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樵談治要抄録 / 荒廃を正す務め

其外諸祉の造營はねぎ神主等小破の時修理を致すべし、萬一大風若は炎上など有て大營に及ばゞ、其由を注進せしめば、先例に任せてさた有べし、弘仁三年の官符には、有封の祉の神戸の百姓をもて無封の祉の修理を致すべき由みえたり、有封無封といふは神領のあるヿなきヿをいふ也、近代は諸國の祭事衰微せるにより、有封の祉の造營猶もてなり難かるべし、いはんや無封の神祉(陵歟)においてをや、抑此十餘年は、天下のみだれによりて、神祉の荒廢たぐひなく、祭祀の凌遲法に過たり、國のまさにおこらんとする時は、神明くだりて其德をかゞむ、國のまさにほろびんとする時も、神又くだりて其惡をみるといへり、神いかり民そむかば、何をもてかよく久しからむともいへり、かるがゆへに國司守護などは、別に私のいのりなどをしては、益なきと也、かぎり有國役などを嚴密に成敗して、昔より有つけたる神祉の修理、祭祀の退轉せるを申行ひ侍らば、君には奉公の忠となり、神には歸敬の誠を顯すべし、おほやけわたくし清淨の心ざしをさきとして、如在の祀をもぱらにせば、陰陽不測の神明も、いかでか黍稷かうばしきにあらざるヿはりをうけたまはざらんや、

新字:其外諸祉の造営はねぎ神主等小破の時修理を致すべし、万一大風若は炎上など有て大営に及ばゞ、其由を注進せしめば、先例に任せてさた有べし、弘仁三年の官符には、有封の祉の神戸の百姓をもて無封の祉の修理を致すべき由みえたり、有封無封といふは神領のあるヿなきヿをいふ也、近代は諸国の祭事衰微せるにより、有封の祉の造営猶もてなり難かるべし、いはんや無封の神祉(陵歟)においてをや、抑此十余年は、天下のみだれによりて、神祉の荒廃たぐひなく、祭祀の凌遅法に過たり、国のまさにおこらんとする時は、神明くだりて其徳をかゞむ、国のまさにほろびんとする時も、神又くだりて其悪をみるといへり、神いかり民そむかば、何をもてかよく久しからむともいへり、かるがゆへに国司守護などは、別に私のいのりなどをしては、益なきと也、かぎり有国役などを厳密に成敗して、昔より有つけたる神祉の修理、祭祀の退転せるを申行ひ侍らば、君には奉公の忠となり、神には帰敬の誠を顕すべし、おほやけわたくし清浄の心ざしをさきとして、如在の祀をもぱらにせば、陰陽不測の神明も、いかでか黍稷かうばしきにあらざるヿはりをうけたまはざらんや、

書き下し

其外諸祉の造營はねぎ神主等小破の時修理を致すべし、萬一大風若は炎上など有て大營に及ばゞ、其由を注進せしめば、先例に任せてさた有べし、弘仁三年の官符には、有封の祉の神戸の百姓をもて無封の祉の修理を致すべき由みえたり、有封無封といふは神領のあるヿなきヿをいふ也、近代は諸國の祭事衰微せるにより、有封の祉の造營猶もてなり難かるべし、いはんや無封の神祉(陵歟)においてをや、抑此十餘年は、天下のみだれによりて、神祉の荒廢たぐひなく、祭祀の凌遲法に過たり、國のまさにおこらんとする時は、神明くだりて其德をかゞむ、國のまさにほろびんとする時も、神又くだりて其惡をみるといへり、神いかり民そむかば、何をもてかよく久しからむともいへり、かるがゆへに國司守護などは、別に私のいのりなどをしては、益なきと也、かぎり有國役などを嚴密に成敗して、昔より有つけたる神祉の修理、祭祀の退轉せるを申行ひ侍らば、君には奉公の忠となり、神には歸敬の誠を顯すべし、おほやけわたくし清淨の心ざしをさきとして、如在の祀をもぱらにせば、陰陽不測の神明も、いかでか黍稷かうばしきにあらざるヿはりをうけたまはざらんや、

現代語訳

そのほかの諸社の造営は、禰宜・神主らが小さな破損の時に修理を行うべきです。万一大風あるいは火災などがあって大がかりな造営に及ぶ場合は、その旨を注進させれば、先例に従って沙汰があるでしょう。弘仁三年の官符には、封戸のある社の神戸の百姓を使って、封戸のない社の修理を行うべきことが見えます。有封・無封というのは、神領のある・なしを言います。近ごろは諸国の祭事が衰え、有封の社の造営ですらなお維持しがたいでしょう。まして無封の神社(陵か)においてはなおさらです。そもそもこの十余年は天下の乱れによって神社の荒廃は類がなく、祭祀の衰えは度を越しています。国がまさに興ろうとする時は、神明が降ってその徳を見られ、国がまさに滅びようとする時も、神はまた降ってその悪を見られると言います。神が怒り民が背けば、何によって長く保てようかとも言います。それゆえ国司・守護などは、別に私の祈りなどをしても益がないというのです。限りのある国役などを厳密に処理して、昔からある神社の修理や、衰えた祭祀を申し行うならば、主君には奉公の忠となり、神には帰敬の誠を表すことになるでしょう。公私ともに清浄な心を第一として、神がそこにいますかのように祀りをもっぱらにすれば、陰陽の測りがたい神明も、供え物の黍や稷が香り高いのではなく、徳こそが香り高いという道理を、どうしてお受けにならないことがありましょうか。

解説

荒れた神社の修理と祭祀の復興は、守護や国司が私的な祈願をするよりも、公の務めを果たすことだと説かれます。応仁の乱後の荒廃を目の前にした兼良の、時代への危機感がにじむ一節です。現代に重ねれば、小さな破損のうちに手を入れる日常の保全、そして自分の利益のための施策より、組織の土台を直す仕事に力を注ぐことの大切さです。傷みが小さいうちに直す習慣と、公私を分ける清い心が、長く続く組織を支えます。

この章句が説くこと

神社修理荒廃公私国役保全徳

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