新書 / 鑄錢
迺者竊聞吏復鑄錢者,民人抵罪,多者一縣百數,少者十數。家屬、知識及吏之所疑,擊囚、榜笞及犇走者,類甚不少。僕未之得驗,然其刑必然。抵禍罪者,固乃始耳。此無息時,事甚不少,於上大不便,原陛下幸勿忽!
新字:迺者窃聞吏復鋳銭者,民人抵罪,多者一県百数,少者十数。家属、知識及吏之所疑,撃囚、榜笞及犇走者,類甚不少。僕未之得験,然其刑必然。抵禍罪者,固乃始耳。此無息時,事甚不少,於上大不便,原陛下幸勿忽!
書き下し
迺者竊かに聞く、吏の復た銭を鋳る者あり、民人罪に抵たる、多き者は一県に百数、少なき者は十数なりと。家属・知識及び吏の疑う所、擊囚・榜笞及び犇走する者、類甚だ少なからず。僕は未だ之を験することを得ざれども、然れども其の刑は必ず然らん。禍罪に抵たる者は、固より乃ち始まるのみ。此れ息む時無く、事甚だ少なからず、上に於いて大いに便ならず、原わくは陛下幸いに忽せにすること勿れ。
現代語訳
近ごろ内々に聞いたところでは、役人がまたも貨幣の鋳造を取り締まり、民が罪に問われているとのことです。多い県では百人あまり、少ない県でも十数人に上ります。家族や知人、役人が疑った者たちまで、投獄され、むち打たれ、逃げ出す者もおり、その類は決して少なくありません。私はまだ事実を確かめていませんが、刑はきっとそのようになっているはずです。罪に問われる人は、これから増え始めるところでしょう。この動きは止むことがなく、事件は少なくなく、上にとってまことに不都合です。どうか陛下、これを軽んじないでください。
解説
鋳銭をめぐる上奏の導入で、賈誼はまず、民間の盗鋳を取り締まる動きの中で罰を受ける者が各県で増えている、という聞き取りを伝えます。「確かめてはいない」と断ってから、それでも刑の実態はそうなるはずだと推し量る書き方は、現場の報告を待たずに危機を察知しようとする姿勢を示します。犯人本人だけでなく家族や知人、疑われた者にまで累が及ぶ描写は、取り締まりが人々を巻き込んで膨らむことへの警戒です。ここで賈誼は罰の軽重ではなく、止まらない連鎖を問題にしています。会社でも、不正対策としての監視や処分を強めるほど、疑われる側が広がり、現場の萎縮を招くことがあります。規則の運用が人を巻き込む広がりを、早めに把握する必要があります。
この章句が説くこと
取り締まり連座鋳銭萎縮兆し新書
関連する章句
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『新書』鑄錢夫れ農事を為さずして、採銅日に煩わし、其の耒耨を釈てて、冶鎔・鑪炭す。奸銭日に繁く、正銭日に亡ぶ。善人は怵れて奸邪を為し、愿民は陥りて刑戮に之く。黥罪繁く積もり、吏民且に日に闘わんとす。少しく今に益さば、将に甚だ不祥ならん、奈何ぞ忽せにせん。国此の患を知らば、吏議して必ず曰わん︰「之を禁ぜよ」と。之を禁ずるに其の術を得ざれば、其の傷必ず大なり、何を以て之を圉がん。令して鋳銭を禁ぜば、銭必ず還た重くならん、四銭の粟は、必ず還た二銭のみ。重ければ則ち盗鋳銭は雲の如く起こり、則ち棄市の罪も又以て禁ずるに足らず。奸勝えずして法禁数しば潰ゆ、言い難きのみ、大事なり。久しく乱れて蚤く振わざれば、恐らくは陛下の明に称わず。凡そ治の得られざるとき、天地星辰に応じて動く有り、小故に非ざるなり。或いは王徳を累わさん、陛下以て怠る可からず、方今始めて伏す、望むらくは善く図る可きなり。
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『新書』鑄錢法は天下をして公に租を顧みて銭を鋳しめ、敢えて銅・鉛・鉄を雑えて它の巧を為す者は、其の罪は黥なり。然れども鋳銭の情、鉛鉄を殽え及び以て銅を雑うるに非ざれば、贏を得べからず。而して之を殽うること甚だ微にして、又為し易く、鹽羹の易きに異なること無く、其の利甚だ厚し。法を張ること公に銅錫を鋳ると雖も、鋳る者の情は必ず奸偽なり。名は顧租公鋳と曰うは、法なり、而して実は皆黥罪なり。法有ること此くの若し、上将に何をか頼まんや。夫れ事に禍を召く有り、法に奸を起こす有り、今細民をして造弊の勢を操らしめ、各おの其の家を隠親して公に鋳作せしめ、因りて其の大利微姦を禁ぜんと欲せば、黥罪日に報ぜらるると雖も、其の勢い止まず、民の理は然り。夫れ白着して以て之を請えば、則ち吏随いて之を揜う、民の為に阱を設くること、孰か是より積めるや。上早く之を図れ、民の勢い且に尽きんとす。曩に鋳銭を禁じて、死罪下に積む。今公に銭を鋳しめて、黥罪下に積む。少しく異なると雖も、未だ甚だしからず。民方に陥溺す、上且に救わざらんや。
