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新書 / 淮難

今淮南土雖小,黥布用之耳,漢存特幸耳。夫擅仇人足以危漢之資,於策安便?雖割而爲四,四子一心未異也。豫讓爲智伯報趙襄子,五起而不取者,無他,資力少也。子胥之報楚也,有吳之衆也。白公成亂也,有白公之衆也。闔閭富故,能使鱄諸刺吳王僚;燕太子丹富故,然使荊軻殺秦王政。今陛下將尊不億之人,予之衆,積之財,此非有白公、子胥之報於廣都之中者,即疑有鱄諸、荊軻起兩柱之間,其策安便哉!此所謂假賊兵、爲虎翼者。願陛下留意計之。

新字:今淮南土雖小,黥布用之耳,漢存特幸耳。夫擅仇人足以危漢之資,於策安便?雖割而為四,四子一心未異也。予譲為智伯報趙襄子,五起而不取者,無他,資力少也。子胥之報楚也,有呉之衆也。白公成乱也,有白公之衆也。闔閭富故,能使鱄諸刺呉王僚;燕太子丹富故,然使荊軻殺秦王政。今陛下将尊不億之人,予之衆,積之財,此非有白公、子胥之報於広都之中者,即疑有鱄諸、荊軻起両柱之間,其策安便哉!此所謂仮賊兵、為虎翼者。願陛下留意計之。

書き下し

今淮南の土は小なりと雖も、黥布之を用うるのみ、漢の存せしは特だ幸いなるのみ。夫れ仇人の足以て漢を危うくするの資を擅にするは、策に於いて安くにか便ならん。割きて四と為すと雖も、四子一心にして未だ異ならざるなり。豫譲の智伯の為に趙襄子に報ずるに、五たび起ちて取らざる者は、他無し、資力少なきなり。子胥の楚に報ずるや、呉の衆有ればなり。白公の乱を成すや、白公の衆有ればなり。闔閭は富めるが故に、能く鱄諸をして呉王僚を刺さしめ、燕の太子丹は富めるが故に、然して荊軻をして秦王政を殺さしむ。今陛下将に不億の人を尊び、之に衆を予え、之に財を積まんとす、此れ白公・子胥の廣都の中に報ずる者有るに非ざれば、即ち鱄諸・荊軻の両柱の間に起つ有るを疑う、其の策安くにか便ならんや。此れ所謂賊に兵を仮し、虎の翼を為す者なり。願わくは陛下意を留めて之を計れ。

現代語訳

いま淮南の土地は小さいとはいえ、黥布はこれを用いて挙兵しました。漢が存続したのはただ幸いだったにすぎません。仇を持つ者が漢を危うくするほどの元手を握るのは、策として決して良いものではありません。たとえ土地を四つに割っても、四人の子が心を一つにすれば違いはありません。豫譲が智伯のために趙襄子へ報いようとして、五たび立っても果たせなかったのは、ほかでもなく、資力が少なかったからです。伍子胥が楚に報いえたのは、呉の軍勢があったからです。白公が乱を成したのは、白公の手勢があったからです。闔閭は富んでいたから、鱄諸に呉王僚を刺させることができ、燕の太子丹は富んでいたから、荊軻に秦王政を襲わせることができました。いま陛下は、安心のおけない人物を尊んで、これに人を与え、財を積ませようとしています。これは、白公や子胥のように都のなかで報復する者が現れるか、鱄諸や荊軻のように宮殿の柱の間で刺客が立つか、という疑いを呼びます。その策のどこが得策でしょうか。これこそ賊に武器を貸し、虎に翼を付けるものです。どうか陛下、お心にとめてよくお考えください。

解説

この段は、仇を抱える者に資力を与えることの危うさを、史実の列挙で突きつけます。黥布が小さな淮南の地で挙兵した例を引いて、漢が持ちこたえたのは幸運にすぎないと言い切ります。次に豫譲、伍子胥、白公、闔閭、燕の太子丹を並べ、復讐が成るかどうかは情念ではなく資力と手勢で決まる、という一点に論を絞っています。結びの「賊に兵を貸し、虎に翼を付ける」は、人を尊重する形で危険を育てる矛盾への警告です。会社に置き換えると、不満を抱えた人物に権限や予算だけを積み上げる人事は、意図が善意でも、取り返しのつかない行動を支える元手になりかねません。意欲と遺恨は別のものとして見分ける必要があります。

この章句が説くこと

資力復讐虎に翼権限人事新書

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