同じ事と分るがよき大将のわざなり、かならずおほき人の中には、せんさくなしに、むざと我ひいきをほむる女侍沢山なり、去に付かたましき侍とは女を三人よせてかくげに候、
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『政談』諸役人に器量を選ふ事代末になるに随かひて親類近付きの取成にて人を見出だすは依怙のやうなるを嫌ふけいきの心もあり、又老中の職は細かなる事をは勤めぬことなるに、今は面々の職掌暗く、下たる役人の世話をやくべき瑣細なることまでも聞きて、御奉公に精を出すと云ふやうに仕なす風俗、身のたかぶりをもこらへ退出すればくたびれて内へ入りて休息し居て、親類近付きにもあはす、朝になれは詮もなき対客を役目のやうに覚ゆる、是れ人を見出たすこと職掌なることを知らぬ故なり、番頭も組子に心安く会はすんは何としてか其の器量人抦をも知るへき、御旗本の面々も唯々老中若老中を勤めありき、鳥渡表を見たるばかりにては心に落着もなけれは其の家中に縁を求め、内証より付け入りにしなどする、いかさまにも度々参りたる人、又内証より取りなす人もあれは、覚えす皆贔負の沙汰となる、
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『甲陽軍鑑』品第四十女はひいきも正にならず、にくむも正にならず、ふがいなくかざる人間なれば、男子道にかさる人をば女侍と信玄公の仰らるゝ、
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『甲陽軍鑑』品第四十七扨又志村金ノ助·むかさ与一郎公事終て翌日に諸侍へ二十人衆をもつてあひふれらるゝ、其趣きは、今度むかさ与一郎を逆心の科ほど申しつくる事は、彼のむかさ男武士道不穿鑿の科なれば、以後又かやうのさたにては、よき侍をあしういひ、あしき侍をほめたて、ひいき〳〵のさほうにては信玄が家の侍、大小共に善悪同事にて、よき武士も悉く勇なうして、第一は軍法見だりなるべし、軍法あしければ晴信勝利を失ふ事疑ひ有るまじ、勝利を失ふ事疑ひなければ、件のむかさ与一郎は晴信ほこさきの恥有るみなもと也、扨てこそ至て謀叛の科と同前なり、故に如件機ものにあぐると、あひふれさせ給ふなり、

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