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新書 / 耳痺

竊聞之曰:目見正而口言枉則害,陽言吉錯之民而凶則敗,倍道則死,障光則晦,無神而逆人則天必敗其事。故昔者楚平王有臣曰伍子胥,王殺其父而無罪,奔走而之吳,曰:「父死而不死,則非父之子也;死而非補,則過計也;與吾死而不一明,不若舉天地以成名。」於是紆身而不□,乃適闔閭,治味以求親。闔閭甚而安之,說其謀,果其舉,反其德,用而任吳國之政也。民保命而不失,歲時熟而不凶,五官公而不私,上下調而無尤,天下服而無御,四境靜而無虞。然后忿心發怒,出凶言,陰必死,提邦以伐楚,五戰而五勝,伏尸數十萬,城郢之門,執高庫之兵,傷五藏之實,毀十龍之鍾,撻平王之墓。昭王失國而奔,妻生虜而入吳。故楚平王懷陰賊,殺無罪,殃既至乎此矣。

新字:窃聞之曰:目見正而口言枉則害,陽言吉錯之民而凶則敗,倍道則死,障光則晦,無神而逆人則天必敗其事。故昔者楚平王有臣曰伍子胥,王殺其父而無罪,奔走而之呉,曰:「父死而不死,則非父之子也;死而非補,則過計也;与吾死而不一明,不若舉天地以成名。」於是紆身而不□,乃適闔閭,治味以求親。闔閭甚而安之,説其謀,果其舉,反其徳,用而任呉国之政也。民保命而不失,歳時熟而不凶,五官公而不私,上下調而無尤,天下服而無御,四境静而無虞。然后忿心発怒,出凶言,陰必死,提邦以伐楚,五戦而五勝,伏尸数十万,城郢之門,執高庫之兵,傷五蔵之実,毀十竜之鍾,撻平王之墓。昭王失国而奔,妻生虜而入呉。故楚平王懐陰賊,殺無罪,殃既至乎此矣。

書き下し

窃かに之を聞く、曰く、目の見ること正しくして口の言うこと枉がれば則ち害あり、陽に吉を言いて之を錯く民にして凶なれば則ち敗れ、道に倍けば則ち死し、光を障ぐれば則ち晦く、神無くして人に逆らえば則ち天必ず其の事を敗る、と。故に昔者楚の平王に臣有り伍子胥と曰う。王其の父を殺して罪無し。奔走して呉に之く。曰く、「父死して死せざれば、則ち父の子に非ざるなり。死して補い非ざれば、則ち過計なり。吾と死して一も明らかにせざるは、天地を挙げて以て名を成すに若かず」と。是に於いて身を紆げて□ならず、乃ち闔閭に適き、味を治めて以て親しみを求む。闔閭甚だ之を安んじ、其の謀を説び、其の挙を果とし、其の徳に反り、用いて呉国の政に任ず。民は命を保ちて失わず、歳時熟して凶ならず、五官は公にして私ならず、上下調いて尤無く、天下服して御する無く、四境静かにして虞無し。然る后に忿心発怒し、凶言を出だし、陰かに必ず死せんとし、邦を提げて以て楚を伐ち、五たび戦いて五たび勝ち、伏尸数十万、郢の門に城し、高庫の兵を執り、五蔵の実を傷つけ、十龍の鍾を毀ち、平王の墓を撻つ。昭王国を失いて奔り、妻は生きながら虜となりて呉に入る。故に楚の平王陰賊を懐き、罪無きを殺し、殃既に此に至る。

現代語訳

ひそかに聞いたところでは、目は正しく見ているのに口が曲げて語れば害が生じ、表向きは吉を言って民に据えながら実は凶であれば敗れ、道に背けば死に、光をさえぎれば暗くなり、神意がないまま人に逆らえば、天は必ずその事を破る、といいます。昔、楚の平王に伍子胥という臣下がいました。王は何の罪もない彼の父を殺し、子胥は逃げて呉へ行きました。彼は言いました。「父が死んだのに私が死なないのでは、父の子とはいえない。死んでも償いにならないなら、それは誤った計算だ。私と共に死んで何も明らかにならないよりは、天地をひっくり返してでも名を成すほうがよい」と。そこで身を屈して(欠字)、闔閭のもとへ行き、料理の味を整えて親しみを得ようとしました。闔閭は彼をたいへん気に入って安んじ、その謀を喜び、その企てを成果とし、その徳に立ち返って、用いて呉国の政治を任せました。民は命を保って失わず、季節ごとの実りは凶作にならず、諸官は公正で私心がなく、上下は調和して咎めがなく、天下は服して御しやすく、四方の国境は静かで憂いがありませんでした。その後で子胥は怒りを爆発させ、険しい言葉を発し、ひそかに死を覚悟して、国をあげて楚を討ち、五度戦って五度勝ち、倒れた屍は数十万、郢の城門に拠り、高庫の兵器を手にし、五臓にあたる宝物を傷つけ、十龍の鐘を壊し、平王の墓をむち打ちました。昭王は国を失って逃げ、妻は生け捕りにされて呉へ入りました。こうして楚の平王は陰険な悪意を抱いて罪なき者を殺し、その災いはここまで及んだのです。

解説

伍子胥の復讐を、「天は悪意ある行いを必ず破る」という前置きの下で語る故事です。賈誼の運び方は、まず原則を述べ、次に平王の無道、子胥の逃亡と出仕、呉の繁栄、そして楚への報復と順に並べて、結末で最初の原則に戻る形です。「味を治めて親しみを求む」とあるように、子胥は低い立場から入って信頼を積み、国政を任される位置に上りました。この段には欠字が一か所あり、「身を紆げて□ならず」の部分は読み切れません。現代の組織に置き換えると、罪なき部下を理不尽に切れば、いつか最も有能な者が敵側に回ってその全力を向けてくる、という警告になります。人事の不当さは、本人だけでなく周囲の信頼も同時に失わせるものです。

この章句が説くこと

耳痺伍子胥報復人事賞罰新書

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