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『新書』銅布銅の下に布かるるは、天下の災いと為る。何を以て之を言う。銅の下に布かるれば、則ち民の銭を鋳る者、大抵必ず鉛鉄を雑う。黥罪日びに繁し。此れ一禍なり。銅の下に布かるれば、偽銭止む無く、銭用信ならず、民愈いよ相疑う。此れ二禍なり。銅の下に布かるれば、銅を采る者は其の田疇を棄て、家に鋳る者は其の農事を損い、穀為さざれば則ち飢に鄰る。此れ三禍なり。故に銭を鋳るを禁ぜざれば、則ち銭常に乱れ、黥罪日びに積む。是れ陥穽なり。且つ農事為さざれば、疑い有り災いと為る。故に民の銭を鋳るは禁ぜざる可からず。上、銭を鋳るを禁ずるに、必ず死罪を以てす。銭を鋳る者禁ぜらるれば、則ち銭必ず還りて重し。銭重ければ則ち盗みて銭を鋳る者起こり、則ち死罪又た複た積む。銅之をして然らしむるなり。故に銅の下に布かるれば、其の禍い博し。
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『新書』鑄錢且つ世民の銭を用うること、県に異なりて郡に同じからず。或いは軽銭を用い、百に加うること若干、軽小異行す。或いは重銭を用い、平称受けず。法銭立たざれば、将に天下をして権族を操らしめんとす、而して吏急にして之を壱にせんとすれば、則ち吏は煩苛にして民は任えず、且つ力能わずして勢い施す可からず。縦にして苛せざれば、則ち郡県異なりて市肆同じからず、小大用を異にし、銭文大いに乱る。夫れ苟くも其の術に非ざれば、則ち何れに嚮うて可ならんや。
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『新書』銅布今、博き禍いは除く可く、七福は致す可し。何をか七福と謂う。上、銅を収めて下に布かしむる勿ければ、則ち民銭を鋳ず、黥罪積まず、一なり。銅下に布かざれば、則ち偽銭繁からず、民相疑わず、二なり。銅下に布かざれば、銅を采るを得ず、銭を鋳るを得ず、則ち民反って田を耕す、三なり。銅下に布かず、畢く上に帰すれば、上、銅の積を挟みて以て軽重を御し、銭軽ければ則ち術を以て之を斂め、銭重ければ則ち術を以て之を散ず、則ち銭必ず治まる、四なり。銅の積を挟み、以て兵器を鋳、以て貴臣に仮し、小大多少、各おの制度有り、以て貴賤を別ち、以て上下を差とすれば、則ち等級明らかなり、五なり。銅の積を挟み、以て万貨に臨み、以て盈虚を調え、以て畸羨を収むれば、則ち官必ず富みて、末民困しむ、六なり。銅の積を挟み、吾が棄財を制し、以て匈奴と其の民を逐争せば、則ち敵必ず懐く。此れを七福と謂う。故に善く天下を為むる者は、禍いに因りて福と為し、敗を転じて功と為す。今顧って七福を退けて博禍を行う。長太息す可き者、此れ其の一なり。
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『新書』孽產子且つ試みに事理を観よ。夫れ百人之を作るも、一人に衣するに能わず、天下の寒き無きを欲するも、胡ぞ得可けんや。一人之を耕し、十人聚まりて之を食らい、天下の飢うる無きを欲するも、胡ぞ得可けんや。飢寒民の肌膚に切なれば、其の奸邪盗賊を為す無きを欲するも、得可からず。国已に素より屈せり。奸邪盗賊特だ時を須つのみ、歳適たま為さざれば、雲の如く起こらんのみ。若し夫れ為さざること見われば、室満つるも胡ぞ撫するに勝う可けんや。夫れ此に錞して上を安んずる者有るは、殆ど未だ有らざるなり。今や平居には則ち茈施無く、敬せずして素より寛にし、故有れば必ず困しむ。然り而して計を献ずる者類ね曰く、「動く無きを大と為す」と。夫れ動く無くして以て天下の敗を振う可き者は、何等ぞや。曰く、大夫の治を為すは可なり。若し大乱を為さば、豈に其の小なるに若かんや。悲しきかな。俗の不敬に至り、等無きに至り、其の上を冒すに至る。計を進むる者、猶お「無為」と曰う。長大息を為す可き者は此れなり。
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