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甲陽軍鑑 / 品第四十七

扨又志村金ノ助·むかさ與一郞公事終て翌日に諸侍へ二十人衆をもつてあひふれらるゝ、其趣きは、今度むかさ與一郞を逆心の科ほど申しつくる事は、彼のむかさ男武士道不穿鑿の科なれば、以後又かやうのさたにては、よき侍をあしういひ、あしき侍をほめたて、ひいき〳〵のさほうにては信玄が家の侍、大小共に善惡同事にて、よき武士も悉く勇なうして、第一は軍法見だりなるべし、軍法あしければ晴信勝利を失ふ事疑ひ有るまじ、勝利を失ふ事疑ひなければ、件のむかさ與一郞は晴信ほこさきの恥有るみなもと也、扨てこそ至て謀叛の科と同前なり、故に如件機ものにあぐると、あひふれさせ給ふなり、

新字:扨又志村金ノ助·むかさ与一郎公事終て翌日に諸侍へ二十人衆をもつてあひふれらるゝ、其趣きは、今度むかさ与一郎を逆心の科ほど申しつくる事は、彼のむかさ男武士道不穿鑿の科なれば、以後又かやうのさたにては、よき侍をあしういひ、あしき侍をほめたて、ひいき〳〵のさほうにては信玄が家の侍、大小共に善悪同事にて、よき武士も悉く勇なうして、第一は軍法見だりなるべし、軍法あしければ晴信勝利を失ふ事疑ひ有るまじ、勝利を失ふ事疑ひなければ、件のむかさ与一郎は晴信ほこさきの恥有るみなもと也、扨てこそ至て謀叛の科と同前なり、故に如件機ものにあぐると、あひふれさせ給ふなり、

書き下し

扨又志村金ノ助·むかさ与一郎公事終て翌日に諸侍へ二十人衆をもつてあひふれらるゝ、其趣きは、今度むかさ与一郎を逆心の科ほど申しつくる事は、彼のむかさ男武士道不穿鑿の科なれば、以後又かやうのさたにては、よき侍をあしういひ、あしき侍をほめたて、ひいき〳〵のさほうにては信玄が家の侍、大小共に善悪同事にて、よき武士も悉く勇なうして、第一は軍法見だりなるべし、軍法あしければ晴信勝利を失ふ事疑ひ有るまじ、勝利を失ふ事疑ひなければ、件のむかさ与一郎は晴信ほこさきの恥有るみなもと也、扨てこそ至て謀叛の科と同前なり、故に如件機ものにあぐると、あひふれさせ給ふなり、

現代語訳

さてまた、志村金ノ助・武笠与一郎の公事が終わって翌日に、諸侍へ二十人衆をもって相触れられる。その趣きは、今度、武笠与一郎を逆心の科ほど申し付ける事は、かの武笠の男は武士道無詮索の科であれば、以後またこのような沙汰にては、よい侍を悪しく言い、悪しき侍を褒め立て、贔屓贔屓の作法にては、信玄が家の侍は大小ともに善悪が同じ事にて、よい武士もことごとく勇なくして、第一は軍法が乱りになるべし。軍法が悪しければ、晴信が勝利を失う事に疑いはあるまじ。勝利を失う事に疑いがなければ、かの武笠与一郎は晴信の矛先の恥のみなもとである。さてこそ、至って謀叛の科と同前である。ゆえに件のごとく磔ものに上げると、相触れさせ給うのである。

解説

処刑の翌日に、なぜこれほど重いのかを家中へ触れて回る。人の評が贔屓で歪めば善悪が同じことになり、よい武士が勇まなくなり、軍法が乱れて負ける。だから謀叛と同罪だという筋道を、順を追って全員に示している。だから謀叛と同罪だという筋道を、順を追って全員に示している。処刑した翌日に触れて回るところに、この家の仕置きの形が出ている。

この章句が説くこと

触れ軍法贔屓評価謀叛信玄

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